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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第三章──潜入捜査という名の青春、開始
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愛じゃない-2

「それより、永月の捜査状況はどうなの?」


「俺は……鳳条鵺ほうじょうぬえと接触した」


「え? ずっと登校してなかったって生徒だよね?」


「今日偶然学校で会った」


「確か被疑者候補の3人のうちの一人だったよね……会ってみてどうだった?」


「まあ……変な奴だった」


「変な奴?」


永月らしからぬ漠然とした表現だな。ちょっと気になる。よっぽど変な人なのか?


「他の被疑者2名に関しては特に怪しい動きがねぇし、鳳条鵺については俺が調べる。とりあえずお前は、宇宙こすもソラを徹底的に洗え。くれぐれも疑われるような事だけはすんなよ」


「……うん」




「ねぇ冬華。私のランクってどうなってるの?」


「え?」


永月と解散してから執務室を訪れた私は、冬華に膝枕してもらいながら問いかけた。


「ふふ。ついにアイちゃんも自分のランクが気になるようになったんだ?」


「うん……なんとなく、知っておいた方がいいかなって」


「アイちゃんはまだ戦闘経験が二回しか無いから、ちゃんとしたランク付けが出来てないの。だから推定ランクになっちゃうけど、いい?」


「うん」


「SSランク、低くてもSランクってとこが妥当かな?」


「え!? そんなに高いの!?」


思わず起き上がって叫ぶ。冬華は私を指差し、にこりと首を傾げながら言う。


「そうだよ。アイちゃんはとっても強いのです」


「そんな……だって私、ホルダーになったばっかだよ?」


「そうだね」


「冗談……じゃないんだよね?」


「本気だよ。色んなホルダーの子を見てきたけど、そんな私でも、アイちゃんは別格だと思う」


別格って……そんなに私、すごいの? なんか、あんまり信じられない。


「信じられないのも無理は無いか。でもそのうち分かるよ。自分の力の真価に。それこそ、そう近いうちに必ず……ね?」


そう言って冬華は、黒い手袋を着けた私の左手をそっと手に取り、そしてそっと口づけた。


冬華って素でこういうことしちゃうんだもんな。なんか……ドキドキしちゃう。

でも、他の人には絶対こんなことして欲しくないや。


「ねぇ、冬華」


「なに?」


「今日さ、泊まってっていい? 始発でちゃんと帰るから」


「いいよ。ベッドが一つしか無いから、一緒に寝ることになっちゃうけど」


「いい。その方がいい。冬華とくっついてると……すごく安心するから」


ちょっとドキドキしちゃうけどね。


「嬉しい。私もアイちゃんといると……とっても落ち着くよ?」


ふわりと細い腕が私の身体に回る。銀糸のような柔らかい髪に鼻先を埋め、華奢な背中に手を回し、引き寄せた。

最初は照れてしまってしょうがなかったけど、何度か繰り返すうちにこなれてきた。


何だってそうなのかな? ETを倒すのとか。友達を作るのとか。

今まではなんでも最初から上手くやろうなんて考えてガチガチに緊張してたけど、そんなの無理に決まってたんだ。

それにしても冬華……本当にいい匂い。


「冬華っていつもいい匂いするよね。はぁ~……ずっと嗅いでたい」


「あれ、ごめん。昨日シャワー浴びてなかったかも」


「そうなの?」


「そういえば、一昨日も……」


「そうなんだ。めっちゃいい匂いなのにね」


「「…………」」


「冬華、一緒にお風呂入ろっか」


「うん。そうだね。そうしよう」




それから数日、ソラちゃんと連絡先を交換した私は、積極的に自分から連絡するようにしていた。

ソラちゃんは本当に私を気に入ってくれたようで、週末二人で遊びに行くことが確定した。


「よし、とりあえずは一安心……かな?」


湯船に浸かりながらスマホを手に、私はため息をつく。湯船に浮かべたアヒルちゃんが、ゆらゆらと揺れた。

仲良くしてくれる相手に、こんな騙すようなこと、本当にいいのかな?

もしかしたら、これからの対応次第ではソラちゃんに嫌われるかもしれないし……いや、それでいいんだ。だって私は『6課のホルダー』なんだから。


失踪事件を解決するのが私の仕事。曼荼羅まんだら学校に通ってるのは潜入捜査のため。それ以上でも以下でもない。

スマホに視線を落とす。クレープを食べに行った時に四人で撮った写真がこちらを見ていた。

綺麗な笑顔を浮かべるみんなに寄り添い、ぎこちなく顔を引きつらせて笑顔を浮かべる私は、なぜかそう悪くないなと思えた。


事件が解決したら学校には行かなくなるわけだし、別れが辛くならないように、ほのかちゃんとアキラちゃんとも……ちゃんと距離を取らないと。



「アイちゃーんっ!」


「うわっ!?」


翌朝、少し気乗りしないまま登校すると、ほのかちゃんが飛びついてきた。私は慌ててその小さな身体を抱きとめる。


「ほのかちゃん……おはよう」


「もうっこの間は学校サボってソラちゃんと二人でどこ行ってたの~!? 寂しかったんだからぁ~!」


「あはは……ごめんね?」


「ほのか、その辺にしとけ」


「ひゃわっ!?」


アキラちゃんがほのかちゃんの襟ぐりを掴んで軽く引く。するとほのかちゃんは小動物みたいにシュンとしてされるがままになった。


「アキラちゃん、おはよう」


「おはよ。今日はさすがにサボらねぇよな?」


「うん……もちろんだよ」


「? アイ、顔色があんまり良くないな。何かあったか?」


「あ、ううん。なんでもないよ! 昨日徹夜で漫画読んじゃって寝不足でさぁ~」


「ならいいけど……なんか悩んでるなら、ちゃんと私達に相談しろよ?」


「そーだよっ! お悩み相談はこの私、超天才ほのかちゃんに任せなさーいっ!」


不敵に笑うアキラちゃんと、えっへんと胸を張ったほのかちゃんがこちらを見る。

その二人の姿が、私にはとっても眩しくて、輝いて見えた。


そうだ。後悔しないようにちゃんと伝えておこう。

私の気持ち。取り繕わず、不器用でも自分の言葉で。


「ほのかちゃん、アキラちゃん。ちょっとだけ……聞いてくれる?」


そう切り出すと、二人は不思議そうな顔で私を見た。

私はまるで入学式の日に戻ったみたいに俯き、しどろもどろに言葉を紡いだ。


「私ってほら、根暗だからさ。自分から話しかけるとか、怖くて全然できなくて……『こんな私が誰かに話しかけてもいいのかな』『嫌われたりしないかな』って、そればっか気になっちゃって、この学校に来るまでは、ずっと一人で過ごしてたんだ。ていうか、実はずっといじめられてたっていうか……だから、ほのかちゃんとアキラちゃんが声掛けてくれたの、遊びに誘ってくれたの、本当に、すごく嬉しかったんだ。あの時声掛けてくれて、ずっと仲良くしてくれて……本当にありがとう」


顔を上げる事ができず、もじもじとスカートを触る。急に何言ってんだこいつ? って思ってるよね。

でも、恥ずかしいけど、すごく恥ずかしいけど、感謝の気持ちは伝えたかった。

潜入捜査でこの学校に来ただけだけど、あの時声を掛けてくれて、それからずっと仲良くしてくれて、本当に幸せだし、感謝してる。


ほのかちゃんとアキラちゃんは、私にとって地獄でしかなかった学校という場所を、楽しいと思える場所に変えてくれた人だから。


「アイちゃーんっ!」


「わわっ!?」


突然ほのかちゃんが私に抱きついてくる。と思ったら、なぜか珍しくアキラちゃんまで私とほのかちゃんを包むように抱きついてきた。


「ほのかちゃん……アキラちゃん?」


「ほのかだって、ほのかだってねぇっ! アイちゃんと友達になれてめっちゃ嬉しいよ~! 今まで寂しい思いした分、これからほのか達とい~っぱい遊ぼうね! 思い出作ろーね!?」


「アイを一人にさせとくなんて、前の学校の奴らは見る目がなかったんだよ。あんまり気にすんな。大丈夫、これからは、私達がいるんだからさ」


「ほのかちゃん、アキラちゃん……うん。ありがと、二人とも……だいすきだよ」


「あれ!? アイちゃん泣いてる!?」


「アイ、大丈夫か!? ほら、ハンカチ!」


やっぱり私、ほのかちゃんとアキラちゃんの事が大好きだな。初めて出来た友達が、二人で本当に良かった。

ワガママかもしれないけど、無理だって分かってるけど、本音を言うのなら私──二人と離れたくないよ。

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