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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第三章──潜入捜査という名の青春、開始
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アタシー11


『あ……ア……繧「繧ュト……アキトダアアァ!? アキト! アキトォーーーッ!!!』


「お前は……バーサーカー」


鎧の男──バーサーカーがノイズ混じりの歓声を上げ、秋人へと手を振るように、ソラの首をぶんぶんと振り回す。

ソラの表情が苦痛に歪み、うめき声を上げた。


「っ……アイちゃん、やめてっ……苦し……っ!」


「おいバーサーカー! 宇宙こすもソラを離せっ!」


『ヤ~ダ~ア~♪』


バーサーカーが上機嫌に鎧の奥の赤い瞳を三日月に細める。


次の瞬間、バーサーカーの腹部から黒い槍が出現し、一直線にソラの腹を突き刺した。


「がっ……あっ……!?」


ソラが鈍い悲鳴を上げる。直径10cm程の槍が腹部を貫き、黒い槍の切っ先から、血の赤が滴り落ちていた。


「止めろ! もう決着はついてんだろ!」


『ヤダァ~。ダッテコイツ、オレ二イッパイヒドイコトシタ。ダカラ、コイツハ……コロス』


バーサーカーが唸るような低い声で呟くと、空いている方の手に槍が出現する。バーサーカーはその槍を握りしめ、ソラの身体へと突き立てた。


「ぎゃっ!?」


『アハハハハッ! ギャッダッテ! ギャーギャーッ!!!』


バーサーカーはソラの反応を楽しむように喉を反らして笑い、身体に突き立てた槍をぐりぐりと回し、傷を抉る。


「やめでぇっ! いだっいだいっ……いだいぃーーーーっ!!!」


ソラが目を見開き、足をばたつかせ、血を吐き叫ぶ。

腹部から血が溢れ出して流れ落ち、次第にソラの動きが鈍くなっていった。

陶器のように白い顔がより一層白くなり、やがてぐったりと動かなくなった。


見かねた秋人が刀を手にバーサーカーへと斬り掛かった。


「止めろっつってんだろクソ野郎!」


『ヤダヤダヤダァ!!!』


「っ!」


刀をガードで弾かれ、黒い霧で拘束される。ギチギチと骨が軋むほどに全身を締め上げられ、成すすべが無かった。

バーサーカーは動かなくなったソラを容赦なく突き刺しながら、鎧の口部分をバカリと開き、濁った笑い声を上げた。


『アアハハハハハァ!!? シネシネシネェ~~~!!!』


目の前で繰り広げられる、残虐で一方的な殺戮ショーのような光景を見ていることしかできず、秋人は絶望し、俯く。

両の拳は、血が滲むほどに握りしめられていた。


宇宙こすもソラについての思い入れなど微塵もない。ここで死のうがどうなろうが個人的には知ったこっちゃない。


だがあいつは首相の娘だ。

もし刃金はがねがこのまま宇宙こすもソラを殺した場合、その責任はバディである俺にも当然降ってかかる。


6課には当然いられなくなるだろうし、最悪の場合、死刑になる可能性だって──。


なんでこんな事になった?

今まで何にだって耐えてきたってのに。


絶対にやりたくない仕事も、常人なら到底耐えられないであろう理不尽な扱いも、全て受け入れて、全力で自分のやるべ事をこなしてきた。


使える物は全部使った。失くしちゃいけないものだって差し出してきた。

誰に蔑まれようが、罵倒されようが、全部全部、歯を食いしばって耐えてきたんだ。


だって、そうしてでも達成したい目標が俺にはあるから。

その為だけに、俺は今までずっと生きてきたから。


刃金はがねと組むことになって、やっと手が届くかもって、そう思ったんだ。

なのに……こうも簡単に、終わっちまうのか?


秋人の中で、積み上げてきた物がガラガラと崩れ去る音が鳴り響く。


畜生。

どうして俺は、こんなにも無力なんだ。

これまでだってそうだった。

父さんと母さんだって、俺がもっと強ければ、きっと──。


いつも、いつもいつもいつも。何も守れない。大切な人も、自分自身だって。

誰かに縋り付いて、従って、諦めて、そうやって生きていくしかないのか?


俺自身の意思は、信条は、やりたいことは、全部無視して、押し殺しておけばよかったのか?


俺が弱いからこうなった?

全部全部、俺のせいなのか?


俺にもっと力があれば、きっと──。


その時、秋人はふと思い出す。すると噛み締めた唇が緩み、歪に弧を描いた。


そうだ。俺にもあるじゃないか。

俺にしかできない。俺だけが持ってる特別な能力ちから


これのせいでクソみたいな思いばかりしてきた。

だから必死で抑え込んできた。極力誰にも関わらないように生きてきた。


でも、どうせこれからだって俺のこの性質は変わらない。


だったら利用してやればいい。

クソみてぇなプライドは捨てて、使い倒してやればいいんだ。


分かった。使ってやるよ、俺の力──最大限な。


「おい、バーサーカー」


声を掛けると、バーサーカーはソラを刺す槍を止め、そして秋人を見た。

秋人は妖艶にオッドアイを細め、バーサーカーへと再び問いかけた。


「なあ、お前さ、俺の言う事聞く気、ないの?」


秋人が妖艶な笑みを浮かべ、鎧の奥にある赤い瞳を見つめる。バーサーカーは慌てたように答えた。


『ダ……ダッテコイツッ……ワルイヤツ……ダシ?』


今までとは一転し、バーサーカーは狂人らしからぬモジモジした態度になる。

もうひと押しだ、と秋人は不敵に微笑み、続けた。


「もし宇宙こすもソラへの攻撃を止めるなら、『俺を好きにしていい』って言ってもか?」


『……エ?』


途端にバーサーカーがソラを放り投げる。それと同時に秋人の拘束が解かれた。

バーサーカーが詰め寄り、逃さんとばかりに秋人の両肩を握りしめて見下ろす。バキンと肩の骨が折れる音が身体の内側で響き、鈍痛がやってきた。


秋人は視線を流し、ソラの方を見る。蹲った背中が動き、「うぅ……」と小さく呻き声を上げたことを確認した。


『ア……アキト……アキト?』


獲物を目の前にした獣のように、鎧の奥の瞳がギラギラと光り、口元からボタボタと涎が流れ、秋人の顔にしたたり落ちた。

秋人はそれを気にする様子もなく、ただじっとバーサーカーを見上げる。


『スキニシテイイ? ソレ……ホントッ!?!?』


「ああ、こないだは監視の目も制限もあったが、今ここには、お前を咎めるやつは誰もいない。俺の身体を好きなようにしていいんだよ。文字通りな」


言いながら、秋人はしゅるりとネクタイを解く。そして繊細な指先で、襟元のボタンを一つずつゆっくりと開けていく。

バーサーカーは、それを食い入るような目で見つめていた。


ボタンが3つ開き、ついにハーフの証である刻印が刻まれた白い鎖骨が露わになる。

秋人はそれを見せつけるように襟元を広げ、不敵に微笑んだ。


「なあ、どうする? ただのストレス発散にあの女をブッ殺して、永遠に俺を失うか。大人しく俺の言う事聞いて、俺を味わう権利を得るか。さあ……選べよバーサーカー」


『ア、縺ゅ≠……キクッ!! キクキクッ!! アキトノイウコトキクッ!! アノオンナ、コロサナイ!!』


「いいか。これは契約だ。決して破ることの出来ない命の契約……絶対に覆さないか? これから俺の言う事、全部聞けるのか?」


『ゼッタイゼッタイ! チカウ! 神ニチカウ!! ダカラ──!』


「いい子だ。じゃあ、好きにしていいぞ」


そう静かに告げて、秋人は目を閉じる。


バーサーカーは待ちわびたように目を血走らせ、涎を垂らして唸り、ガパリと口を大きく開く。

鎧の奥に隠された鋭利な歯が、唾液に濡れ、ギラリと怪しく光った。


『ジャア……イタダキマァーーースッ!!!』


ノイズ混じりの声で叫んで、秋人の剥き出しの首筋へと齧りつこうとした。


鋭利な歯が白くなめらかな肌を穿つ寸前──。


「ストップ」


声がそれを制す。バーサーカーの口がピタリと止まった。

バーサーカーが不思議そうに顔を上げる。秋人はそれを涼しい顔で見下ろして告げた。

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