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第69話 幕間 上級ダンジョン攻略に対する反応

多くの一般人の反応


 アルバートが上級ダンジョンの攻略をする姿はこれまでと同じように神サイト上で配信されていた。


 そしてその常識外れの耐久配信は常に多くの人に見られているのが分かる。


 なにせ連日、神サイト上で表示される視聴者数は圧倒的トップだ。それも二位を大きく、それこそ桁が違うくらい引き離して。


(桁違いという言葉がこれ以上ないくらいにピッタリだな)


 そして桁違いだったのは視聴者数だけではなかった。


 レッサーエリクサーという超高額のアイテムをそれこそエナジードリンクでも飲むかのように使ったりするし、幾つあるのか分からない強力なスキルの数々を揃えているのを見れば誰もがそう思って当然だろう。


 また何日も魔物と戦い続けるなど、それ以外の色々な面でもアルバートという男は異常だった。


 だけどそれらの異常なことすら霞む出来事が起きていた。


 それは上級ダンジョンのボス戦終盤の出来事である。


 長い戦いの末に互いの最強の一撃同士がぶつかり合った、ここまではいい。


 どちらが勝つのかコメント欄も盛り上がったものだし、アルバートの半身が消滅した時は遂に敗北したのかと思ったものだ。


 だがそこから彼は巻き返した。

 いや、そんな言葉では済まない現象が起こったのである。


 初めて大きなダメージを負ったことに怒りを覚えたのか、これまでにないような雄叫びを上げたアルバート身体がまるでビデオを逆再生しているかのように治っていく。


「バカな、貴様まだ……!?」


 それは上級ダンジョンのボスが見ても異常な光景だったのだろう。


 そんな敵の言葉をダンジョンカメラ拾ったと思った次の瞬間だった。


 万全の状態に戻ったアルバート。


 その彼が僅かに笑いを浮かべながら翳した掌から全ての呑み込む闇が解き放たれたのは。


 何が起こったのか分からない。

 だけどダンジョンカメラすら呑み込んだその攻撃は、当然ながら上級ダンジョンのボスにも躱すことなど許さなかったらしい。


 そうして黒一色に塗り潰された映像が元に戻った時にはボスは欠片も残さず消え去っており、その場に立っていたのはアルバートだけだった。


 一瞬で肉体を再生させるだけでなく、ボスを一瞬で消し去れる攻撃を残していたということ。


 それはつまり今の戦闘すらアルバートにとっては余裕があったということだろう。


 現にこれまた前人未到の快挙を成し遂げたというのに彼はそのことを誇るでもなく、あっさりと耐久配信が終わることだけ告げて配信を終了してしまったのだから。


 これだけのことをしたのだから、普通はもっと誇らしげにしてもいいものを。


 むしろ他に大事なことがあるかのように、足早にダンジョンを出ていく姿はもはや理解不能である。


「てか、どっちがボスか分かったもんじゃねえよ……」


 そう思った誰かがアルバートのことを魔王と言い始めて、それに多くの賛同が集まったのは自然の事だった。




アメリカ大統領の反応



 彼は規格外なのだ。


 だからどんなことが起きてももう驚かないと何度も思ったのだが、それでも最後のボスを消し去ってみせた攻撃に関しては驚嘆を禁じ得なかった。


「あの掌から放たれた攻撃は何だったんだ?」

「分かりません。ですが上級ダンジョンのボスが一瞬で消し去られる威力があることは間違いないでしょう」

「仮にあれを連発できるとなれば、上級ダンジョンのボスすら彼にとっては敵ではないことになるのか……恐ろしい限りだな」


 黒という色的に彼が好んで使っている闇属性の攻撃だと思われる。


 だがそれ以外の事については何も分からない。


 どうして最初からそれを使わなかったのか。


 そしてそれ以外にもまだまだ隠し玉が残されているのか、その全てが謎に包まれていると言ってもいい。


「……大統領、本当に彼とはアイテムの取引を済ませるだけでいいのでしょうか?」

「と言うと?」


 何か言いたげな高官の言葉の先を促す。大体の内容は分かってはいたが。


「上級ダンジョンを攻略したことでアルバートはあれらの力を現実世界に持ち帰ることが可能になったはずです。個人が持つにはあまりに強大な力を。それをこのまま放置するのはあまりに危険かと」

「だから拘束でもしろと言うのかね? 未だに現実世界でまるで消息が掴めていない彼のことを? バカなことを言わないでくれ」


 仮に消息が掴めたとしても私はそんな命令を下すつもりはなかった。

 少なくとも今のところは。


「君の懸念も分かるよ。彼は上級ダンジョンを攻略したことで更に大量のDPを獲得したと思われる。だからこそ現実世界でどんな力を振るえるようになるのか心配になるというものだろう」

「でしたら……」

「でもだからこそ我々は彼と敵対してはいけないんだよ。特に今は友好関係が築けそうになっているのだからね」


 彼が手にした強大な力を好き勝手に使い、世界に混乱を齎すようなら話は別だ。


 そうなった際は我が国だけでなく世界中の戦力が彼のことを叩き潰そうとするだろう。


 なにせそうするだけの大義名分があるのだから。


 でも今のところの彼は規格外な活躍によって、ただただダンジョン配信を盛り上げているだけだ。


 そんな人物にこちらから攻撃を仕掛けたら神サイトの運営の機嫌を損ねるかもしれないではないか。


(そもそもダンジョン配信を普及させたい運営が、アルバートが力のままに暴れ回るような暴挙に及ぶのを許すとも思えないしね)


 仮にアルバートが手にした力を使って暴れ回ったら、ダンジョン配信者は危険だという風潮になりかねない。


 これまでの傾向からして、それは運営の望むところではないだろう。


「それにどうせ我々が手を出さなくても焦った他の国が彼に手を出すさ」


 彼との接触を急いでいるのは日本政府だけではない。


 我が国との取引の約束があることをそれとなく流していることもあって、幾つかの国は強引な手に出ようとしているとの情報も得ているのだ。


 だから危ない橋を渡るのは他の奴にやらせればいいのである。


 我々が行動するのはそれを見てからでも遅くはないのだから。

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