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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第三章──潜入捜査という名の青春、開始
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愛じゃない-6

エレベーターで最上階に上がり、部屋のインターホンを鳴らす。

ほどなくしてガチャリと扉が開き、部屋の主が顔を出した瞬間、私はぎょっとする。


170cmの私が見上げるほど背が高くて、病的に細い。着ている白いTシャツは襟ぐりが伸びきっているし、ジーンズも裾が擦り切れている。

紫がかった肩につきそうなほど長い髪は所々跳ねていて、顔の上半分が完全に隠れてしまっていた。


この人が鳳条鵺ほうじょうぬえ……永月の友達?


「来てやったぞ、鳳条」


「来たのか、あきつきながと……その人は?」


「は、はじめまして、永月の後輩の刃金はがねアイ、です」


「……とりあえず、入って」


家に入る。かなり広めのリビングに最低限の家具と観葉植物が置かれている部屋だった。

部屋は3つあるみたいだ。家族で住んでるのかな? 「ここ座って」とダイニングテーブルに案内され、私達は座る。正面に鳳条さんが座った。


「…………」


「…………」


鳳条さんはこちらをじっと見たまま何も喋らないし、永月も何も喋らない。隣を見る。永月は分かりやすいくらいに緊張して固まっていた。

いや、何この空気。さっそく地獄なんですけど。


「永月、永月」


肘で小突くと、ハッとしたように永月がこちらを見る。

足元の紙袋を指差すと、ようやく気付いたようにそれを手に取った。


「これ、一応買ってきた」


「……ああ、ありがとう」


そう言ったきり、再び沈黙が場を支配する。

何なんだろうこの空気、こいつらほんとに友達? 見つめ合うと素直におしゃべり出来ない系男子かい。


『ちょっと永月どうなってんのこれ! 空気終わってるんですけど!』


脳内で永月に呼びかける。今回の潜入捜査に参加するあたって、何かあった時の為ということで、冬華に私と永月の脳内パスを繋いでもらったのだ。

初めての使用がこんなどうでもいいことになるとは思ってなかったけど!


『知らねぇよ、テメェがなんとかしろクソ新人。その為に来たんだろ』


『はぁ!?』


『ホールケーキ10個とコーヒー屋のチケット5000円分、要らねぇのか?』


『……ぐぬぬ』


確かに餌に釣られてホイホイ来ちゃったわけだし……仕方ない。最低限の役割は果たすか。


「あ、あのぉ~鳳条さん。ご趣味は?」


「無いかな」


「じゃ、じゃあ好きな食べ物は~?」


「……特に無いかも」


「あー……そうですかぁ」


『ギブ』


『は!?』


『だって無理でしょこれ! 会話続かないって! 仲いいんでしょ!? あんたもちょっとは頑張れや!』


『チィッ!』


永月は睨みつけるように鳳条さんを見つめ、絞り出すように、威圧するように問いかけた。


「鳳条、お前……趣味は?」


「なんで私と同じこと聞いてんの!? アホかあんた!」


「黙れクソ新人! テメェが何話せばいいかちゃんと教えねえからだろカス!!」


「私よりコミュ力無いあんたの方がカスでしょ! このコミュ力皆無カス野郎!」


「あ゛ぁ!?」


「二人は仲が良いんだな」


「「はぁ!?」」


喧嘩腰のまま二人で振り返る。鳳条さんはさっき渡したどら焼きをもぐもぐと食べていた。


「ながとの友達、確か、えーと……メガネアイ、だっけ?」


刃金はがねアイです。ついでに友達じゃないです」


「めがねアイ、俺とキスしてみる?」


「は……はぁ!?」


言われた言葉を理解した瞬間、顔にぼっと熱が集まる。鳳条さんは気にせずどら焼きを食べていた。


「な、なんで!? キス!? しませんけど!?」


「そっか、秋人はしてくれたんだけど」


「「はぁっ!?」」


私と永月が同時に叫ぶ。


「永月、もしかしてアンタ、家行くってそういう意味だったの? 私めっちゃ邪魔者じゃん……帰るね」


「違う! ただの間接キスだ! テメェもちゃんと説明しろよ鳳条! このクソ馬鹿野郎!」


「? ごめん」


そう謝りつつも、鳳条さんはメモを取り出し、サラサラと何やら書いていた。


「チィッ! どいつこいつもアホ野郎ばっかだ!」


「でもさ、なんか似てるよな、二人」


「「え?」」


「友達になると、似るものなのか?」


「……いやいや? さっきも言ったけど私達、友達じゃありませんけど?」


「こいつとダチになるくらいなら、その辺にいるダンゴムシと仲良くしたほうがマシだ」


「誰がダンゴムシだって?」


「テメェはダンゴムシじゃねえ、ダンゴムシ以下だ」


「……よし。やり合うか、拳で」


「いいのか? 泣いても止めてやらねぇぞ。俺は男女平等主義だからな」


「望むところですけど?」


腕まくりをし、額を合わせてギリギリと睨み合っていると──。


「ぬっえっどっのぉ~!!!」


突然玄関から高らかな声が響き、私達は玄関の方を見る。ふくよかな男の人がくるくる回りながらリビングに入ってきた。

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