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第75話 協力者

 正体をバラさない代わりにアイテムを寄こせ。


 そんなような要求をされると思っていたのだが、どうやらそれは間違いだったらしい。


 だって俺がアルバートだと証明するべく自室にある呪怨ダンジョンのロビーでアルバートに変身して見せたら、目の前の人物は歓喜の涙を流して満足しているようだったので。


(こいつ、マジでガチのファンなだけかよ)


 さっき自分から握手をしてほしいとか言っていたくせに、実際にアルバートを前にすると私なんかが触るのなんて恐れ多いと何故か遠慮する始末だし。


 まあ最終的には俺が半ば強引に握手したけどさ。


 アルバートのサインなど考えていなかったこともあって、そちらは今すぐに書く訳にもいかなかったので。


(てかサインってどんな風に書けばいいんだ?)


 それも考えておかなければならないのだろうか。

 ぶっちゃけるとかなり面倒ではある。


「って、そんなことより本当にこれだけでいいのか? これだけ色々と調べておいて握手だけって割に合わないだろうに」

「全っ然大丈夫です! むしろこうして会って会話できるだけで幸せですから!」

「そ、そうか……」


 握手した手を保存しなきゃ、とかそれこそ一生洗わない勢いを見せるサクラにドン引きするしかない。


 自分がその対象じゃなきゃ物好きだなー程度で済んだのかもしれないが、我が事となると何故か非常に気まずいのである。


 別に自分が悪い訳でもないのだが、なんかこう過大評価されている感じというか期待が重いというような感じがして。


(でもこれだけアルバートに心酔しているのなら……)


 これまでの俺はサクラに対価を払うなどしてとにかくアルバートの正体を黙っておいてもらうことしか考えていなかった。


 だけどこの様子だとアルバートである俺が秘密にしておいてくれと言ったら、余程の事がない限りはそのお願いを守り続けてくれそうである。


 だとしたら目の前の人物は協力者として最適ではないだろうか。


(母さんの件も片付いたし、これまでやる暇のなかった内容の配信もやっていきたいところだからな)


 圧倒的な強さを誇るアルバートのダンジョン配信は大人気だし、今ではダンジョン配信者として不動の地位にいると言っても過言ではない。


 だけどそんなアルバートでも他の配信者と絡むような、所謂コラボ配信を行なう目途は全く立っていなかった。


 ダンジョン配信者に限らず通常の配信者でもコラボ配信を行なうのは大きなメリットが存在する。


 それは自分を知らないコラボ相手の視聴者に存在を認知されることで新たな視聴者やファンの獲得が可能だからだ。


 もっとぶっちゃけた話をすれば、有名な配信者と絡めるだけでバズるチャンスなのである。


 だからダンジョン配信界隈においてもコラボ配信は非常に重要なものとなっていた。


(これまで他と交流の皆無だったアルバートが突然コラボするとなれば話題にもなるだろうし、それならこっちにだってメリットがあるからな)


 そしてサクラも日本ではそれなりの知名度があるダンジョン配信者だ。


 以前に窮地を助けたという点で関わりがある相手だし、秘密を共有できるという意味でもコラボ相手としては最高ではなかろうか。


 ならばここでそんな美味しい相手を逃がす手はない。


 なんならサクラもこっち側に引き込んで秘密を守らなければならない同盟相手にでもしてしまえばいいのだ。


 そうすれば別に俺がお願いするでもなく彼女自身が秘密を守ろうとするだろうし。


「なあ、サクラ」

「ひゃい!? な、何でしょうか!」


 アルバートがただ名前を呼んだだけでこれの動揺っぷりである。


 普段のサークルで俺や他の奴が名前で呼んでも決してこうはならないというのに。


 そのあまりの落差に思わず笑いが零れてしまうではないか。


「さっきは握手だけで十分みたいなこと言ってけど、アルバートがどうしてここまで強くなれたのか本当に知りたくはないのか?」


 そんな訳がない。


 ダンジョン配信サークルでも皆でアルバートの強さの秘密が何なのか、自分達もそれを真似できないのかと何度も話したことがあるのだから。


 それはアルバートのファンであるサクラだって同じである。


「そ、それは、その……本音を言えば知りたい気持ちはありますけど、でも私なんかがそれを聞くのは恐れ多い気持ちもあるというか。こんな形でその秘密を聞くのはアルバート様を脅しているみたいで申し訳ないと言いますか」

「つまり遠慮しているだけで興味はあると」

「は、はい……すみません」

「いやいや、別に謝らなくていいって」


(今はその方がこっちにも好都合だからな)


 サクラだってダンジョン配信者、それもかなり真面目に活動している方の人間なのだ。


 だとしたらこう思うのが当然の事だし、むしろそうじゃない方が変というもの。


 それでも一人のファンとして節度を守ろうとする姿は非常に好感が持てるというものだった。


 だからモーフィアスにもダンジョン配信界隈が更に盛り上がるのなら構わないという許可も得た上で、俺は自身の力の秘密の一端を開示することにする。


 これまでの態度からアルバートの姿だとまともに目も合わせられない時があるようなので、俺は変身を解いて改めて話し出す。


「当の本人が気にしないって言ってるんだし、興味があるなら聞いておけよ。俺がどうして超新星と称されるアルバートになったのか、をな」


 それでもまだ迷っていたサクラだったが、他の誰も知らないアルバートの裏話を聞きたくないかと誘惑したらあっさりと陥落してみせた。


 どうやらサクラを攻略するためにはファンという立場を攻める形にするのがよさそうだ。


 そんな悪い考えを隠しながら、俺はここ数ヶ月の大まかなあらましをサクラに説明し始めるのだった。

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