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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第一章──どうしようもない現状と、運命の出会い
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ギラギラ-4


周囲の生徒がやばいという顔をする中、葛西先生が血相を変えて私に駆け寄ってくる。そして私の肩を支えて立たせてくれた。


「葛西……先生」


「刃金! 怪我はないか!?」


分厚い前髪で覆われている私の瞳を、葛西先生はまっすぐ見つめてそう問いかけてくれた。

「はい。大丈夫です」としどろもどろになりながら返すと、葛西先生はようやく表情を緩め、そして今度はクラスメイト達をきつく睨んだ。


「お前ら……これはどういうことだ?」


「ち、違うんです先生っ! これはただの遊びというか……なあ、そうだよな刃金!?」


私の髪を掴み上げた男子生徒が、慌てて私に問いかける。

こちらを見る目には『言うこと聞かなければどうなるか分かってんだろうな』という、強い脅迫の意思が込められているように感じた。

私はそれを汲み取り、男子生徒に同意するように、小さく頷いた。


「おい、本当か刃金?」


「はい……ちょっと、悪ふざけが過ぎちゃったというか……心配かけてすいません」


視線を泳がせる私とは対称的に、葛西先生は真意を読み取るようにじっと私の瞳を見つめる。

そして私が決して口を割らないと判断したのか、小さくため息をついて肩を落とした。


「……分かった。とりあえずこの机と椅子をきれいにするぞ。授業はそれが終わってからだ。おいお前ら、手伝えよ」


「あ……はいっ!」


先生の言葉に生徒たちはテキパキと作業をはじめた。


それをぼんやりと眺めていると、先生が私の頭にぽんと手を乗せる。

大きくてしっかりした手が、優しく頭を撫でた。

恐る恐る見上げると、先生は白い歯を見せてにこりと笑った。


「刃金の髪はきれいだな。内側が青色になってる……まるで空みたいだ」


そう言って私の腰まで届く長い髪を持ち上げ、中を覗き込む。


私の髪は、表面は黒髪だけど、内側が青色になっている。生まれつきのものだ。

これは私の属する種族、『ハーフ』の特徴である。

瞳の色が左右で違ったり、髪の一部分の色が違ったり、有色人種なのに肌が病的なほど白かったり。


人によって異なるが、共通して一目で『周囲と違う』と分かるような特徴を持って生まれる事がほとんどだ。


「綺麗だなんて、そんな……」


「謙遜するなよ。先生は本当のことを言ってるだけだぞ?」


先生の手がそっと私の髪から離れる。

私は髪を手ぐしで整えながら、長い前髪のカーテンの中で人知れず顔を真っ赤にし、俯いた。

鼓動がドキドキと心地よく高鳴る。



先生は「テラン」だ。

テランはハーフを差別するのが当たり前なのだ。


私の所属する種族『ハーフ』は、人口の割合としては約15%。

エランとテランの間に生まれた子、つまり『間の子』だ。


存在する3つの種族の中で最も地位が低く、差別の対象でもある。

おじいちゃんやクラスメイトはもちろん、この町の人々にも散々冷遇されてきた。

私のように産まれてすぐに捨てられるような子だって、そう珍しくは無い。



なのに先生は違う。いつだって私をクラスメイトから守ってくれる。


先生を盗み見る。

黒く重い前髪越しでも、先生の日焼けした横顔はキラキラと光って見えた。



私がクラスメイトにいじめられても真面目に学校に通うことができるのは。

死にたくなるような家庭環境でも生きていこうと思えるのは。


葛西先生がいてくれるからだ。


残酷で無慈悲なこの世界で、先生は私にとって、唯一の味方だった。




放課後、私は職員室に向かった。


途中でトイレに行き、念入りに前髪の乱れを整え、胸を弾ませながら廊下を歩く。


「失礼します」と声を掛け、職員室の前に立ちすくむ。周囲の先生が私を訝しげな目で見た。

ハーフの生徒は職員室に入ることを禁じられている。

なので私はいたたまれない気持ちのまま、じっと立ちすくむしかなかった。


教頭先生がゆっくりと歩いてきて、私の前に立ち塞がる。

そして腕を組み、威圧するように問いかけてきた。


「何だキミ、一体なんの用だ?」


「あ、あの……かさい、葛西先生に……用事が……」


「はあ? 聞こえないぞ。もっとはっきりと喋りなさい。でないと──」


刃金はがねっ!」


活気に満ちた声が私の名前を呼ぶ。顔を上げると、葛西先生が笑顔で駆け寄ってきてくれた。


「刃金っどうした? 誰かに用事か?」


「あっ葛西先生に……その……朝のお礼、言いたくて……」


しどろもどろにそう言うと、葛西先生は一瞬目を丸くしたあと、がははと豪快に笑った。


「なんだそんなことか! 気にするな」


「だって私、本当に嬉しくて……いつも先生は、私をかばってくれるから……」


「ゴホンッ!」


咳払いでハッと我に返る。教頭先生が苦虫を噛み潰したような顔で私達を見ていた。

葛西先生が苦笑いしながら会釈をし、私達は場所を変えることにした。

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