目的地:王都 商店街
僕はレストランを去った後、いつも賑わっていた商店街に行くことにした。その商店街は色々なものが売っており、食材や消耗品、珍しい骨董品など様々であった。
だから聞き取り調査やスリ等が多発することがあった。聞き取り調査と言っても単なる情報収集に過ぎなくてスリの方が酷く、お祭りをやってる時なんかは取られてない方が不思議なくらいだった。
その理由としては、貧民街が近くにあったからだろうか。だとしてもここの貧民街は治安はそこそこ良くて皆自分の仕事を持っている。それよりもひどい連中がスリをしていたのだろう。
だが対策をしていないわけもなくこの王都で悪さをした場合信号がなり、王都の騎士団に報告が行くようになっている。どういう機能なのかは僕も知らないが、たとえ犯人が逃げたとしても顔等はその信号で一緒に特定される為国境を越えても追いかけてくる。
この機能を導入してからというものスリをする者はいなくなった。
話を戻そう。この商店街はとても賑わいが良くて品揃えが良かった。他の国よりか回復ポーションが安かったこともあって冒険者の拠点ともなっていた。
僕がよく通っていたお店は大体ここらへんの…建物と建物の間にある狭い道を通って右手の方の階段を降りたとこにあるが、瓦礫が崩れて秘密の階段はむき出しになっていた。
ここの店は一見さんお断りで誰かの招待でなければ入ることができないので、僕も入るのに苦労した。大変だったなぁ…賄賂。
あの店の奴ときたらいい商品と悪い商品とあって悪い商品ばっかり進めてくるもんだから鑑定眼持ちと言った途端舌打ちしてくるし。
魔導書は一冊白金貨一枚(10万円)程で置いていて様々な種類があり、一定層の方々がたまに大勢でこの店に来ることもあったな。
あまりにも高すぎるから値切り交渉で客と朝から晩まで論争しあった事もある。
何だかんだ勇者時代で人に見られないとこで息抜きできる唯一の場所だったと思うな。
???「店の前で突っ立ってないでこっちに来たらどうだ?」
ユゥ「その声は…」
懐かしい聞き覚えのあるあのクソ店主の声がした。
扉を開けるとそこに店主はいた。 あの魔神との戦いの最中に一人で研究をしていたとのことで、王都が壊滅していたことなんて知らなかったらしい。
まぁ無理もないか。この店主は人間じゃなくて「ハイエルフ」だから人間との時間の差が大きく違うんだ。
店主「研究に没頭してたからそんな大事な事知らんかった。どおりでいつもの客が来ないわけだ。」
ユゥ「来ないっていうか…」
店主「全員死んだんだろ。そんなこと言わなくてもわかってらぁ。」
ユゥ「ちなみになんの研究を?」
店主「無限に金が手に入る方法さ…夢があるだろ?」
なんて他愛のない話なんだ。だけどこの店主と話すときはいつもこんな感じだ。僕は店主にこれからどうするのかを聞いた。その反応がこれだ…
店主「客(金)が居なくなったから別の土地に移るさ。またそこでもこんな感じでやってるはず。」
ユゥ「あんたならそう言うと思ったよ。なんか妙に安心した。」
店主「ちょうどいい…」
ユゥ「?」
店主「移転する準備を手伝え…勿論金は出ないがな。」
ユゥ「そのくらい対価なんていらないさ」
僕はこのクソ店主の移転の為にせっせこ店の片付けを行った。ハイエルフなだけあってか骨董品が沢山あった。
ユゥ「これって…マジックバックじゃないか?」
店主「あぁ…そうさ、ちょっと古いがそれは間違いなくマジックバックだ。」
マジックバックといったら冒険者には重宝されている物だが僕はスキルでアイテムBOXがあるから一回も使ったことがない。
店主「そいつは俺のお古でな…小さい頃よく使っていたさ。捨てようとしても捨てられない物だ。」
ユゥ「ふ〜ん。」
大体1時間程の片付けが終わった。要るものと要らないものに分けて、要るものは店主のアイテムBOXに全て押し込んだ。
そして僕と店主は外に出た。
店主「はぇ…本当になにもないな。」
ユゥ「だから言ったろ」
店主「俺は次の国か町に行くけどお前はどうするんだ?」
僕はレストランのおばちゃんの時みたいに自分と出会った縁のある人達の地をゆっくり旅しようと思う。
ユゥ「店を開いたら言ってくれよ?」
店主「バカ…言うかそんなこと。」
そして僕と店主は別れた。
店主「お前も気ぃつけろよ。」
店主は手を振ってくれて元王都から去っていった。店主には悪いが片付けをしている間に色々と拝借させてもらった。アンタに理不尽に金を取られた恨みと言っておこうか。
ちなみに取った物は「マップ検索」と色々な消耗品。マップ検索とは地図を開いて今何処にいるのかが分かるようになっている優れである。僕も王都を出ることになったら重宝するだろうな。
よし…次は王都の学園にでも行こうかな。学園では生徒でもあったし教師としてもお世話になっていたからね。