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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第三章──潜入捜査という名の青春、開始
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愛じゃない-1


「は!?」


秋人が声を上げて後ずさる。するとその男はようやく秋人に気付いたように、のんびりと声を上げた。


「あ、人がいたか」


「なんだお前。つーか……んな所で何やって……?」


「にゃー」


「は!?」


男の言動が全く理解できず、秋人は再び声を上げて後ずさる。


「あれ、驚かせちゃったっぽいな。猫の気持ちを知りたくて、茂みに入ってみたんだけど……」


のそりと出てきた男を、秋人はぎょっとしながら凝視する。線は細いが背丈はある。秋人を見下ろす程度に。

まるで半年は切っていないのでは無いかと疑いたくなる紫がかった髪は、前髪が長すぎて、鼻先から上を覆い隠してしまっていた。


男は突っ立ったまま、ただひたすらにじっと秋人を見下ろしている。


なんだコイツ。『わるい宇宙人』か? 殺気は感じないが──。


秋人が手元にエナジクトを呼び出す。いつでも抜刀出来るように構え、鋭く睨みつけながら問いかけた。


「てめぇは一体何者だ? 答え次第では、斬る」


「……あれ。なにそれ、刀? 本物?」


「質問に答えろ」


「俺は怪しい者じゃないよ」


「怪しい奴は大体そう言う」


「あー……もしかして、この髪のせいか」


男が思い至ったように前髪をかきあげる。全貌が明らかになった顔を見上げ、秋人は目を見開いた。


「お前は……鳳条鵺ほうじょうぬえ


「あれ、俺のこと知ってんの?」


「同じクラスだからな。授業中だろ、こんなとこで何してる」


「そう聞かれたら、俺は『そっちこそ』って返すけど」


「俺は……」


「サボり? っていうか……不良?」


言い淀む秋人に鵺が畳み掛け、手元にある電子タバコのデバイスに視線を落とす。


教師にチクられたら色々面倒か。刀を消失させ、デバイスをポケットにしまう。


「……まあ、そんなとこだ」


「不良か。怖いな。俺、お金持ってないです」


「不良じゃねえよ」


「言葉と目付きが怖い。殺気立ってる。不良だ」


そう言って鵺は前髪を下ろした。再び彼の顔が隠れる。

鵺はのそりのそりと歩き、秋人の隣に座り、そしてじっと秋人に視線を送った。

秋人は決して鵺の方を見ようとしない。気まずい沈黙が流れる。


「……なんだよ」


「あんた、名前は?」


「永月秋人だ。テレビとか配信で見た事あるだろ」


ET駆除に関しての活動は控えめにはなってはいるが、秋人の活躍ぶりは連日報道されている。目にする機会は多いだろう。

しかし鵺は少しの間を置いた後、首を横に振った。


「いや、知らない」


「は? あんまり見ないのか、テレビとか」


「うん。俺、生まれてから一度もテレビ、見たことないから。それに……配信って何?」


秋人は奇妙な問いかけにようやく鵺に顔を向ける。

長い前髪に隠れた顔は、くすりともせずにこちらを見ている。冗談では無さそうだ。


「……まじか、お前」





「捜査状況の報告、端的に」


渋谷区役所の地下駐車場に置いた車の中で、永月が問いかける。言うべきか悩んだ後、私は報告することにした。


「今日は、学校サボってソラちゃんと話をしました」


「お前もサボってたのかよ」


「お前もって?」


「いや、こっちの話だ。ソラってのは、昨日言ってた首相の娘か……何を話した?」


「聞かれたの。テランについてどう思うかって」


「テランについて?」


「うん。なんかソラちゃん。かなりの差別主義者みたいなの。ハーフに対してじゃなくて、テランに対して……確か失踪した生徒って、みんなテランの生徒だったよね?」


「そうだな」


「今日の話聞いてた感じ、もしかしたらソラちゃんが犯人かもって思った。なんていうか、テランに対する憎悪と嫌悪みたいなものがすごく強くて……聞いてて嫌な気持ちになっちゃった」


「失踪事件については話したのか?」


「話してない。ずっとソラちゃんが話してるのを聞いてただけだから、そういう雰囲気に持っていけなかった」


「なるほどな。一度宇宙(こすも)ソラの周辺を洗う価値はあるかもしれない。なぜ曼荼羅まんだら高校の生徒ばかりを狙ったかについては、疑問が残るが」


「永月、ソラちゃんに会ったこと無いよね? 私ソラちゃんに気に入られたみたいなんだ。今度放課後遊びに行く約束してるから、どっかから姿見て、怪しいかどうか見てみてくれない?」


「……分かった。ただ、そいつが犯人だとしたら、面倒なことになるな」


「面倒なこと?」


「首相の娘を逮捕するとなると、俺達みたいな低ランクのホルダーには許可が降りないかもしれない。いや、ハーフという時点で、身柄確保すら不可能の可能性も……一度吹雪室長に聞いてみるか」


「そういえばランクって何なの? ETのランクはD~SSSまであるって冬華から聞いたけど、私達にも同じようにランクがあるってこと?」


「ああ。ホルダーはCが最低で、SSSが最高」


「永月は何なの?」


「C」


「え……C?」


信じられなくて聞き返す。永月は制服のブレザーから電子タバコを出した。酸素を求めるように深く吸い、フロントガラスに向けて白い煙を吐き出した。


「じゃあ、私のランクもCってこと?」


「……自分のランクは室長に直接聞け」


永月は窓に肘をつき、頑なにこちらを見ようとしない。

そういえば、冬華が「永月は弱い」って言ってた。私、もしかして変なこと聞いちゃったかも。

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