第89話 圧倒的な実力差
すみません、コロナでダウンしてました(-_-;)
黒いスライムとの戦いを終えたクリスは息が整ってから今の戦いを総括していた。
「やっぱりどう考えても中級ダンジョンの中ボス並みの強さはあったわね。流石は裏ボスってところかしら」
「その様子だとかなりの強敵だったみたいだな」
「まだ使える切り札は幾つか残っていたけど、それでもかなりキツイ戦いだったのは否定できないわね。この感じだと私は強化された黒いスライム相手は無理かな」
今の状態ですらギリギリなのだ。
それなのに三回討伐することで更なる強化が施された相手となればどうなるかなど考えるまでもないということだろう。
勿論、初見で色々と分からないことも多かったからこそ手こずった感はある。
だから何度も戦って慣れてくれば、もう少し上手くやれるとは思う。
そう述べるクリスはこれまでに中級ダンジョンの中ボスなら何体も討伐に成功しているのだ。
それを考えれば中級ダンジョンの中ボス程度の強さという黒いスライムにクリスが勝てたのも、それが強化されたことでその上のボス並みに強くなると思われる黒いスライム相手ではきつそうなのも頷けるというもの。
なにせダンジョンインフルエンサーの活動しているダンジョンはどれも中級であり、中級ダンジョンのボスの討伐には誰一人として成功していないのだから。
俺というただ一人の例外を除けば。
「それで世界最強と名高いアルバート様ならどうなのかしら?」
「正直に言うと、通常の奴は余裕だよ。強化された奴は俺も見たことがないから何とも言えないし、実際に戦ってみるしかないだろうな」
そう言いながら俺はクリスと交代して条件を満たすと、またしても現れた黒いスライムと対峙する。
『斬撃』
だがその対峙は一瞬で終了した。
何故なら出てきた瞬間に俺が接近して、ただの一撃で敵を斬り捨てたからだ。その間、敵には動くことも許さなかった。
「……」
自分が死闘を演じた相手が何もできずに一撃で仕留められる。
それを見たクリスは大きく口を開けて驚きを現しているようだ。
俺やクリスの配信のコメントも同じように驚いている。
だがよくよく考えてみれば、これは当たり前の結果だった。
黒いスライムはアルバートとして活動を開始した時ですら楽勝だった相手であり、今の俺は上級ダンジョンを攻略するためにその時よりも更なる飛躍を遂げているから。
装備だって幽玄の剣という上級ダンジョンの魔物から得た代物だし。
(いや、むしろこの分だと『斬撃』も要らないか……?)
そう思って更に累計で三体目の黒いスライムにスキルを使わずに攻撃してみたところ、なんとそれでも一刀両断で終了してしまった。
どうやら上級ダンジョンのボスを討伐した俺の前では中級ダンジョンの中ボス程度の相手は雑魚同然の相手でしかないらしい。
「……ふふ、あはは! 何よ、それ。こんなのもう笑うしかないじゃない」
あまりに非常識な光景にクリスは吹きだすようにして笑っている。
「ねえ、この分だとあなたなら強化された死神タイプとやらも楽勝なんじゃないの?」
「見たことないから楽観はできないけど、流石にここから上級ダンジョンのボス並みに強化されるとは思えないわな」
この黒いスライムはあくまで下級ダンジョンの裏ボスなのだし、あっても中級ダンンジョンの中ボス、あるいはその上のボス並くらいではないだろうかというのが俺の予想だった。
「ま、これで条件は整った訳だし、あとは実際に見てみれば分かるだろ」
「それもそうね」
そうしてここからはボス部屋まで直行する。
ちなみにクリスは自分ではまだ強化された死神タイプの相手は無理と判断したこともあり、今回はこれ以上の討伐はしないで観戦に徹するとのこと。
「さて、これで良いはずなんだが……」
クリスが後ろの方で見守る中、下級のスライムダンジョンのボスであるキングスライムも一撃で葬ったところで脳内に運営からのアナウンスが入る。
【対象者は真なる死神と戦う資格を得ています。このまま真なる死神に挑戦しますか?】
事前に得ていた情報通りこのダンジョンの死神タイプの魔物を三回討伐している俺にはここで強化された死神タイプと戦うことが出来るらしい。
「私の方は気にしないで良いわよ。どうやら資格がない同行者は安全な場所に隔離されて観戦できるみたいだから」
なお、その資格を得ていないクリスの方にも運営から何らかのアナウンスが来ていたようでそう言葉を投げかけてくる。
だとしたら巻き込まれる心配はないということか。
ならば心置きなく挑戦できるというもの。
全ての準備を整えた俺は運営からの問いかけに挑戦する意思を示す。
するとその途端にボス部屋の中心に黒い光が満ちていき、そこに敵が現れた。
【挑戦の意思を確認。これより下級スライムダンジョンの裏ボスであるリーパースライムとの戦闘が開始されます】
見た目はこれまでに見てきた黒いスライムとほぼ同じだが、そこから放たれる圧力は今までの個体の比ではない。
『死の世界』
更に登場と同時にその身体から黒く禍々しいオーラが解き放たれた。
そしてそのオーラはボス部屋の中に充満していく。
【警告。『死の世界』は全ての真なる死神が保有する固有スキルです。このオーラが部屋を完全に満たした瞬間、挑戦者の敗北が決定します】
「つまりこのオーラが満ちる前に敵を倒せってことか」
明確な制限時間が存在する。
それはつまり七色の騎士の時の様に持久戦での勝利は難しいということだろう。
敵がどれだけの強さを持っているかは分からないが、HPが膨大だった場合は俺でも倒すまでに時間が掛かるだろうし、のんびりしている暇はなさそうだ。
だから俺は幽玄の剣を構えると、早速この状況で放てる最強の攻撃で仕掛けていくことにした。
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