表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第三章──潜入捜査という名の青春、開始
60/77

アタシー10

「辛いよね。苦しいよね。誰も自分のことなんか分かってくれない。分かり合うことなんて出来ない。そういう気持ち……私もそうだった。分かり合える人なんて、この世界に一人もいない。友情とか恋愛とか、そういうのは幻想の中にしか無いって。でもさ……そうじゃなかったよ?」


私を救ってくれた人──冬華を思い浮かべる。


自分の為だけに用意された誕生日ケーキの味とか。抱き締められた時の安心する感じとか。

一緒に買い物したり、お話したり、そういう時に感じたときめきとか。


全部、涙が出るくらい嬉しかったから。


「ソラちゃんって、本当はほのかちゃんとアキラちゃんのこと、大好きだよね?」


「……それは」


ソラちゃんの眉を下げて言い淀む。弱々しくて、頼りない。

きっとそれが本当のソラちゃんの表情。


テランへの嫌悪とか、ほのかちゃんの悪口とか、全部強がりだったんだと思う。

怖かったんだ、きっと。

自分で自分を愛せないから、誰かに愛される自信もなくて。


拒絶される前に、自分から突き放した方がましだって。


「私みたいなハーフの言葉、信じられないかもしれないけど。私、今の生活を手に入れてから分かったんだ。過去の私は、最初から全部諦めちゃってた。だから何にも手に入れられなかったんだって。欲しいものがあるのなら怖がらず、勇気を出して、なりふり構わずぶつかっていくくらいじゃないといけなかった」


「なりふり構わず……ぶつかっていく?」


ソラちゃんの瞳が私だけを映す。その瞳には悪意も憎悪も見当たらない。

猫みたいな丸い瞳をいっそう丸くし、私の言葉の真意を、意味を理解しようと、まっすぐに見つめていた。


失踪事件の犯人だし、逆らったというだけで私のこと滅多刺しにしたし。

ソラちゃんはきっと、6課の定義で言うなら『わるい宇宙人』なんだろう。


でも私は、ソラちゃんのことを嫌いになることが出来なかった。

なんとなく、放っておいちゃいけないような。そんな気がした。


「私もまだ欲しかった全部を手に入れたわけじゃなくて、足掻いてる途中なんだけど……ソラちゃんも私と一緒に、足掻いてみない? 少しだけ。今よりほんの少しだけ周りの人のことを信じてみる。それだけでも、きっとソラちゃんの空っぽは満たされるよ。私、ずっと虐められてたから、人の悪意には敏感なんだ。そんな私だから分かるの。ほのかちゃんも、アキラちゃんも──心の底から、ソラちゃんの事が好きだと思うよ?」


涙に濡れた頬を優しく撫でて微笑む。

すると、ソラちゃんは私をじっと見上げたまま、頬に添えられた手をそっと握った。


「ねえ、アイちゃん。アタシ……信じていいの? あなたの事を、信じていいの?」


その声には今までのような狂気も怒りも存在せず、弱々しくて、少し触れたら折れそうなほどに、か細かった。

私はその弱々しくも切実な問いかけに、はっきりと頷く。


「私はソラちゃんのこと利用したいだとか、チヤホヤしたいとも思わない。ただ、私にちょっと似てる所があるのが分かって嬉しいんだ。そういう人に出会ったの、初めてだったから。だから、そこがなんか……好きだよ」


「……アイちゃん」


ソラちゃんが素直な瞳を潤ませ、私の名前を呼ぶ。

私もそれに答えようと口を開いた。


「さ、一緒にここを出よう。繧ス繝ゥちゃん」


あれ? 今私、なんて言った?


首を傾げると、ぼたぼたと鼻から液体が伝い、ソラちゃんの顔に落ちる。

その液体は赤ではなく、黒だった。


「あ……ア……縺ゅl……?」


「アイちゃん?」


ソラちゃんが私を見上げてる。心配そうなカオして。


ボタボタ。


鼻から、口から、目から、黒が溢れ出す。


「アイちゃん……ねぇアイちゃん! 大丈夫!?」


ソラちゃんが起き上がり、わたしの肩を揺する。


大丈夫と答えようとしたけど、ダメだった。


身体も、頭の中も、クロにそまっていく。


あ、まただ。これ、この感覚、くろ、狂──。


ブツンと、そこで私の意識は途絶えた。





壁の外が静かになった。終わったのだろうか。


両手両足を拘束された秋人は、アイの作った障壁の向こうへと耳を澄ます。


「おい、刃金はがね!」


叫んでみるが返事はない。代わりに宇宙こすもソラの声が聞こえた。


「アイちゃん……ねぇ……アイちゃん! きゃあっ!」


聞こえた声はどこか切迫してるようだ。


「ぐっ……待って、なんでっ……貴方……アイちゃん、なの?」


和解したのか? 決着はついたのだろうか。だが、どうやら何か問題が起こっているらしい。

まずは状況の把握が優先だ。


「おい宇宙こすもソラ! 俺の拘束を解けっ!」


秋人が声を張り上げると、すぐに拘束が解ける。刀を出現させ、黒い壁を切り裂いた。

バラバラになった黒い壁の向こうに見えた光景に、秋人は思わず目を見開く。


刃金はがね……いや、お前は──」


『繧薙∴?』


刃金はがねと呼ばれたその人物は、振り向く。

頭の天辺からつま先までを覆い隠す硬質な黒い鎧。禍々しいオーラで塗れたその姿。


『縺……ア……繧「繧ュ……トォ?』


ソラの首を片手で締め上げながらそこに立っていたのは──バーサーカー状態の刃金はがねアイだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ