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第95話 学生の本分は勉学である

 アルバートという隠れ蓑を使いながらダンジョン配信者として驚異的な活動をしている俺だが、普段は大学に通う学生である。


 そして大学では単位を取得しなければ進級や卒業ができないのは当然のことであり、そのルールは当たり前に俺にも適用された。


 つまり何が言いたいかというと、


「しまった、レポートが終わらん!」


 ダンジョン配信にかまけて溜まりに溜まったレポートの期限が迫っているということだった。


 しかもそれだけではなく、その後には後期の期末試験が待ち構えているのだった。


 と言ってもこれでも試練の塔に滞在したとき以外はダンジョン配信をしながらもちゃんと授業には出ていた。


 だからある程度は授業内容も理解しているし、出席点がある授業ならそれなりに稼げているはずである。


(モーフィアスの言うとおりに大学に行ってなかったらマジでヤバかったかもな)


 母の命に代えられるものではないが単位だって大事は大事だ。


 だってモノによってはその単位を落とすと即座に留年確定するものだってあるのだし。


 以前までなら場合によってはそうなることも覚悟はしていたが、既に母を助けるという目標は無事に達成しているのだ。


 その上で単位が取れそうなら、ここでどうにかして取っておきたい次第である。


 幸いにも出られてない期間のノートを友人に借りる算段もついてはいるし、期末試験の方はそれほど問題にはならないだろう。


 その対価として飯を奢る約束をしているのだが、既に一千万円という大金をダンジョン配信のおかげで手に入れることもできているのだ。


 それこそ高級焼肉だろうが恐れに足らずというものである。


 だから問題があるとすれば、期日が迫っているレポートの方だ。


(思った以上に時間が掛かるな。このペースだと幾つかは間に合いそうにないか?)


 自分なりに計画は立てていたのだが、この状況ではその見立ては完全に甘かったと言うしかない。


 いや、認めよう。


 本来なら間に合っていたはずなのだが、闘技場とかの裏ボスのことが面白くて、ついそっちを優先してしまったことを。


 そんな風にダンジョン配信に現を抜かしていて、気付けばこの状況である。


 これでは闘技場とかを使って新しい配信をやるなんて言っている暇などあるはずもなかった。


 必死にパソコンに齧り付いて、レポートの文章を打ち込んでいく。だがその速度には限界があった。


(くそ、次の給料でステータスの一部を現実でも発揮できるはずだし、それが間に合えばもっと早く文章を打ち込むこともできただろうに……)


 その場合はAGIとかDEXが影響するだろうか。


 なんなら器用さが上昇した状態なら、どこまでタイピングの速さが上がるのかとかを調べるのも面白いかもしれない。


 そこ、ステータスの無駄遣いとは言うなかれ。


 こっちは割と真剣なのだから。


「って、そうだ! ロッカールームにパソコンを持ち込めばいいじゃんか!」


 モノリスの中に入ればステータスは適用される。


 それはつまりロッカールームでなら誰にみられることなくアルバートの圧倒的なステータスを利用しながらレポート作成もできるということではないか。


 それならこの絶望的な量のレポートでも間に合うかもしれない。


「こら! ダンジョン配信以外の目的でモノリス内の施設を利用するのは禁止だよ」


 妙案を思いついたと思ったのにいつから聞いていたのか、突然モーフィアスから警告が入る。


 だが結構本気で追い詰められている俺は往生際が悪く粘ってみた。


「それは分かってるけど、そこをなんとか。少しだけでもいいし、このお礼に運営のやってほしいことがあるなら協力するからさ」

「ふむ……それなら一考の余地がないこともないか」


 どうせこれからもアルバートとしてダンジョン配信をやっていくと決めた以上、運営と持ちつ持たれつの関係が続くのは確定的なのだ。


 アルバートなら実行可能な頼みを聞くのはこれまでだってやってきたことだし、それが多少増えたところで特に問題はない。


「と言っても俺にできる範囲の内容で頼むぞ」

「それは分かっているよ。だけど現状ではアルバートでしか出来ないことが多いし、運営的にも君の更なる協力が得られることは悪い話ではない。なによりここで単位を落とされて、後々の君が自由に活動できる時間が減ったら、それは私にとっても面白くないか」


 そうしてモーフィアスが運営と交渉した結果、今回はダンジョン配信の休憩時間という体で、ロッカールームで多少のダンジョン配信と関係のない作業をしていても見逃してもらえることとなった。


「ありがとう、マジで助かった」


 そうして爆速で情報処理とタイピングをすることが可能になったこともあり、俺は無事に全てのレポートを間に合わせることに成功する。


 更にその後の期末試験も悪くない手応えだったので、これで単位を落とす心配はほとんどないと言っても良いだろう。


「よし! これで学生の本分は終わらせたわけだし、ここからはダンジョン配信により一層の力を入れられるな」


 大学も春休みに入って授業もない。


 となれば自由に配信できる時間も当然増える訳だ。


 だがそんな俺の考えに反して、またしてもそうはいかない事情が発生する。


 しかもその問題は単位や試験よりも俺にとっては厄介で困ったものであった。


 何故ならそれは無事に退院をして家にいる母からの帰省要請だったのだから。

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