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エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第二章──覚醒と暴走、ついでに入学
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キャンディークッキーチョコレート-6


プツンと、そこで映像は終わった。

苦虫を噛み潰したような表情の永月とは対照的に、冬華は恍惚の表情で瞳を潤ませた。


「すごいよね、アイちゃん。圧倒的で、荒々しくて、恐ろしくて……完璧で究極だよ。SSランクといっても過言じゃないかも。呼び名をつけるとしたら……『漆黒のバーサーカー』って所かなぁ」


「……どうだか。たまたま『第三解放』からしか発動できない個体の可能性だってあるだろ」


「第三解放かぁ。うちでも使える人は限られてるよね。どっちにしろ貴重な戦力だ。初っ端からアイちゃんを『その他の案件』に回すの、正解だったね」


「その他の案件? ……まさか、曼荼羅まんだら高校の潜入って──」


「うん。そのまさかだよ」


「ふざけてんのか? あんな制御の効かねぇクソ暴走機関車、複雑な任務こなせる訳ねえだろ。また死人が出るぞ……目に見えてる」


永月が拳を握りしめ、苦々しげに目を伏せる。冬華は精巧なビスクドールのようなその顔を崩すことなく返した。


「そうだね。アイちゃん一人じゃ無理かもね。でも……永月くんがいたら、話は別でしょ?」


「…………」


「永月くん、ずっと『昇進したい』って言ってたもんね。これは君にとってもチャンスなんじゃないかな?」


「……だとしても、それは俺の力じゃない」


「『運がいい』と考えたらいい。運だって立派な実力の内。紛れもない永月くんの力だよ。だって、アイちゃんの暴走を止められるのは、6課でも永月くんただ一人だけだったんだから……いや、きっと世界中のホルダーをかき集めたって、あの子を止められるのは、永月くんだけだよ」


それは誇張ではなく、事実だった。

アイが2週間眠っていたのは、6課による故意だったのだ。


目的はただ一つ、アイの人体実験のためだ。

彼女に全身麻酔を施し、身体を傷つけて暴走状態を引き起こし、それをホルダーによって制止させるという人体実験。


その実験は警視庁内にいるホルダー全員を招集して行われたが、永月よりも圧倒的に上位のランクのホルダーですら、誰一人として、彼女の暴走状態を止めることが出来なかったのだ。


「永月くんが頑張ってくれてるのは知ってるよ。君がメディアに出てくれてるおかげで、世間でのホルダーやハーフの地位は向上しつつある。でも永月くんは、戦闘能力に関して言えば6課の中でも最低ランク。ランクの低いETの撃墜しか任せてもらえない。それが辛いんだよね?」


「…………」


永月秋人は全ホルダー内最強。

彼は世間ではそう賞賛されている。しかし、それは事実ではなかった。

6課の仕事はその他の案件が9割を占めており、その殆どが極秘任務。

つまりET撃墜はおまけ程度、下っ端の仕事なのである。


永月のメディア露出は世間での6課やホルダーのイメージアップの為の策略であり、彼の本意では決してない。

言うなれば、彼は6課に都合の良い傀儡でしかなかったのだ。


「もしアイちゃんとバディを組んでくれるなら、永月くんのランクも必然的に数段上がる。()()()()からは間違いなく卒業出来ると思うよ」


「…………」


「どうする? 『6課最強』の永月秋人くん?」


「……やります」


心底不服そうな顔をしながらも、永月は確かにそう呟いた。


「うん。そう言ってくれると思った。じゃあそれで上には話を通しておくね」


「……室長」


「なに?」


「あいつ、知ってるのか? 担任の葛西ってやつ……助からなかったってこと」


永月の言葉に、冬華の笑みが消える。

あの日、ETに握りしめられていたアイの担任である葛西は救助されたが、その場で死亡が確認された。


死因の大半を占めたのは全身への圧迫による衰弱だが、暴走状態のアイの剣撃が当たった事による失血が決定打になった。


「教えてないよ。だって、知る必要もないからね。あの場にいた全員の記憶はリリカちゃんに消してしてもらったし。それに……もう全部終わったことだから」


アイちゃんにとって大事なのは、これからでしょ?


冬華は再び口元に笑みをたたえてそう言った。


「もしあいつがその事実を知ったらどうする気だ?」


「そんな事は、その時に考えたらいいの」


「クソ無責任な考え方だな」


「いいの。アイちゃんはこれから幸せになるんだから。過去なんて気にならなくなるくらい……私がちゃんと、幸せにしてあげるから」


「……イカレてる」


吐き捨てるように言って永月は背を向け、ドアノブを握った。


「永月くん」


その背中に冬華が声をかける。永月は振り返らずに答えた。


「なんですか」


「あの程度のETならAランクとは呼べないね。せいぜいBランクだよ」


「……失礼します」


執務室を出た後、永月は荒んだ目で前方を睨みつけ、ポケットに片手を突っ込みながら静まり返った廊下を歩き、その場を後にした。


その日、執務室の近くにある自販機が見るも無惨に切り刻まれた状態で発見されたが、犯人は未だに不明のままである。


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