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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第三章──潜入捜査という名の青春、開始
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FAKE SOUL-2


『アソボウ……ネェ……アソボウヨ……』


「永月、こいつってETじゃ──」


「っ! 来るぞ!」


白い仮面の目の空洞から黒い触手が伸び、こちらにビュンと飛んできた。

永月が私の前に立ち、刀で防ぐ。


触手と刀がぶつかり合い、火花が散る。

どうやら仮面の触手はかなり硬質らしい。


何とか弾き返す事が出来たけど、永月の刀はダメージを負ったようにギィインと鈍い音を響かせていた。


『アソボ……アソボウッテバァ……アハ……アハハッ』


ノイズの掛かった不気味な笑い声が、閑静な住宅街に響いた。


「まずいな、言葉が話せるのか。少なくともAランク以上だ」


「Aランクって、めちゃくちゃ強いんじゃ」


「吹雪室長に増援要請は送った。俺は増援が来るまで時間を稼ぐ。とりあえず、お前は逃げろ」


「なんで! 私も戦うよ! だって私強いんでしょ!?」


「確かにお前の力は強大だ。だが、いつ暴走するか分からない。記憶は無いかもしれないが、お前は瑜伽ゆが中でもETを倒した後、暴走しかけたんだ」


「暴走って……」


確かに私には瑜伽中でETを倒した時の記憶がない。でも──。


左手の手袋を引き抜く。黒い霧がぶわりと溢れ出し、私の左腕を覆った。


「おい!」


「永月、戦わせてよ。だって私達バディなんだから……大丈夫、絶対に暴走したりしないから。それに、増援が来るまでにETを倒しといた方が、永月にとっては都合がいいんでしょ?」


そう告げると永月の表情が変わる。


何かこいつ、やたらと自分のランクについて気にしてたっぽいし。

Aランクを倒したとなれば、ランクアップ出来るんじゃないの? 知らんけど。


何より、私もここでETを倒しておくほうが都合がいいのだ。

だって……冬華に褒めてもらえるからっ!


「チッ……クソ生意気なこと言いやがって」


永月が指先を刀の切っ先に押し当てる。

赤い血が刀に滴り、刀が力を帯びたように青白く光った。


「新人、とりあえずお前は俺のサポートに回れ。もし暴走しやがったらぶっ殺すからな」


「りょーかい!」


こないだ冬華と一緒にETと戦ったときに、何となくだけどこの霧の使い方のコツは掴んだ。いける──。


私と永月と白い仮面だけを意識して切り取る。

空間から私達以外の人や動物の姿が消えた。


それを合図にしたように、永月が刀を構えながら駆け出す。


仮面の目の部分から、ビュンッと再び黒い触手が飛んできた。

永月が跳躍し、避ける。

すると触手は空中にいる永月を追った。


「させるか!」


私は黒い霧を飛ばし、その触手を弾く。

触手は軌道を変え、こちらに飛んできた。


「ひょわっ!?」


触手が迫ってくる直前、とっさに黒い霧を身体の前に集結させ、壁を作る。

その壁に触手がぶつかり、ビィンッ! と鈍い音を立てた。


「ふー……ギリギリセーフ」


永月の方を見る。既に仮面の眼前まで迫っていた。触手が永月の方に戻ろうとする。


私は黒い霧を大きな手のように変化させて触手を掴んだ。戻ろうとする触手に凄まじい力で引き寄せられる。


「っ……逃がす、かぁっ!」


踵で踏ん張ると、足元のコンクリートがバキリと割れる。


最大限の力を込めてギリギリと握り締め続けると、触手の動きが完全に止まった。


「永月! 今だよ!」


「分かってる!」


ザクンと永月の刀が仮面に突き刺さる。永月の右の瞳に、青い炎が宿った。


「ちょろちょろ触覚動かしやがって、このゴキブリ野郎が!」


刃の部分が伸び、仮面を串刺しにする。刃の部分に『かえし』が出現した。


「第一解放──刺突爆雷しとつばくらい!」


ズガアァン!


刀を起点に大爆発が起きた。爆炎と砂埃が巻き起こる。

黒い霧で壁を作って爆風を防ぎ、止むのを待つ。


「……倒した?」


爆風が止み、永月の後ろ姿が見える。

白い仮面は黒焦げになり、バラバラと崩れ去った。


「やった!」


私が喜びの声を上げた瞬間──。


「っ!?」


何処かから触手が飛び出し、永月を縛り上げる。

そしてそのまま永月を宙へと持ち上げた。


「永月!」


『ヒトリジャナイヨ……ワタシモ、イルヨ……』


黒焦げの仮面の後ろから、もう一体の仮面が現れた。

すると黒焦げの仮面が再生し、元通りに回復していった。


『『ワタシタチハ、イッシンドウタイ。ダカラ……ズットイッショ、ダヨ……』』


声が重なり、2つの仮面が並ぶ。

その姿はどちらがどちらなのか見分けがつかないほど、全く同じだった。


「こいつら……双子なの?」


「クソ新人!」


「っ! うん!」


永月を拘束している触手を、尖らせた黒い霧を飛ばして切り裂く。

着地した永月は足にエナジクトの力を込めて踏み出し、転がるように私の元まで戻ってきた。


「大丈夫?」


「助かった。恩に着る」


永月が刀を構え直し、私も臨戦態勢で黒い霧を身体に纏う。


そんな私達を見て、2つの仮面がにこりと不気味に微笑んだ。


『ワタシタチモフタリ、アナタタチモフタリ、フタリデイルノハ……タノシイネ?』


次の瞬間、2つの仮面の両目から触手が飛び出し、こちらに向かってきた。


「は!? や、やばぁ!?」


ズドドドドド!


鋼鉄のような触手の連打が私達に降り注ぐ。


黒い霧を大きな傘のようにしてなんとか防ぐ。

が、それですらいつまで持ちこたえられるか分からない。

攻撃を防ぐのに精一杯で、反撃する余裕なんて当然無かった。


「永月! やばいってこれ! どうすんの!」


「……ちょっと待ってろ」


永月は指先を刀に押し付け、血を流し込む。

そして何かに集中するように目を閉じた。


その間にも触手の攻撃は止まない。黒い霧で作ったガードにヒビが入り始めた。


「永月!」


「──()えた」


そう呟いた瞬間、永月は刀を片手で持ち、槍のように投げ飛ばした。


流れ星のような速度で刀が飛んでいく。

そして片方の仮面のど真ん中に、刀がザクリと突き刺さった。


『イタッ……イッタァアッ!?!?』


『ダイジョウブ? ……ダイジョウブ?』


触手が引っ込み、仮面達の攻撃が止む。


片方は痛みで呻き声を上げ、もう片方はそれを心配するように見ていた。


「なんか……めっちゃ効いてるっぽい?」


「急所を狙ったからな」


そう言って永月は仮面達の元へと駆け出す。

そして仮面に突き刺さった刀を引き抜き、刀を手に、そのまま走り去ってしまった。


「永月!?」


私の呼びかけに答えることなく、永月は走り去っていく。


え、まさかあいつ……逃げた!?

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