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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第二章──覚醒と暴走、ついでに入学
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きゅうくらりん -1


「はぁ~。緊張したぁ~……」


警視総監室を出てエレベーターに乗ったところでようやく緊張が解け、私は思わずエレベーターの壁に背を預けた。


あれが警視総監。警察の中で一番偉い人。ずっと笑顔で接してくれてたけど、なんか、なんか……めちゃくちゃ怖かった。


ずっと黙ったままの永月さんをちらりと見る。今にも倒れそうなレベルの顔面蒼白で足元を虚ろに見つめていた。


怖いのは怖かったけど……やっぱり連れ出して正解だったのかも。


「どうせ嘘なんだろ、さっきの」


「へ? あ、はい。何となく、連れ出したほうがいいのかなって……」


「……余計なことしやがって」


エレベーターが地上階に到着する。永月さんはふらふらとエレベーターを降り、次の瞬間、その場に蹲ってしまった。


「永月さんっ」


駆け寄って肩を支えると。


「触んな!」


バシンとその手を弾かれる。面食らったまま固まっていると、永月さんは血の気の引いた顔で私を睨んだ。


「一緒なんだよ。あのクソ野郎もお前も……どいつもこいつもイカれてる……」


壁を頼りに立ち上がり、永月さんはそのまま行ってしまった。


一緒? 私とそむくさんが?


永月さんの言ってる言葉の意味がわからず、しばらくその場で呆然としながら、「これ、明日からの潜入捜査、ほんとに大丈夫なのかな?」と不安になってきていた。



翌日、私立曼荼羅(まんだら)高校の入学当日。


無事入学式が終わり、教室でみんなが帰り支度をしつつ、談笑していた。

新しい制服に身を包み、ぎこちないながらも和気あいあいとしているクラスメイトを他所に、私はガチガチに緊張していた。


やばい。潜入捜査も当然やばいけど、都内有数の進学校なんて、私絶対勉強ついていけない。

冬華は「一応根回ししてくれてるから心配しなくていいよ」って言ってたけど……はぁ、やっぱり不安だよぉ。

それに学校には全然良い思い出が無い。

小中とずっと虐められてたし……まあ、冬華に言われたから、ちゃんとやるんだけどね?


もしいじめられたとしても、まあ大丈夫。

だって私はこの学校にずっと通うわけじゃない。私がこの学校に来た目的は、潜入捜査。捜査が終わればもうこの学校に来る必要はない。

早く『わるい宇宙人』を捕まえて、行方不明者の救助を──。


「ねぇねぇ」


「ファッ!?」


突然隣から声を掛けられ思わず変な声を上げて振り向く。ぱっちりとした大きな瞳と目が合った。

人懐っこい感じのする茶色の瞳。栗色の肩までのウェーブヘア。小さな顔。ブレザーの袖から覗く、手の甲まで隠れるくらいのクリーム色のセーター。

クラスで一番人気がありそうな感じの、柔和な雰囲気のあるすごく可愛い女の子だった。


「あっハイ……ナンデショウカ?」


「その髪色、綺麗だね」


「かみ?」


あ、そうか。私の髪、内側が青いもんね。


「こ、これは……私、ハーフで、だから……生まれツキッ……」


カタコトになりながらそう返すと、女の子はクスクスと小さく笑った。


「入学式って緊張するよね?」


「う、うん……ごめん。私、いわゆる陰キャだしコミュ障で……あんまりうまく、話せないから……」


「大丈夫だよ。私もすごく緊張してるし」


女の子がにこりと眩しい笑みを浮かべる。優しい人だ。私がハーフだって分かっても態度が変わらない。

めちゃくちゃ可愛くて陽キャっぽいのに。

こんな陰キャの私に、声を掛けてくれるなんて……。


「私は杉崎すぎさきほのか。ほのかって呼んでね。せっかく隣になったんだし、仲良くしよ?」


「わ、私は刃金はがねアイ。あの、ほのかちゃん……私も『アイ』でだいじょうぶ、デス」


「やった。じゃあアイちゃん。これからよろしくねっ」


「うん。よ、ヨロシク……」


屈託のない笑顔をこちらに向けてくるほのかちゃんの視線に耐えられず、私は俯きながら、しどろもどろにそう答えるのが精一杯だった。


「ねぇ、アイちゃんってこの後ヒマ?」


「ヒマ? ……うん。特に予定は無いけど」


「じゃあさ、今から一緒に渋谷に遊びに行かない?」


「しぶや……あそび……」


言われている言葉の意味が理解できず。機械的に復唱する。

これはもしかして、いわゆる遊びのお誘い? 遊びに誘われてる? この私が?


「い、行きマス!」


「ほのか~腹減った。そろそろ行こうぜ~」


ほのかちゃんの後ろから誰かが歩いてきて、背後からじゃれるようにほのかちゃんを抱きつく。

艷やかな黒髪が映える、クールな顔立ちの眉目秀麗という言葉が似合うイケメンだった。


そ、そんな。公衆の面前で堂々と……もしかして、ほのかちゃんの彼氏かな?


「あっ、アキラちゃんっ」


ほのかちゃんが腕の中にすっぽり収まったまま、イケメンを見上げて声を上げた。


へ? 『ちゃん』?


改めて見てみると、そのイケメンはスカートを履いていた。確かに髪の長さも、ボーイッシュとも言えなくもない。

どうやら中性的な雰囲気の女の子だったようだ。


「あれ? ほのか、この子誰?」


「さっき仲良くなったアイちゃん。可愛いでしょ~」


「あっ刃金アイです……よろしくお願いします」


「へー、結構イイ感じの子じゃん? 私は鳳凰院ほうおういんあきら。アキラでいいよ。よろしくね」


アキラさんが目を細めて微笑む。女の子だと分かっていても、かっこよくてドキッとしてしまった。


「さ、二人とも早くいこっ! いざ渋谷へレッツゴー!」


ほのかちゃんが私達の腕に抱きついて引っ張る。私は嬉しいやら緊張やらでドギマギしながらもそれについていった。

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