表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エナジクト──漆黒のバーサーカーと至高の最弱ヒーロー  作者: ノミオ
第二章──覚醒と暴走、ついでに入学
21/77

キャンディークッキーチョコレート-3


「あり得ないよそんなの! だって私、身体真っ二つにされたんだよ!? 絶対嘘だって!」


「嘘じゃありません。ちゃんと証人もいるしね……永月くん。入って」


部屋の扉が開き、「失礼します」と永月秋人が入ってきた。


冬華が言っていた通り、永月さんは無事だったようだ。

良かったと胸を撫で下ろしていると、目が合う。今まで以上に鋭い眼光で私を睨んでいた。

そう、まるで彼の武器である刀みたいな鋭さで。


「永月くん。あの日ETを倒したのは、哀ちゃんだったんだよね?」


「…………はい」


「ほらね?」


そう振られて、私はやっぱり全然納得がいかなかった。

だって永月さんもかなり不満そうな顔してるし、こっちを親の仇かのように睨んでるし!


「いや、だってあり得ないですよ。私……ホルダーになったばっかりだし、永月さんがあんなに苦戦してた敵を倒すなんて……」


「チィッ!」


永月さんの大きな舌打ちが響く。私はびくりと身を震わせ、口を噤んだ。


「まあ、信じられないのは分かるけど、事実だからね。哀ちゃん。初任務ご苦労さま。いっぱい頑張ったね。ありがとう」


にこりと冬華が微笑む。

あのETを倒したという実感は無いけど、こんな風に感謝されるのなんてはじめてだし、私の胸は勝手に高鳴ってしまった。


「というわけで哀ちゃん。永月くん。二人には、これからバディを組んでもらいます」


「「はぁ!?!?」」


「しかも、とある高校に潜入捜査してもらっちゃいます」


「「ハァッ!?!?」」


私と永月が同時に声を上げる。

冬華は驚愕の表情を浮かべる私達を眺めながら、長い脚を組み換え、不敵な笑みを浮かべていた。


「冬華っ、な、ななっ何言って……!」


「哀ちゃんのその制服、実は潜入捜査先の高校のなんだ」


「え!? そうだったの!?」


「室長、嫌です。無理です。こいつとだけは……絶対に嫌です」


永月が心底嫌悪するような顔で辞退を申し出ると、冬華は永月の目を見つめ、柔和な笑みを浮かべた。


「でも、永月くんは分かってるよね? 哀ちゃんは6課に必要な存在で、哀ちゃんは()()()()()()()()()だって」


「…………」


「オッケーしてくれるなら、非番の日、増やしてあげてもいいよ?」


「……チィッ!」


永月は舌打ちをし、殺気立った様子のまま目を逸らし、何も言わなくなった。

それを見た冬華は了承と取ったのだろう。長い睫毛を伏せて頷き、言った。


「詳しいことはまた日を改めて話すね」


「……了解」


「じゃあ永月くん。今日は上がっていいよ」


「……失礼します」


永月は一度もこちらを見ることなく、バァンと乱暴に扉を閉めて出ていってしまった。


永月さんとバディ? あの『永月秋人』と? いやいや……絶対ムリなんですけど!


「哀ちゃん」


「はい!?」


返事をして顔を上げる。冬華は聖母のように目を細め、私を見ていた。


「さっきも言ったけど、ETとの戦闘。本当におつかれさま。哀ちゃんが勇気を出して戦ってくれたおかげで、みんな助かったんだよ」


「……私のおかげで、みんなが?」


信じられなくて聞き返すと、冬華は私の言葉を肯定するようにはっきりと頷いた。


瑜伽ゆが中学のみんなも感謝してたんだよ。哀ちゃんに直接お礼を言いたい。今までのことを謝りたいって子もいたりしたって」


「そんなこと……」


やっぱり冬華の言葉を信じられない。

だって、私みたいな奴が誰かに感謝されるなんて。誰かの役に立てるなんて。そんなのあり得ないから。


「『そんなの信じられない』って顔してるね?」


「へ!?」


「大丈夫だよ。ここに来たばかりの頃は、みんなそんな感じなんだ」


「みんなって……6課のホルダーですか?」


冬華はその言葉に頷き、まつ毛を伏せながら続けた。


「ここにいる子達は、本当にみんないい子なんだ。でも、ハーフってだけで差別されて、酷い扱いを受けて、辛い思いを沢山してきてる。きっと私の想像が及ばないくらいに、いっぱい苦しんできた……だから私は、ここに来てくれたからには、みんなに幸せでいてほしいんだ」


「……冬華」


「ごめんね。変なこと言って。でもね哀ちゃん。あなたは本当に、ここに必要とされてる存在なんだよ?」


「私が……必要?」


「そう。替えの利かない大切な存在。私にとって……ううん。この国にいるみんなが、哀ちゃんを必要としてる」


国が私を必要としてるなんて。スケールが大きすぎて想像がつかない。

でも、私をまっすぐ見つめている透き通る紫の瞳は、嘘をついているようには見えなかった。


誰かに必要とされるなんて、そんなの、経験がなさ過ぎて戸惑ってしまう。

でも、こうして言葉で伝えてもらうと、嬉しくて飛び上がってしまいそうだ。


みんなが私を必要としてる。

もしそれが本当なら、私はそれに、全力で応えたいな。


ふと冬華は腕時計に視線を落とし、立ち上がる。


「そうだ。そろそろ届いてる頃かな。とりあえず、私の部屋に移動しようか」



冬華の後をついて長い廊下を歩く。スーツを着た精悍な顔つきの人々が忙しなく歩いていて、冬華を見つけると敬礼し、通りすぎていく。

そういえば、ここって何処なんだろう?


「冬華、ここって何処なの?」


「ああ、そういえば言ってなかったね。ここは警視庁。つまり東京だよ」


「東京!?」


「私達の所属する地球外生命体対策本部──通称『6課』は、本部を東京に置いてるんだ。国内で一番ETの出没や『その他の案件』が多いからね」


「『その他の案件』って何なの?」


「まあ、それも追い追い分かっていくと思うよ……さ、ついた」


とある扉の前で冬華の足が止まる。そこには『地球外生命体対策本部』という金色のプレートが掛かっていた。

冬華はドアノブをガチャリとして、私を招き入れるように開く。


「どうぞ入って」


「あ、うん……おじゃまします」


促されるままにおずおずと部屋に入る。ふわりといい香りがした。


きょろきょろと周りを室内を見回してみる。

ドラマとかでよく見る、偉い人が使ってそうな木製のデスクと、そこに収まった座り心地の良さそうな革張りの黒い椅子。

大きな観葉植物、難しそうな本がたくさん詰まった本棚。


部屋の中央にある三人掛けのソファは、見るからにふかふかそうだ。

置いてある壺や置き時計などの調度品も、アンティーク感があってセンスが良い。

なんか、ドラマとかでよく見る『会社の偉い人の部屋』って感じ。


冬華の服装も白いワイシャツにブラウンのネクタイ。リボンタイと同色のタイトスカート。

長い銀の髪はハーフアップだし、この部屋がとっても似合っていた。


「紅茶淹れるから、座ってゆっくりしてて」


「へ? あっ……はいっ」


慣れない畏まった雰囲気にぎくしゃくしながら、私はソファの隅っこに座る。そこでふと気づいた。

ソファの前にあるガラスのテーブルの上に、白い箱が置いてある。

なんだろうこれ、冬華のかな?


「おまたせ」


冬華がソーサーに乗ったティーカップと、お皿とフォークを二人分置く。

首を傾げて見上げると、冬華はにこりと笑って、私の正面にある一人掛け用ソファに座った。


「哀ちゃん。この箱、何が入ってるかわかる?」


「へ? ……ううん。分からない」


全く検討がつかなくてそう答えると、冬華は人差し指を立てて見せた。


「ヒント、今日は4月1日です」


「4月1日?」


「そう。ここまで言ったら分かるでしょ?」


「……もしかして、エイプリルフールとか?」


「それもあるけど。哀ちゃん。今日はもう一つ、大事なことがあるでしょ?」


「大事なこと?」


「さあ、開けてみて」


「? うん」


検討がつかないまま白い箱に手を伸ばし、そっと開けてみた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ