第79話 ダイレクトメッセージ開設と金稼ぎ開始
日間ランキング20位にランクインしました!
ありがとうございます!
俺が演じるアルバートというダンジョン配信者はあくまで架空の人間だ。
だから戸籍なども存在しなければ、当然な事に連絡先なども用意していない。
仮に俺の携帯番号を連絡先としたら一瞬で身バレするに決まっている。
それもあってアルバート宛てに連絡を入れるのは意外と難しいこととなっていた。
もっともこれまではそれで困ることはなかった。
むしろ連絡を取る方法がないから下手な干渉を受けないで済んだ面も多いだろう。
配信動画のコメントに散々アンチが悪口を書いている現状を見れば、メールなどもその被害に遭うのは目に見えているし。
でも今の俺は上級ダンジョンを攻略したことでアイテムを持ち帰れるようになった。
そうなると約束していたアメリカとコンタクトを取らないといけない訳だ。
(なにせガチで金欠だからな)
ここ数ヶ月、ダンジョン配信ばかりに精を出したせいもあって収入は零を維持しているのである。
これまではなけなしの貯金と仕送りで何とか食い繋いでいたが流石に限界だった。
それこそこのままでは明日の食事も厳しいレベルまできているのである。
「という訳でどうにかして身バレをせずにアルバートとして連絡を取る方法が欲しいんだが何かないか?」
「そうだね……それならダイレクトメッセージを使えるようにしようか。前々からそういう要望は他の配信者からも出ていたし、それもあって近々そういう機能を神サイトに実装する予定だったからね」
そういう訳で早速、その機能を解放しました。
勿論これにもDPが必要だったが、まだエリクサーを買った時の余りがあるので問題はない。
そして配信でそのことを宣伝したら、予想通り大量のメッセージがアルバートのチャンネル宛てに殺到していた。
それこそこれら全てを見るだけでも、どれだけの時間が必要になるか分からないくらいの量である。
「って、おい。アメリカのエージェントって奴からのメッセージも複数あるんだが」
「本物は一つだけで他は偽物だね」
「だろうな。どれが本物か分かるか?」
「勿論だよ。とりあえずスパムや悪意のあるメッセージは排除するように設定しておこうか。度が過ぎているものは運営で対処するようにしておけばいいだろう」
全てお見通しの運営のおかげでスムーズにアメリカのエージェントと連絡が取れた上、何故か数日後に世界中で特定の人物の個人情報が流出する事件が起きたようだが、まあ悪いことを企んだ罰が当たったということだろう。
「ところで今回は何を売るつもりなんだい?」
「とりあえずは最低ランクの回復薬で様子を見るつもりだよ。それがどれくらいで売れるかで今後のアイテムの値段も決めていく感じだな」
当然の事だがアイテムの金額などまるで決まっていないのだ。
だから今回の取引はその大まかな基準を測るのに利用するつもりである。
(最低ランクの回復薬だからそんなに値は付かないか。それとも今のところは他にない貴重な品物だから高値が付くか、どっちだろうな)
個人的には高く売れてほしいが、それは相手次第なところがあるのでこちらが幾ら悩んでも仕方ないだろう。
HPが5だけしか回復しない最低ランクの回復薬は通常で5000DPであり、制限解除に45000DPなので合計で50000DPが必要になる感じだ。
それを今回は十本ほど用意したんので最終的には50万DPを消費した形である。
「1DPが1円として、50万円くらいになればいいなー」
そんな願望を持ちながらアメリカのエージェントと連絡を取り合った結果、なんと嬉しいことに100万円で取引することとなった。
(マジか。これならかなり良い物が食えるじゃんか)
そうして思った以上の高額が付いたことにウキウキになりながら、前に接触したスライムダンジョンのロビーで取引相手と落ち合うこととなる。
「お久しぶりです、アルバートさん。お元気そうでなによりです」
「はは、どうも」
そこにやってきたアタッシュケースを持った人物は前の時と同じ人だった。
どうやらアメリカはこの人を俺の窓口とすることにしたらしい。
とりあえず名前を尋ねるとブライアンというそうだ。
そのブライアンに俺は早速用意していた最低ランクの回復薬を手渡す。
「……通常の回復薬と見た目に違いはないのですね」
それが分かるということはこの人もダンジョンに潜ってアイテムを使ったことがあるのだろうか。
まあ交渉するにしてもダンジョンを経験している人の方が話は早いだろうから、こっちとしてはその方が助かるかもしれない。
「ええ、でもちゃんと外に持ち出せるようになってますよ。疑うのなら支払いの前に一旦、モノリスの外に出て確認してもらっても構いませんし」
「おや、いいのですか? それなら私が持ち逃げするかもしれないというのに」
ダンジョン外まで俺が追ってこないと分かっているならそれもアリなのかもしれない。
まあこれが今回だけの取引なら、という前提条件は付くのだが。
「構いませんよ。買い手は幾らでもいるので」
「でしょうね。分かりました、直ぐに戻ってきます」
持ち逃げするような奴とは今後の取引しないことを暗に匂わせればバカでもない限りそんな愚かな真似はしないだろう。
そんなこちらの予想通りブライアンはすぐに戻ってきた。
「確認が取れました。それではこちらが約束していた代金です」
そう言いながらブライアンは持っていたアタッシュケースを開いてその中身を見せてくる。
そしててっきりその中から100万を俺に渡してくると思っていた俺は続く言葉に驚かされた。
「相場がないのでとりあえずの値段ではありますが、そちらが指定された通り1本で100万円。それを10本なので合計で1000万円用意してあります」
「……はい?」
どうやら交渉の過程で認識の齟齬があったようだ。
(おいおい、嘘だろ。最低ランクの回復薬程度で1000万だって?)
思わぬ金額に驚かされたが金欠の俺にそれを受け取らない選択肢などある訳がなく、この一瞬にして俺は急に文無しから金持ちになるのだった。
「面白い!」「続きが読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の星評価をお願い致します!