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第90話 アルバートVSリーパースライム

 俺の保持する攻撃手段の中で最強の攻撃力を誇るものは、上級ダンジョンの七色の騎士に止めを刺したことから分かる通り、特級スキルの『鬼哭啾々』だ。


 だがこのスキルはダメージを受けないと発動できないという条件があるので、現状では使用できない。


 だからここでは次点で最強と思われる攻撃を叩き込むことにする。


『呪詛の腕』

『属性強化・呪』

『幽玄の剣』


 黒いスライムとの戦いで闇系統の上位属性である呪属性の攻撃が通ることは分かっている。


 だから溜めて耐性無効などの効果を発揮する必要はないはずだ。


(敵が上級ダンジョンの中ボスくらいまで強化されていなければ、これでも十分なはずだからな)


 幾ら裏ボスとは言え、下級ダンジョンに出現する魔物ならそこまで強化されてはいないのではないか。


 その推測を元に放たれたこちらの攻撃に対してリーパースライムも素早く反応する。


『硬化』

弾き(パリィ)

『流体防御』


 複数の守りのスキルを発動しながら、伸ばした触手を盾の様に変形させて俺の剣による一撃を受け止めてきたのだ。


 互いに複数のスキルを使用した攻防。


 これがどうなるかで互いの力量差もある程度は分かるはず。


「よし!」


 その結果は俺の勝ちだった。

 それも思っていた以上に圧勝の形で。


 なにせ防御のために展開された触手どころか、その先の敵本体へと斬撃は到達したのだから。


 しかもそれで敵の肉体をかなり深く斬り裂いているし、手応えからしても相当なダメージが入ったのは間違いない。


 それに攻撃を受けた瞬間から敵の身体から発せられていた黒いオーラの放出も止まっているではないか。


 これは一定以上のダメージを与えることでタイムリミットを延長できるということかもしれない。


(スキルで強化してもそこまで硬くはないし、これは余裕だな)


 クリスがこの言葉を聞いたら呆れるかもしれないが、俺からしたら正直、黒いスライムと呼んでいた時と誤差の範囲内でしかない感じなのは変えようのない事実だった。



『部分再生』

『死の鎌』

『乱舞』


 ただ流石にこの一撃でやられることはないようで、すぐさま斬られた触手を修復すると同時に攻撃に転じてくる。


 恐らく俺の攻撃を受けて防御に回っていては危険だと感じたのだろう。


 その判断そのものは間違ってはいない。


 実際あのまま俺が攻め倒していたらそのまま押し切れたと思うし。


 だがどれだけその判断が正しかったとしても、それでどうにかできるとは限らない。


(攻撃速度は上級ダンジョンの魔物に及ばないか)


 それこそブラッディウルフなどの方が圧倒的に攻撃の速度は上だった。


 だとするとリーパースライムの力量は中級ダンジョンのボスクラスと言ったところだろう。


 即ち未だに中級ダンジョンを攻略できていないクリスならともかく、上級ダンジョンを攻略している俺の敵ではない。


 最初は二本だった触手の数がどんどん増えていき、それらがスキルの名前の通り敵の命を刈り取る鎌のように振るわれる。


 その一つ一つに『死の世界(デス・ワールド)』で発生したのと同じ黒い不気味なオーラが纏っているところからして、この攻撃を受ければそれに関連する何らかの状態異常を受けることになるに違いない。


 あるいは一定の攻撃を受けたら即死とかもあり得るか。


 だが当たらない。


 スキルを使う必要もなく、俺は200近いステータスを駆使して、無数の触手の乱舞を全て回避してみせた。


 しかもそれだけではない。


『発火の魔眼』

『土塊の魔眼』


 攻撃を回避しながら発動していた魔眼による攻撃が敵の身体を容赦なく攻撃する。


(魔眼の良いところは、視線さえ通れば攻撃が発動できるところだからな)


 そのおかげで回避しながらでも攻撃し易いというもの。


 無数の触手は『発火の魔眼』の炎で焼き払われ、その大本である本体は地面から伸びた複数の土の杭によって貫かれる。


 そして磔にされて身動きできない敵へと追撃を放たない選択肢などあり得ない訳で。


『属性強化・呪』

『呪いの魔眼』


 これまで最も使用してきたと言っても過言ではない魔眼スキルによってリーパースライムは呪われ、最後の抵抗すら許されず消滅するのだった。


 裏ボスとは言え、下級ダンジョンに出現する魔物が中級ダンジョンのボス並みに強いのは普通に考えれば相当な脅威なのだろう。


 だが生憎と今回は相手が悪かったとしか言いようがない。


(だけどこの分だと、中級ダンジョンの裏ボスは上級ダンジョンのボスくらいの強さはありそうだよな)


 それこそ七色の騎士と同等か、それ以上の強さがあるのだろう。


 なにせ裏ボスである真なる死神タイプの魔物には『死の世界(デス・ワールド)』という制限時間を強制的に設けるスキルが標準装備されているようなので。


 それを考えれば(アルバート)でも中級の裏ボスに挑むのは慎重になった方が賢明か。


「ま、何はともあれ勝ちは勝ちだな」


 裏ボスの初回討伐による特典などで大量のDPが手に入るのを視界の端に捉えながら俺は満足げに呟く。


 しかも運が良かったのかどうやら今回の報酬はそれだけではないようだ。


 何故なら裏ボスが消えた場所にカードらしきものが残されているので。


(よっしゃ! 裏ボスのモンスターカードなんて絶対に何らかの強い効果があるだろ)


 クリスもいるので効果の確認は後にして俺は落ちているカードを手に取ろうとする。


 すると触れた途端にカードは俺の肉体に吸い込まれるようにして消えてしまった。


 そしてそれを待っていたかのように、戦闘開始と同時にシャボン玉のような浮かぶ透明な球体に包まれて安全な場所で観戦していたクリスが解放される。


「お疲れ様……って言っても全然疲れてなさそうね」

「中級ダンジョンのボス程度の強さだったからな。正直、上級ダンジョンの雑魚の方が強かったくらいだし」


 それこそ初めて手傷を負わされたブラッディウルフの方が断然手強かったくらいだ。


 と言っても俺も試練の塔で色々と成長したので、一概に比較できるものではないかもしれないが。


「まったく、中級ダンジョンのボス程度なんて言葉を発しても妄言扱いされないのは、世界であなた一人だけよ。それよりこの後はどうする?」


 俺もクリスも今回の配信の目的である死神タイプの魔物の討伐には成功しているので、一先ずここで終わっても構わない。


 これだけでも多くの反響を呼ぶのは間違いないだろうし。


「それなら私に付き合ってくれない? 折角だから黒いスライムともう何度か戦ってみたいの。……私もあなたみたいにカードを入手できないか試したいし」


 それを正直に伝えるとクリスがそう言ってくる。


 勿論、後半の方の発言は配信に乗らないように小声で。


「……分かった、付き合うよ」


 モンスターカードについて知っているということはクリスのレベルが30を超えているのは間違いない。


 俺のような裏技を使わずにそこまで来ているのだから、ここは素直に流石ダンジョンインフルエンサーと言うべきだろう。


(普通の死神タイプの魔物からもカードがドロップするのかは気になるしな)


 それ以外でも他の誰かがドロップしたカードを他人が得ようとしたらどうなるのか、など確かめてみたいことは多々ある。


 レベル30を超えているダンジョン配信者の知り合いは今のところクリスくらいしかいないので、この機会に色々と調べてみるとしよう。


 それもあって俺はクリスの限界が来るまで付き合い、その過程で普通の死神タイプの魔物もカードをドロップすることを確認するのだった。

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