第91話 特別なカード
黒いスライムとリーパースライムからモンスターカードがドロップした。
ただしそのカードはどちらも通常のモンスターカードとは違うようだ。
何故ならドロップしたカードの名称はどちらもランダムカードという名称だったからである。
(そもそもモンスターの名前が付いてないカードか)
雷光のサイクロプスという魔物から得られるのは雷光のサイクロプスというモンスターカードだった通り、これまで手に入れたカードの名称は倒した魔物の名前が付いていた。
これはボスも例外ではなく、他のどの魔物でも一緒だった。
だが今回の死神タイプの魔物である黒いスライムとリーパースライムのカードはその法則から外れている。
「それでこのランダムカードはどういう効果があって、どう使えばいいんだ?」
本来ならそれを調べるまで時間が掛かるかもしれないが、俺にはモーフィアスという運営側の存在が付いているのだ。
だから分からないことがあるならこいつに聞けば良いのである。
どうせ尋ねられても答えられないことならはぐらかして答えないだろうし、駄目で元々という気持ちで。
「ランダムカードは込められている効果が様々ある、その名の通り使用するまで効果が分からないカードだね。その内容については話せないけど基本的に使用者にメリットがある効果になっているから、失敗は恐れずにどんどん使って構わないよ」
使い方は簡単であり、モノリスの操作でランダムカードを使用すると選択するだけらしい。
という事なので俺はまず自分の部屋のモノリスで普通の死神タイプである黒いスライムから手に入れたランダムカードを使用してみる。
【このカードの効果はステータス強化でした。一定期間、全てのステータスが強化されます】
頭に響いたその言葉でステータスを確認してみると、なんと全てのステータスが5も上昇しているではないか。
効果期間は30日であり、こちらは死亡しても解除されることはない上に効果は重複するらしい。
だとすると仮にこのステータス強化のランダムカードを20枚同時に使用することが出来れば、それだけで全ステータスが100も増加する訳だ。
(要はこれを上手く利用すれば、俺がアルバートとなった時の再現も不可能ではないってことだな)
幾つかの特級スキルの効果でステータスを100ほど強化した俺がどれほどの活躍を残してきたのか。
それを考えれば、約一ヶ月という期間限定ではあるものの、その効果は大きいと言わざるを得ない。
もっとも死神タイプの魔物は下級ダンジョンに出現する個体でも強い。
それこそダンジョンインフルエンサーのクリスでも苦戦するくらいには。
(黒スライムから一枚のランダムカードがドロップするまで俺が四体、クリスが十二体掛かったところからして、ランダムカードを大量に集めるのはかなりの労力が必要になりそうだな)
なお、俺の方が少ない数ですんだのはLUCの数値に依るものと思われる。
ちなみに今回の検証で他人がドロップしたカードはどうやってもその本人しか入手できないことは判明しており、クリスからその他のモンスターカードの譲渡も基本的にはできない事も確かめている。
どうもクリスを始めとしたレベル30に到達したダンジョンインフルエンサー達もモンスターカードの仕様については色々と秘密裏に調べたそうで、今回の貴重な経験のお礼とのことでその辺りの情報を貰えたのだった。
クリスからすれば他にない死神タイプの魔物と戦うという目新しいだけでなく、他のダンジョン配信者では真似できないような配信ができたのだ。
それに加えてこれまでに見たことも無いカードも手に入ったとなれば、むしろ得た物が大き過ぎるというのが本人の談である。
勿論、そこにはアルバートと良好な関係を継続させたいというような下心もあるのだろう。
だけどそれを言うならこちらも同じようなものだし、互いにメリットがある関係ならそれで何も問題はないというもの。
「さてと、それでもう一枚のランダムカードの効果は何かね?」
強い魔物からドロップするモンスターカードの効果が高いのだ。
だとしたら真なる死神と言われるダンジョンの裏ボスからドロップするランダムカードは、同じような法則なら、それこそより強力な効果が秘められていそうではないか。
そんな期待をしながら残った最後のランダムカードを使用する。
【このカードの効果は属性獲得でした。選択肢の中から好きな属性を一つ獲得できます】
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