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第87話 ダンジョンインフルエンサーの実力

 世界中から注目を集めることになるダンジョンインフルエンサーとなるため絶対に必要なものが存在する。


 それはダンジョンで魔物を圧倒できるだけの強さだ。


 何故なら魔物が蔓延るダンジョンでは力無き者は容赦なく魔物の餌食となるだけであり、そんな強い魔物に蹂躙されるだけの映像などは、それこそ普通のダンジョン配信者の数だけ存在していると言っても過言ではないのだから。


 そしてそんな他と同じような配信では、余程の美人とか、別の界隈で有名人だったとか、そのような特別な何かでもない限りはその他大勢の中に埋没してしまうのである。


 これはダンジョン配信に限らず、普通に配信とかでも同じことが言えるだろう。


 更に言うと、魔物にやられてもロビーに戻される度に一定の割合でDPを没収されるのだ。


 だから何度も無駄死にするような未熟者ではペナルティで失うDPも相当なものになってしまう。


(俺みたいに運営協力を受けながら反則的に荒稼ぎするのでもない限り、DPを稼ぐこと、そしてそれを保持するのは簡単なことじゃないからな)


 死んでも問題ないからこそ、ダンジョンの難易度は死んで覚えるのを前提にしているところが多い。


 そんな中でもなるべく多くのダンジョン配信をして、どうにか視聴者を獲得する。あるいは他にはないアイデアを考えて、それを実行することで注目を集める。


 そうやって時に失敗しながらも様々な創意工夫をしていく必要が普通はあるのだ。


 そしてそこで大きな成功を収めることで多くの視聴者を確保する。


 それによって大量のDPを獲得することが初めて可能になるのだから。


(と言っても先行者は初の魔物討伐とか特典である程度のDPを稼いだんだろうけど。それを考えると、今のダンジョンインフルエンサーと称される人物が他よりも先にダンジョン配信に挑戦した人が多いのも頷ける)


 魔物との戦闘や討伐。


 ボスへの挑戦。


 自分のチャンネルを作った上でダンジョン配信を開始する。


 そんな風に無数に存在する特典だが、それらの初回特典が他よりも豪華なのは既に公開されていることだ。


 実際に俺も上級ダンジョンの攻略の際にはそれで億を超えるDPを一気に手に入れることになったものだし。


「おっと」


 そんなことを呑気に考えていたら待ちくたびれたのか死神タイプの魔物である黒いスライムも動き出す気のようだ。


 徐に自身の丸身を帯びた肉体から二本の触手を伸ばしたと思ったら、それを鞭のようにしならせながらそれぞれを高速で獲物である俺達に振るってくる。


「っつ!?」


『AGI強化・微』

『見切り』


 それが想像よりも遥かに速かったのだろう。


 クリスは一瞬、驚いたような声を漏らすと同時にスキルを発動して回避した。


 流石に場慣れしているだけあってか、予想外な出来事があってもこの程度の攻撃を受けることはないらしい。


「やっぱり配信の映像で見るのと実際に経験するのとでは全然違うわね。それに死神タイプという特殊な魔物とは言え、下級ダンジョンの魔物のスキルを使っていない攻撃がこんなに速いなんて驚きだわ。……って、そんな攻撃でもあなたはスキルも使うどころか、その場から動く必要すらないのね」


 それはそうだろう。

 なにせ上級ダンジョンを攻略する前の時点でも俺はこの攻撃を捌けたのだから。


 あの頃よりもレベルもずっと高くなっている今の俺がこの程度の攻撃を見切れない訳がないではないか。


 ただどんな形にしても黒いスライムからしたら二人ともに攻撃を躱されたことに変わりはない。


 それにより警戒心を上げたのか、今度は二本だけではなく無数の触手を生やして攻撃してくるつもりのようだ。


「どうやら近くにいるとこっちにまでターゲットが来そうだし、予定通り俺は下がって見守ることにするよ」

「ええ、悪いけどそうしてくれる? どうやら油断していい相手ではなさそうだし、この分だと私も周りにまで気を配る余裕はなさそうだもの」


 最初期から活動しているダンジョン配信者にして、ダンジョンインフルエンサーの一人としての確固たる地位を確立しているクリス。


 俺を除けばダンジョン配信者の中でもトップに限りなく近い彼女をして、黒いスライムは楽勝な相手とは言えないようだ。


『AGI強化・小』

『見切り』


 黒いスライムが無数の触手でクリスを狙うと同時に、クリスの方も先程と似たような複数のスキルを発動する。


 ただし先程よりも強化幅は大きいようで、素早い動きで迫りくる無数の触手を掠らせもしない。


斬撃(スラッシュ)


 そしてそのまま敵の攻撃を掻い潜って接近を果たすと、己の愛用の武器であるレイピアを抜いて、敵のプルプルした肉体目掛けて鋭い突きを放つ。


 奇しくもそれは以前の俺が黒いスライムを倒したのと同じスキルだった。


 だが同じスキルによる攻撃であっても結果まで同じとは限らない。


「硬ったいわね、見た目はプルプルして柔らかそうなくせに!」


 クリスの攻撃は柔らかそうな敵の肉体の表面に僅かな傷を作るだけで弾かれてしまっていた。


 勿論『斬撃(スラッシュ)』はレイピアが得意とする突きの攻撃にも効果を及ぼすので、決して今のスキルが不発だった訳ではない。


(同じスキルでも使用者によって威力が異なるのは知っていた。知ってはいたけど、まさかここまで大きな違いが出るとはな)


 どうやら黒いスライムの肉体は見た目に反して、生半可な攻撃は通用しないくらいの防御力を備えていたようだ。


 俺の時は通常攻撃でも弾かれることがなかったので、そんな印象はまるでなかったのだが。


 とは言えクリスの方もこれで終わりではない。


 なにせ今の攻撃に使われた『斬撃(スラッシュ)』は下級スキルの中でも基本中の基本のもの。


 だとしたら今の攻撃はクリスにとっても様子見でしかないに違いなかった。


(さて、どっちが勝つかな?)

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