第65話 属性有利と耐性無効
どのモンスターカードにも得意な属性と苦手が存在している。
だからそれを自分に使用する以上は弱点となる属性が生まれるのは避けられない。
今回の俺で言えば光系統全般がそれに当たる。
勿論それは分かっていたことなので対策はしてあったが。
(それでもここまでキツイか!)
全身の装備は光属性に耐性のあるものにしてある。
それでもボスが振るう白色の大剣が体に当たる度に大きなダメージを負うのは避けられなかった。
それも当たっていると言っても直撃はしないように立ち回っているというのに、だ。
これでまともに直撃したらどうなるか分かったものではない。
流石にステータス的にも一撃で死ぬことはないと思うが、それでもこれまで受けたことない大きなダメージを負うのは避けられないだろう。
それもあって俺はボス戦が始まったから常に敵との距離を取るように立ち回って、魔眼による遠距離攻撃に徹しているのだった。
こう聞くと、一方的に押されているかのように思えるかもしれない。
だけど俺の方も徐々に敵のスキルの情報などを暴いてはいる。
まず盾だが、あれは属性に対する耐性が高いのではなく、その上位互換の無効という特性が付与されているようだ。
赤い盾なら火系統無効、青い盾なら水系統無効ってところだろう。
水の上位属性である氷属性まで青い盾に阻まれた感触からしても間違いない。
ただその反面、盾を装備している間は攻撃力が低下するらしい。
しかも盾で対応する属性攻撃を受け止めないと無効化はできないので、その部分を避ければ敵に攻撃は通る形だ。
そして対応する系統以外の攻撃を当てたら呆気ないくらいに簡単に破壊できた。
一定の時間が経つまで他の色をした盾も出さなかったので、壊したら一定時間だけ使えなくなるという感じだろう。
それに対して鎧はあくまで対応した色の系統に高い耐性を持っているだけらしい。
だけど鎧自体に高い耐久力があるので、対応した弱点以外で攻撃してもそう簡単に壊れない。
また全身を覆って守りを固めていることもあって、盾とは違ってそこをピンポイントに避けて攻撃とかも無理だ。
だから俺はまずは色々な属性攻撃を駆使して盾を破壊した後、そこから鎧に攻撃を加えてダメージを蓄積させる作戦を実行していた。
デュラハンと違って中身が有るのかどうかは分からないが、どちらにしても鎧が万全だと中々ダメージが通らないのだからそうするしかない。
もし中身がないなら鎧を破壊できた時点で勝利だろうし。
ただし敵がそれを傍観してくれる訳もなく、こちらの弱点である光系統の白い大剣で容赦なく振るってきていた。
その攻撃によって何度もダメージを負うが、その度に大量に用意しておいた回復薬を使用することでどうにか対処している。
(武器とかの装備と違って回復アイテムはチェストから直接使えて助かったな。でなければ早々に詰んでた)
正確には大量のDPを消費して、そういう機能を拡張したのだが。
これがないと大量の回復薬を自分で持っていないといけないし、敵の攻撃の余波などで破壊される可能性もあり得るので機能拡張しておいて大正解である。
そしてチェストの中にもボス戦のために大量の回復アイテムを用意してあるのだ。これが尽きない内は、一撃でやられるか俺の心が折れない限り俺は死なない。
『風の剣・乱舞』
『土塊の魔眼』
『風刃の魔眼』
敵の大剣から乱れ飛んでくる斬撃を何重にも展開した土壁と複数の風の刃で受け止め迎撃する。
『氷結の魔眼』
『聖光の魔眼』
『換装・火の剣」
『火の剣・一閃』
『換装・光の盾』
その反撃で放った氷は赤い剣が炎を纏って振るわれる余波で掻き消されてしまい、聖なる光は光無効の盾の阻まれてしまう。
このようにお互いに敵の情報が分かるにつれて、戦いは相反する属性をぶつけ合いものへとなっていった。
単純な威力は敵の方が上だったが、魔眼で二つの攻撃を同時発動も可能な俺の方が手数は基本的には有利。
(そろそろだな)
そんな状況がしばらく続いて、鎧にかなりのダメージが蓄積された辺りだった。俺が切り札の一つを使おうと考えたのは。
(本当は溜めた方が威力も上がるんだが、それをすると敵に気付かれるな)
特級スキルだけあって『呪詛の腕』は溜めずに使用しても威力は高い。
それこそ幽玄のデュラハンという強敵を仕留めるくらいには。
だけど溜めれば溜めるほど威力が高まる上に、耐性などを貫通できる種類が増えるのだ。
それこそある程度溜められれば耐性の上の無効、あるいはその上の反射や吸収すら貫いて敵にダメージを与えられるくらいに。
だけどそれができないのであれば貫けるのはあくまで耐性までだ。
つまり鎧は無効化できても、盾で防がれると『呪詛の腕』でも意味をなさないことになる。
(だったらまずは敵の盾を破壊する)
『呪いの魔眼』
『発火の魔眼』
『千里眼』
手数重視で慣れ親しんだ初期の頃から所有している二つの魔眼を『千里眼』で強化して発動する。
細かい火の球が敵の四方八方に浮かび上がると同時に殺到して、その影に隠れるようにして背後から黒い靄が敵に接近する。
『換装・火の鎧』
『換装・闇の盾』
だけどこの幽玄のデュラハンには通じた初見殺しですらもこのボスには通用しなかったようだ。
全身に殺到する火の球は赤い鎧で受け止めて、背後から迫る呪いも振り返りざまに黒い盾で掻き消されてしまう。
『斬撃』
そこを狙って俺は手にしていた剣で黒い盾を斬りつけた。
これまで常に距離を取っていた敵が急に自ら接近してきたことに驚いたのか、騎士の対応は間に合わない。
下級スキルの攻撃でも対応した攻撃でない以上、敵の盾は耐え切れない。呆気ないほどにあっさりと壊れていく黒い盾を見ながら俺はすぐに次の手を切った。
『武装換装』
光耐性を持つ装備から『呪詛の腕』を最大限活かすための呪属性装備へと変更する。
『呪詛の腕』
『呪いの魔眼』
『属性強化・呪』
そして『呪詛の腕』を発動した右腕で、その剣を振るう。
それこそここで決めるべくありったけの強化をしながら渾身の力を込めて。
更に『呪いの魔眼』による追撃も同時に行ないながら。
『換装・闇の鎧』
『換装・光の剣』
それに対して敵はすぐに闇の鎧を身に纏うと、反撃するべく光の剣に切り替える。
耐性があるので『呪いの魔眼』は闇の鎧の前にそれほど効果を発揮できず、続いて到達するはずの剣による攻撃もそうなるはず。
「掛かったな」
そうやってかつての幽玄のデュラハンと同じ判断を下した結果、鎧に振るわれた刃が深く食い込むこととなった。
そして食い込んだ鎧の内部に拡散した呪いが流れ込む。
そう、『呪詛の腕』はその腕だけでなく握った装備にも効果を及ぼすのだ。
だから振るわれた呪属性の剣は耐性を無効化するし、他の特級スキルによって威力も大幅に強化されている。
「ぐう!?」
(喋った!?)
その一撃を受けて大きなダメージを負った敵が初めて呻き声を漏らしているが、それに気を取られている時間はなかった。
何故なら敵もすぐにその手に持つ光の剣で反撃してこようとしているからだ。
このままでは反撃をもらう。だけどそれでもこのチャンスを逃す訳にはいかない。
『呪詛の腕』
『呪いの魔眼』
『幽玄の剣』
『属性強化・呪』
その結果、ありったけのスキルを発動した俺の一撃と、
『限界突破』
『大剣の極み』
『光の剣・三連』
同じくここまで切り札を隠していたらしい敵の攻撃が衝突するのだった。
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