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第66話 最後の色と削り合い

 互いの切り札を使用した剣戟。


 それがぶつかり合った結果、凄まじい衝撃が辺りに解き放たれた。


「ぐう!?」


 その結果、俺も敵も吹き飛ばされて背後の壁に激突する。


(クソ痛え!)


 お互いの攻撃の大半は相殺されたようだが、それでも敵の光の剣を使った攻撃は俺の全身を焼くと同時に大きなダメージを与えていた。


 代わりに敵もこちらの呪属性の攻撃によって全身の鎧が大きく罅割れて、一部に至っては完全に砕け散っている。


(……中身があるのか)


 その砕け散った部分から中に何者かが入っているのが窺えた。どうやらデュラハンなどと違って鎧自体が本体ということではないらしい。


 だとすれば今の攻防ではあくまで装備の鎧が砕けただけだ。


 その影響で大きなダメージを与えただろうが、それでもまだ仕留めるのに足りているとは思えない。


 ならばここでのんびり痛がっている暇などない。


 俺はすぐに回復アイテムを使用して全身の傷とダメージを即座に回復すると『呪詛の腕』を再度発動した。


 ただし今度は即時発動ではなく溜める。


 威力を増加させるのもそうだが、なにより敵が闇系統を無効する闇の盾を展開してもそれを貫けるように。


 さっきのスキル攻撃と同じだと思って闇の盾なら防げると勘違いしてくれれば最高だが、果たしてどうなるだろうか。


(まあ、やってみるしかないな)


 生憎ともう一つの切り札である『鬼哭啾々』の方はまだ発動条件が整っていないのだ。


 だから現状ではこれが俺にとって最強の一撃である。


 そこで遅れて敵が起き上がり始める。


 だがその動きは先程までと違って非常に緩慢なものであり、それこそあちらも大きなダメージを受けているのが窺い知れた。


 やはりここで決めるしかない。


 敵に回復手段があるのか分からないが、あったとしても折角生じたこのチャンスをむざむざ失ってたまるものか。


『呪いの魔眼』

『幽玄の剣』

『属性強化・呪』


 再度、先ほどと同じような複数のスキルを発動して敵へと迫る。


 それを敵は見て、


「……見事なり」


 割れた兜の隙間からそんな風に口を動かすのが見えた。


 だがそれでこちらが止まる訳もなく、俺は容赦なく振りかぶった剣を敵へと振り下ろす。


(やったか!?)


 今度こそ確かに鎧を貫いて敵の肉体を深く斬り裂いた手応えがあった。


 それが勘違いではなかったことは、こちらの斬撃によって切り裂かれた敵の身体が光の粒子となって消えていくことで証明される。


 どうやら気付かぬうちに自分自身で立てていたフラグは折れてくれたようだ。


「ふう、これで終わりか……」


 中に入っていた何者かは消えていき、装備していた鎧などが地面に転がっていく。


 それを見ながら俺は想像していたより苦戦しなかったことを不思議に思っていた。


 確かにボスは強かった。


 ステータス的な意味もそうだが六つの色をしたそれぞれの系統を司る装備を駆使して、時にはこちらの弱点を厭らしく突いてきたものだし。


 かと思えばこちらの攻撃を耐性ある防具で受け止めるなど、仮に俺がどの属性を得意としていても厄介だっただろう行動をしてきたものだ。


(単純な強さよりもそういう一癖も二癖もある戦い方を重視しているボスだったってことか?)


 あの鎧と盾はそれこそ多種多様な属性攻撃が出来なければ突破するのはかなり難しかっただろうし、今回の俺はそれに上手く当て嵌まっていたということだろうか。


 だから想像していたよりも苦戦せずに済んだと。


「……ってことだったらよかったんだけどなあ」


 残念ながらそうではないようだ。


 何故なら地面に落ちていた鎧が急に浮き上がると、散り始めていた光の粒子がそこに集まり始めているからだ。


 一応『呪いの魔眼』などで妨害できないかと攻撃してみたが、変身途中の攻撃は許されないとばかりにあっさりと弾かれてしまう。


「まあそりゃ第二形態はあるよな。中級ダンジョンのボスにだってあったんだし」


 俺はそうなる前に強引に倒し切ったけど、ここでも同じようにできるとは思っていなかった。


 だからこういう事態になっても実はそう驚きはないのである。


「挑戦者よ、よくぞ七色の騎士たる我を打倒した。その類い稀なる腕前、実に見事なり」


 そんな俺の零した声に応えるように謎の声が闘技場に響き渡る。


 どうやら七色の騎士というのが敵の魔物の名前だったようだ。


 そこで嫌な予感を覚えた。

 これまで敵が使用した色は幾つだっただろうかと。


 火の赤、水の青、風の緑、土の黄、光の白、闇の黒。


 やはり間違いない、《《六色》》だ。


 だとすると最後の一色が残されているということではないだろうか。


「類い稀なる実力者よ。我が最後の色である虚無の無色を超えてみせるのだ。それを成し遂げれば今度こそ汝の勝利である」

(ああ、やっぱりか)


 この言葉で確定した。

 やはりここから敵の第二形態との戦いが始まるのだと。


 それでも第三形態はないと提示してくれている辺り良心的だと思うべきだろうか。


 まあ仮に敵がどれだけの形態をこの後にも残していたとしても、こちらには勝つ以外に選択肢はないのだ。


 だったらここで文句を垂れても仕方がない。


 だから俺は浮き上がった中身のない鎧が無色透明へと変わっていくのを見届けて、次の瞬間に何故か武器を持っていなかった左腕の半ばから先が消えていたのだ。


「っぐ!?」


 遅れてやってきた痛みと残された腕の切断面から自身の腕が斬られたのだと知覚して俺は驚愕する。


 これまでにだってダメージを負うことはあったが、高いステータスのおかげもあってダメージが通るにしてもそれなりの抵抗があったものだ。


 だが今回の敵の謎の一撃はいつ放たれたのかも分からない上に、どうやって自分が傷つけられたのかも分からなかった。


 これを連発されれば流石の俺も大ダメージを負うことは決定的である。


「我が無色が司る虚無は全ての属性を断ち切る」


 それが分かっているのか姿なき敵が語りかけてくる。それもどこか自慢げというか、勝ち誇ったような感じを滲ませて。


「……はっ、いいぜ。やってやろうじゃねえか」


 ここからはどちらが先に音を上げるかの持久戦だ。


 そして生憎とこっちは元からそのつもりである。


 なにせ上級ダンジョンのボスがそう簡単に倒せるだなんて端から思ってもいないので。


(レッサーエリクサーを始めとした回復アイテムはそれこそ腐るほど用意してあるからな)


 腕が斬られようが足が吹き飛ばされようが、普通なら絶対に死ぬしかない外傷を負ってもHPさえ残っていれば死なないのはモーフィアスに確認済み。


 だから俺を倒すのなら一撃でHPを零にするしかない。


 でなければ膨大なDPにあかせて揃えた大量の回復アイテムが尽きるまで永遠と回復してしまえるので。 


「まさか耐久配信の最後が、どちらが音を上げるかの耐久勝負になるとはな」


 そうボヤく俺の言葉が間違っていなかったようで、ここから五時間という戦闘時間としてはあまりに長い削り合いが続くのだった。


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