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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第二章──覚醒と暴走、ついでに入学
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大脳的なランデブー -3

「……絶対嫌だ」


「嫌? 何がだ? オレ様の靴を舐めるという至極簡単な事も出来ないくらいプライドが肥大化してしまった自分が、か?」


男が立ち上がり、そして歩いてくる。

秋人は緊張した面持ちで、しかし決して目を逸らすことなく男を睨みつけた。

男は秋人の前で立ち止まり、そして見下ろす。そして秋人の顎を掴んで引き寄せ、至近距離で睨みつけた。


「……っ……」


「お前さぁ、自分の立場分かってる? オレが靴舐めろって言ってんの。そう言ってんだからさっさとそうしろよ。このクソグズ低脳野郎が」


「っ!」


男が秋人の頭を掴み、カーペットに叩きつける。そして身体を起こそうとした秋人の頭を踏みつけた。

自然、秋人の顔はもう片方の男の革靴へと押し付けられてしまった。


「……テメェ……っ!」


頭を踏みつけられたまま、秋人は低く唸り、男を睨み上げる。が、男は涼しい顔をしながら秋人を見下ろすばかりだった。


「あいっ変わらず強情だなぁ~友達いねぇだろお前? ほら、さっさとしろって」


男は爽やかな笑顔を浮かべながらグリグリと頭を踏みつける。しかし秋人は歯を食いしばり、耐えるばかりだ。


「なんだよ。今日はずいぶん意固地だな。反抗期か? このオレ様に三度も同じことを言わせんなよ馬鹿。オレの、靴を、舐めろ」


言いながらガンガンと男の靴が秋人の頭を容赦なく踏みつける。秋人の表情が苦痛に歪んむ。しかしその瞳は、男をきつく睨み上げていた。


「っ……ぜってーやるかっつの……死ね、クソ野郎っ……!」


「……ふーん。じゃあいいや」


男は秋人を冷たく見下ろした後、頭を押さえていた足を離した。

あっさり引き下がった男に疑問を抱きつつも、秋人は身体を起こす。男は秋人に背を向けたまま、独り言のように呟いた。


「お前んちに住んでる子……確か、杏奈ちゃんだっけ?」


「!」


「一緒に住んでるなら連帯責任だな。可哀想だけど、お前の()()()の代償は、あの子に支払ってもらって──」


「止めろ!!!!」


秋人が叫ぶ。すると男は予想通りと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべて振り返った。


「杏奈に手を出しやがったら……マジでぶっ殺す……!」


「はあ?」


男の表情から笑みが消える。秋人はその瞳の冷たさに、ぞくりと身震いした。

男がゆっくりと秋人に歩み寄り、そして腹を蹴り飛ばした。


「ぐっ!?」


腹を押さえて蹲る秋人を、男は冷たく見下ろす。


「お前さぁ。自分の立場分かってる? オレがどれだけお前に時間と金と温情を掛けてやってると思ってんだ? カスみてえな戦闘力しかないお前を6課に捩じ込んでやったのは、世間のヒーローでいさせてやってるのは、一体誰だ?」


「…………」


「答えろよ。『永月秋人』」


「……分かった。靴でも何でも舐めてやる。だから……杏奈にだけは、絶対に何もするな」


秋人が消え入るような声でそう呟くと、男はぷっと吹き出し、げらげらと笑いだした。


「ばーか、ただの冗談だって。オレだってそこまでの悪人じゃねえよ……でもまあ、お前がどうしても『そうしたい』ってんなら、せっかくだから舐めてもらおっかな?」


男がドスンと椅子に座り、足を組む。秋人は観念したようにカーペットに膝をつき、差し出された黒い革靴の先へと顔を近づけた。

目をぎゅっと瞑り、口をつけようとしたその瞬間──。


「あ、やっぱこっちで頼む」


組んでいた足を戻し、今度はカーペットに両足を着地する。そしてそのつま先を指さした。

つまり彼の靴を舐めようとしたら、伏せをしている犬のような体勢にならなければならないということだ。

本来の秋人ならばこんな状況に屈することはない。意地でも自分の意志を貫き通す。そういう男だ。


しかし彼にとって唯一無二のかけがえのない存在──杏奈を人質に取られてしまっては、話は別だ。


秋人は両手をカーペットにつき、生気を失った顔を靴へと近づける。


「なんで俺が、こんなこと……」


「オレが『お前の嫌がる顔』が見たいから。オレが『お前の嫌がる顔』が好きだから」


「……変態ヤロウ」


「勘違いすんな。これは教育だよ。オレが上でお前が下。動物が酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すのと同じくらい当たり前のことをお前が理解してないから、教えてやってんだよ。いわゆる『親としての愛の指導』ってやつだ」


秋人は全く理解できないという目で男を睨み上げる。すると男は歪に口元を歪ませた。


「あ~いい表情だ。ゾクゾクするね……さあ、舐めろよ早く。最高のアングルで撮ってやるよ」


男は酷く高揚した顔で秋人を見下ろし、スマホを構えて撮影モードにする。

全てを諦めた秋人は長いまつ毛を伏せ、赤い舌先を唇から覗かせた。




「え~と、警視総監室……警視総監室……あった、これかぁ」


冬華に渡された地図を頼りにしながら、私は警視総監室を目指していた。

どうやら警視総監室に続くエレベーターは1つしか無いらしく、私は別のエレベーターに乗ったり、何故か外に出てしまったりしながら、どうにかたどり着いた。


重厚な両開き扉に『警視総監室』という金色のプレート。

この扉をノックするには、私は明らかに場違いなような気がしてならなかった。


どうしよう。本当に入っていいのかな?

冬華は話は通してあるって言ってたけど……とりあえず、ノックだけしてみるか。


控えめにコンコンと扉を叩いてみる。

すると「誰だ~?」と中から男の人の声が聞こえてきた。


「あ、あの~、永月さん……永月秋人さんに、渡さないといけない書類があって、ここにいるって聞いて……」


「あーはいはい。どうぞ入って~」


「……失礼します」


恐る恐る扉を開ける。すると──そこには衝撃の光景が広がっていた。

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