第84話 ダンジョンインフルエンサー
突如現れたモノリスとダンジョン。
そしてそこで行われる不可思議なダンジョン配信という分野において人気を博し、世界的な有名人となった存在のことを世界ではダンジョンインフルエンサーと呼んでいる。
そしてダンジョンインフルエンサーとなった存在はその一挙手一投足が世界中から注目されていると言っても過言ではないし、その影響力は決してバカにしていいものではない。
なにせ一人の女性ダンジョンインフルエンサーが軽い気持ちでダンジョン配信中の雑談で自身が使っている化粧品や入浴剤などの話をしたら、次の日にはその商品が世界中で注文されて品薄になったなんてこともあったくらいなのだから。
神サイトの運営はダンジョン配信の邪魔にならない行為なら比較的大らかな対応をすることが多い。
そしてその運営にスポンサーなんてものが存在しないこともあって、どこの会社の商品をダンジョン配信の合間とかで宣伝したとしても問題にしたりはしないのだ。
それもあって世界中の会社ではダンジョンインフルエンサーのスポンサーとなって、自社の商品を宣伝してもらおうとするところも増えてきているのだとか。
それが度を過ぎてダンジョン配信を全くしないとかだと運営から注意が入るそうだが、商品のロゴを付けて配信をする程度なら怒られることは皆無。
それもあってダンジョンインフルエンサーとなった人は、そういったスポンサー契約だけで大金を稼いでいることもあるらしい。
それもあってアルバートの月収が一億を超えるとか与太話も生まれたのだろう。
勿論当然のことながらこれまで散々規格外の活躍しまくっているアルバートも今やそのダンジョンインフルエンサーの一人として見られている。
それは世界中の誰もが認める事実であり決して間違いではない。
ただアルバートは正体を徹底的に隠していることもあって、スポンサー契約なども皆無というあまり特殊過ぎる立ち位置なので例外と見た方が賢明だろうが。
要するにダンジョンインフルエンサーもその他のインフルエンサーと同じようにその発言や行動だけで世の中に大きな影響を及ぼしかねないし、それによって大金を稼ぐことも難しくない訳だ。
「そのダンジョンインフルエンサー様も殺到してるのな」
アルバートが闘技場で模擬戦など行ない、他のダンジョン配信者と交流を行なう。また希望するならアルバートから直接強くなるための指導をしてもいい。
そんな感じで希望者を配信上で募集したらどうなるかは端から分かっていたことだ。
ただまさか日本以外のダンジョンインフルエンサー以外からも、これだけの希望が入るのは流石に驚かされたが。
なにせその中にはこの募集を開始する前から既に日本に来ている人物までいるというのだから。
そのクリスティーヌという女性はアポイントメントもなしにアルバートに会いに来たというのだから、その熱意には圧倒されるしかない。
(この人もダンジョンインフルエンサーなのに自分の配信を休んでまで日本にきてるんだもんな)
それでいてこの募集の前から熱烈なアピールをしてきているのである。
ほら、前に俺が読めなかった英文のあれである。
あの時は読めなかったこともあって返答していなかったが、モーフィアスから推薦もあるのだしこの人は当確でいいだろう。
他のダンジョンインフルエンサーというだけで話題性という意味でも十分過ぎるし。
それにしてもどういう訳かダンジョン配信者以外の配信者からもコラボ依頼が殺到しているのだった。
それもダンジョン以外の場所でコラボしたいとかで。
まあダンジョン配信者がダンジョンだけで活動しなきゃいけないって決まりはないし、神サイト以外ではダンジョンのこと以外の配信をしているダンジョン配信者も結構な数に上る。
神サイトでどれだけ人気になったとしても支払われるのは全てDPなこともあって、直接的な金銭は得られないからだ。
だからYOURTUBEとか他の動画サイトでも活動して、そちらでは広告料などを貰っている人も多いらしい。
神サイトで人気ならそっちにファンを誘導すれば、結構な稼ぎになるそうだ。
まあDPは強くなるために重要だし、稼いだそれらは出来る限りダンジョン配信のために使いたい気持ちは分かる。
誰もが強くなろうとしている中でそこから生活費などを得るために消費していては他の奴に後れを取るだろうし。
だからこそそんな中でぶっち切りで駆け抜けていったアルバートは話題になっているのだ。
意味不明な規格外として。
「今や世界中の注目を集めて世間をこれだけ騒がせているアルバートの人気にあやかりたいのだろうね」
「どうにも良いように利用したいっていう風に聞こえなくもないが、有名になったこと自体は素直に喜んでおこうかね。それで出来ることも増える訳だし。まあでもダンジョン外では今のところはコラボできないからスルーするしかないないんだけどな」
やるとしたら『千変万化』の制限を解除して、現実世界でもアルバートに化けられるようになった後になるだろう。
次の給料日で運営から支払われるDP次第では、そう遠くない内に現実世界でもアルバートが活動する日が到来することもあり得るのだが、果たしてどうなるだろうか。
なにせ他にも制限を解除したいスキルやアイテムは山ほどあるので。
「なんにしてもこのクリスティーヌとサクラは決定で。あとは女性ばっかりだとそういう目で見られるかもしれないから、男からも何人か見繕った方が良いか?」
「それならこっちの人達はどうだい? 運営からの評価も高いし、今後も真剣にダンジョン配信を行なってくれる人材だと思うからね」
その方が運営的に好都合なのは察しがついたが、ここで協力しておけばまた何かあった時に色々と便宜と図ってもらえるだろう。
そういう意図もあって俺は素直にモーフィアスの提示した中から対象を選出していくのだった。
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