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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第三章──潜入捜査という名の青春、開始
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ビビデバー1

「あ、あの……めちゃくちゃにとは……具体的には、どういう風に……」


「もしかしてお前、記憶が無いのか?」


「……はい」


「じゃあ忘れろ」


「え!?」


永月さんはそっぽを向いてしまった。


どうしよう。めっちゃ気になる。私一体何したの?

実は永月さんにとんでもない事しでかしてたんじゃ……。


問いただしたかったが、永月さんの背中から発せられる「絶対に触れるな」という無言の圧に負けて、私はそれ以上聞くことはできなかった。


「とにかくテメェの力は借りない。今回の捜査は、俺が主体となってやる。お前は俺が命令するまで妙な動きをするな。いいな?」


「……わかりました」




「駄目です」


「…………」


話し合った結果を執務室へ行って永月さんと共に報告すると、冬華はきっぱりはっきりそう告げた。


「何故です? 何が不満なんだよ。刑事としての経験は俺の方が長い。こいつは入りたてのペーペー。どっちが指示を出す側かなんて、一目瞭然だろ」


「捜査の指示を出すのが永月くんというのは構わないと思ってるよ。でも、万が一相手と戦闘になった時は、アイちゃんに頑張ってもらわないと」


「俺が弱いから、ですか」


「うん」


冬華は微笑んだまま、またまたはっきりぱっきりと言い切った。


「永月くんは6課に来てからはET退治ばかりで、『その他の案件』に関わるのは初めてでしょ? わるい宇宙人はETと比べ物にならないくらいとっても強いよ。永月くん一人じゃ到底太刀打ち出来ないくらいにね。だから仮に戦闘になった場合は、アイちゃんを主体として二人で戦ってもらいます」


恐る恐る永月さんを盗み見る。何かに耐えるように唇を噛み、拳を握り込んでいた。


「もしそれでこいつが暴走したら……また俺に『アレ』をしろって言うんですか……」


「場合によってはそういう事になるかもね」


「……拒否権は」


「無いよ。永月警視総監(君のお父さん)からも言われてるからね。『くれぐれも秋人を死なせないように』って。だからこれは、君の生存率を上げるため。()()()()()()()にも必要なことです」


「ふ、冬華……そんな言い方しなくても」


「……分かりました。失礼します」


「永月さんっ」


バタンと乱暴に扉を閉め、永月さんは部屋を出ていってしまった。


慌てて冬華を見る。穏やかな表情のまま紅茶を飲んでいた。

最近なんとなく気付いたけど、冬華って永月さんに対して厳しい気がする。

永月さん、本当に弱いのかな? だとしても、あんな言い方──。


「冬華、何もあんなに厳しいこと言わなくても……」


「しょうがないよ。だって事実だもん」


静かにティーカップを置き、冬華はまつ毛を伏せる。


「永月くんは気付いてない。気付こうとしてないの。自分の特別な能力に」


「特別な能力?」


「そう。ホルダーとして求められる能力は戦闘力だけじゃない。この先きっと、彼にしか出来ない事がたくさん出てくるはず。まずはそれに気付かせてあげなきゃいけない……たとえ嫌われ役を買ってでもね?」


冬華は困ったような笑みを浮かべて私を見上げた。

永月さんに対する冬華の辛辣しんらつな言葉は、ちゃんと意味があるってことなのかな?


「冬華ってすごいね」


「そうかな?」


そうだ。さっきの会話で私が『永月さんにしたこと』を冬華は知ってる感じだった。聞いてみようかな。


「ねぇ冬華」


「なに?」


「私ってさ……永月さんに何かしたのかな?」


「してないよ。『アイちゃん』はね」


「私はって、どういうこと?」


「さあ、これから分かるんじゃないかな?」


「これからって……」


冬華も教えてくれないんだ。私、本当に何したんだろう?




数日後、始業式の日がやってきた。

授業が終わった後、ほぼ全生徒が3年のクラスへとなだれ込んだ。「永月秋人が転校してきた」というニュースが校内に知れ渡ったのだ。


「ねえ! 永月秋人はどこ!?」


「クラスにはいない! 帰ったのか!?」


「おい! 屋上にいるらしいぞ!!!」


その言葉に先導され、人が流れていく。私もそれに紛れてついていった。屋上に出ると、既に人がひしめき合っていた。

生徒達がしきりに上を見てキャーキャーと歓声をあげている。


「ねえ永月秋人は!?」


「! ほらっ! 上見て!!」


「キャー!! 秋人くーーーん!!! こっち向いてぇーーー!!!」


私もつられて上を見る。確かに永月さんがいた。屋上の塔屋とうやの上に立ち、集まった人々を険しい顔で眺めている。

永月さん、あんな所でいったい何してるんだろう? あんなに目立つの嫌がってたのに。

疑問に思っていると、彼は足元から何かを取り、口元に当てる。それは拡声器だった。

え、一体何を──。


『2年B組、日高ひだか友尊ゆたか。2年C組、東上とうじょう風未かざみ。3年A組、鳳条ほうじょうぬえ。以上の3人は残れ。それ以外の奴らは──全員散れ』

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