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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第四章──普遍的な愛なんて、この世に存在しないのかな?
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ダーリンダンス-1




夜の10時過ぎ、ネオン煌めく歌舞伎町に、コツコツと革靴の音が響く。

リボンで結んだ艶のある黒髪ツインテール。ピンクのフリルブラウスに黒いミニスカート、厚底の革靴。この街に馴染んだファッションに身を包んだ少女が、一人で夜の街を歩いていた。


「ふんふんふ~ん♪」


上機嫌に鼻歌を歌いながら、ストローを差したエナジードリンクを片手に、少女は雑居ビルのひしめく街を歩く。

次々に声を掛けてくるキャッチとナンパを華麗に避け、彼女はついに目的地へとたどり着いた。


雑居ビルの地下へと続く階段を、慣れた足取りで降りていく。

中の様子が決して窺えない重厚な扉を入ると、フロア一帯に響き渡る重低音の効いた音楽と、黒服の丁寧なお辞儀が彼女を出迎えた。


怪しいライトが照らす店内には豪奢な囲いのソファ席がいくつもセットされ、そこに男女が並んで座り、親密な様子で話している。

テーブルには高価な酒や贅沢なフルーツの盛り合わせが並んでいた。


「ねーねー、星亜くんはよっ! てぃあめっちゃ頑張ってきたんだからね!?」


カツンとヒールを鳴らし、少女は黒服を急かす。


「はい、かしこまりました」と黒服が席に案内すると、少女は仏頂面でエナドリを飲み、気だるげについていく。

しかしそこに座っていたスーツの男を目にした瞬間、彼女の濁りきった瞳が水を得たように輝いた。


星亜せいあくん!!!」


星亜と呼ばれた男がにこりと微笑み、自らの膝をぽんぽんと叩く。すると少女はその膝の上に飛び乗り、首筋に腕を回して抱きついた。


「せいあ久しぶりっ会いたかったよぉ~!」


「久しぶりって、3日前に会ったばっかだろ?」


「3日も会えないのつら~い! 毎日会いたいんだが!? なんなら一緒に住みたいが!?」


「じゃあ毎日店来いよ」


「無理~お金な~い~!!」


「お前ならもっと稼げるだろ。今のシャバい仕事より、もっと楽で簡単に稼げる仕事……紹介してやろうか?」


星亜が抱きついたまま擦り寄ってくる少女の腰を、慣れた手つきで撫でる。すると少女はガバリと顔を上げ、キラキラした目で言った。


「ねぇねぇ星亜くんっ! てぃあさぁ、出稼ぎでめ~っちゃ頑張ってきたよ!? 今日はエンジェル開けちゃお!」


甘えたような舌っ足らずな声で、少女はせがむ。その瞳にはハートマークが浮かんでいた。

星亜は狙い通りといった感じで人工的に整えきった美しい笑みを浮かべ、問いかけた。


「いいね、何色?」


「星亜くんの好きな色っ!」


「じゃあ白で」


星亜が控えていた黒服へとオーダーを耳打ちする。少女は星亜の膝の上で、それを満足そうに眺めていた。


「ねぇせいあくん。てぃあ偉いよね? 頑張ってるよね? 褒めて褒めてぇっ!」


「よしよし、ティアラはいい子だな。さすがは俺のお姫様。ティアラ以上に可愛くて頑張り屋で優しい子、俺知らないよ。いつもありがとな?」


至近距離で見つめながら甘い声でそう告げ、頭を撫でる。すると少女は頬を染め、とろけるように酔いしれていた。


「なあティアラ、俺もうすぐ生誕祭じゃん? 来週、もうちょっと俺のために頑張れる?」


「ふぇ~? ……いくら?」


「200万」


「ええ~?」


さすがに高額すぎたのだろう。少女は不服そうな声を漏らす。そんな少女の耳元に唇を寄せ、星亜は囁いた。


「もし頑張ってくれたら、俺の部屋の鍵渡すよ」


「ふぇ……ええ~!? それほんと!?」


「マジマジ。ほら」


スーツのポケットから真新しい鍵を取り出し、目の前にぶら下げて見せる。途端に少女の目の色が変わった。


「ティアラに渡す為に作ったんだ。俺達もう結構長いじゃん? そろそろ一緒に住むのもいいなと思ってさ」


「てぃあの為に……一緒に? ……分かった! 星亜くんのお誕生日だもん! てぃあ、頑張ってくる!」


少女は満面の笑みを浮かべ、無邪気に喜ぶ。星亜はそれを内心ほくそ笑みながら、少女を優しく抱きしめた。


「ティアラ……愛してるよ」


愛の言葉を囁くと、少女はそれに感激したように瞳を潤ませ、しがみつくように背に手を回し、抱きしめ返す。


「星亜くん……てぃあ、てぃあ頑張るね。他の女になんか、絶対負けないから。てぃあが絶対に星亜くんの事、ナンバー1にしてあげる。だから、だから……てぃあを星亜くんの中の一番にして!」





「冬華、アン・ユータラス事件って何?」


「そっか。アイちゃんは聞いたこと無いよね。情報規制が掛かってるし」


冬華が書類の束を私に渡してきた。見てみるとまず衝撃的な写真が目に飛び込んできて、「うっ」となった。


「冬華……これって、」


「子宮の部分がごっそり丸ごと無くなってる代わりに、空洞部分に色とりどりのキラキラしたものが敷き詰められてるでしょ? それ、全部砕かれた宝石なんだ。ダイヤ、エメラルド、サファイア。どれも高級品ばかり」


「子宮に宝石って……」


「その被害者は17歳、アイちゃんと同い年だね」


改めて写真を見てみる。その死体はグロテスクでありながら、どこか芸術品のようにも見えた。


お腹の切り口が綺麗な楕円形で中の臓器も完全に取り除かれているし、出血も無い。それ以外の外傷は見当たらない。

全裸の遺体ではあるけど、少女はお腹の上で祈るように手を組み、しっかりとメイクが施されているからか血色も良く、まるで眠っているように、穏やかに目を閉じている。


エロティックというよりは、どこか神聖な雰囲気が漂っている。

ものすごく不謹慎な言い方をするとすれば、まるで少女の遺体は、砕いた宝石を収めるためのジュエリーボックスだ。


「その遺体が見つかったのが先週、その子で7人目。被害者は十代の女の子ばかりで、ただ一人を除いて、全員が家出少女。最初の遺体が見つかったのが6ヶ月前で、全ての遺体は歌舞伎町で発見されてる」


「冬華、さっき食人事件って言ってたよね? どういうことなの?」


「被害者の子宮を含む『中身』は、どうやら犯人が食べたみたいなの。遺体を鑑定した結果、傷口から唾液が僅かに検出されたんだ」


「中身を食べた?」


「被害者の内の一人は6課のホルダーだ。捜査中に会敵してやられたらしい。SSランクのベテランだったんだけどな」


永月が扉に背を預けながら呟く。私はその言葉に衝撃を受けた。


「SSランクでも太刀打ち出来ないなんて……そんなの私達になんとか出来るの?」


「そんなに不安にならなくても大丈夫だよ。捜査するのはアイちゃん達だけじゃないし、危険な状況になったら深追いはさせないから。それに、まず最初にしてもらうことは、ただの人探しだしね」


「人探し?」


「潜入捜査中のホルダーの子がいるんだけど、歌舞伎町に行ってから連絡がつかなくなっちゃったの。たぶんその辺で遊んでるんだろうけど……二人にはその子を見つけ出して、捜査に戻るように説得して欲しいんだ」

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