第81話 闘技場、開幕
闘技場は特定のダンジョンの入口にあるモノリスに触れることで挑戦することが可能となっている。
それはタイムアタックと同じだった。
ただし試練の塔の闘技場を解放するためには門番を倒さなければならないとい条件が存在していたのだ。
どうやらこの門番を倒せない程度の奴にはここの闘技場を使うにはまだ早いということらしい。
『呪詛の腕』
『呪いの魔眼』
と言ってもその門番の強さは七色の騎士どころか幽玄のデュラハンにも遠く及ばないものでしかない。
それもあってボス戦を経て更なる力を得たアルバートの前では無力でしかなかった。
得意の呪属性を駆使してあっさりと門番を倒したことにより闘技場は解放された。
そう、つまりはここからが本番である。
(俺以外の奴でも門番を倒せば闘技場は利用できるみたいだけど、試練の塔があるモノリスが見つかるのはまだまだ先だろうからなあ)
どうやらタイムアタックなどと同じで闘技場が実装されているダンジョンを誰か一人でも攻略すると、入口のモノリスから誰でも闘技場へ行けるようにはなるらしい。
だからこの試練の塔においては最上階の七色の騎士を倒さずとも闘技場は利用できるようになっている形だった。
ただ闘技場は下級ダンジョンでは存在せず、中級ダンジョンから上でしか実装されていないとか。
そのせいもあってこれまで闘技場は誰も利用できなかった。
だって中級ダンジョンですら未だにアルバート以外が攻略できていないのだから、そもそもその機能が解放されないのである。
それもあってモーフィアスからは後々で良いから適当な闘技場が実装されている中級ダンジョンを攻略してくれないかと頼まれている。
そうすれば俺以外の奴が闘技場を利用できるようになるし、折角の機能がずっと活かされないのは運営的にも困るとのことなので。
そしてその要望を俺は了承している。
モーフィアスが運営と交渉して、こういう依頼をこなせば十分な対価も貰えるようにしてくれているので、そうすることで俺としても十分なメリットがあるからだ。
と言ってもすぐにはやらない。
だってしばらくは俺だけが独占した方が配信のネタとして美味しいではないか。
「さて、これで闘技場が利用できるようになったはずです。なので早速やっていきましょう!」
なんか今日のアルバート、妙にイキイキしてるよな?
確かにいつもよりテンション高めかも
たぶんアンチに復讐できるからじゃね?
あーなるほど
おいおい、まさかそんなことで喜んでんのかよ
これだけ圧倒的な実力があって評価されててもアンチはウザいのな
でも気持ちは分かる
なんかちょっと幻滅したかも
思ってたより器が小さいってか(笑)
そうか? むしろちょっと親近感湧いたんだが
どうやら俺がウキウキしているのが視聴者にも伝わっているらしい。
そのせいで肯定と否定の両方のコメントが流れているようだが、気にしても仕方がないので無視する。
だってどうせこの後の事でも賛否両論になるのは目に見えているので。
「闘技場には幾つかの機能があり、また特定のダンジョンの闘技場にはそこだけで実行可能な機能などが組み込まれている場合があるようですね。ですが今回は通常の機能である、他のダンジョン配信者と普通の対戦できるものを利用しようと思います」
その対戦相手の選出に関しても色々なものがある。
完全ランダムもあれば、同じぐらいの実力者の中から選ばれるもの、そして特定の相手に挑戦状を叩きつけるものなどが。
そして当然のことながら今回の配信では挑戦状を叩きつけさせてもらう。
「えーと、ではまず「本当の最強のダンジョン配信者! ヒロヒコチャンネル!」に挑戦状を送りましょうか。この人も丁度ダンジョン配信をしているようなのでね」
対戦が可能な相手は分かる上にチャンネル名で対戦相手の検索が可能となっていることもあって、割とあっさりと対戦相手は見つかった。
そうして挑戦状を送られた相手だが、今回は運営の協力のおかげで相手に拒否権がないこともあり強制的に闘技場に召喚されることとなる。
「うわ、何だ!?」
「初めまして「本当の最強のダンジョン配信者! ヒロヒコチャンネル!」さん」
「あ、アルバート!? 嘘だろ、ってことはあの話はマジだったのかよ……」
掛ってこいというお望み通り、こうして戦いの場を整えてやったのだ。
さぞ喜んでいることだろう。顔を真っ青にして震えているように見えるが、そんなのは俺の見間違いに決まっている。
だってこいつは俺が闘技場の情報を出した後もこちらを挑発するのを止めなかったのだから。
それはこうなることを覚悟の上でなければできない行為だろう。
まあ実際のところは本当にこうなるとは思ってなかったとか、自分だけは大丈夫だろうという甘い見通しが原因だろうが、そんなことこっちの知ったことではないのである。
だってこれは見せしめだから。
それも運営公認の。
「ああ、安心してください。闘技場での戦いは死んでもぺナルディはないですし、終わればすぐに元の場所に戻されるそうですから」
そういう問題ではないと言いたげな相手だったがそれを考慮してやる義理はない。
「それでは対戦よろしくお願いします」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 謝る、謝るから!?」
土下座して謝罪してくるそいつを見て、俺の思うことはこれだ。
(待つ訳ねえだろ、カスが)
その対戦の勝敗など語るまでもないだろう。
最終的には呪属性の攻撃で呪い殺されて苦痛を味わうアンチの姿を見て、俺は溜飲を下げるのだった。
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