第63話 長き険しい道の終わりへと
試練の塔という上級ダンジョンに来てから既に一週間以上の時間が経過している。その短いようで長い期間、俺はレッサーエリクサーを頼ることで睡魔や疲労を無効化してここまで一度たりとも休むことなく進み続けてきた。
だがそれも今日で終わる。
いや違う、終わらせるのだ。誰でもない俺自身の手で。
レベル 36
HP 143+50
MP 140+50
STR 142+50
VIT 141+50
INT 145+50
AGI 141+50
DEX 139+50
LUC 145+50
保有スキル
特級スキル 『呪怨超ボーナス』『ボーナス超強化』『千変万化』『呪詛の腕』『鬼哭啾々』
上級スキル 『魔眼移植』『発火の魔眼』『氷結の魔眼』『風刃の魔眼』『土塊の魔眼』『聖光の魔眼』『呪いの魔眼』『千里眼』『武装換装』
中級スキル 『鋼の心』『生命感知』『鷹の目』『属性強化・呪』
下級スキル 『斬撃』『軽身』
装備カード
幽玄のデュラハンのカード
闇系統+7 光系統-3
『霊馬召喚』『幽玄の剣』
最後に自分のステータスを確認する。
幽玄のデュラハン戦で活躍した特級スキルの『呪詛の腕』。
そしてその戦闘経験から必要だと考えてたった今、ボス戦用に購入した『鬼哭啾々』。
これらは戦闘に直接関係する特級スキルだったせいか、別の特級スキルよりもずっと高価だった。
(なにせ二つ合わせて3500万DPもしたんだからな)
『呪詛の腕』が1500万。
『鬼哭啾々』に至っては2000万DPもしたのだった。
更に疲労回復のためにレッサーエリクサーを何本も使ったり、大量のHPやMP回復薬も購入したりしているのだ。
その結果として想像以上の早さでDPは減っており、上級ダンジョンの魔物を倒すことや、それによる特典などで増えた分を合わせても収支的にはマイナスだった。
残りDPが1億を切ろうかというところまできているくらいである。
(でも今はDPよりも上級ダンジョンをクリアしてアイテムを持ち帰る権利を手に入れることが何より最優先すべきことだからな)
資格さえ得られたのなら、次の給料日まで配信を休んで病院に張り付くようにしてもいい。
この無謀な耐久配信のおかげもあって、今の時点でも既にモーフィアスから以前と同じくらいの額が支給されることが決定しているのをそれとなく教えてもらっているからだ。
だからアルバートとしての活動を止めて何としてでも薬による延命をする方向にもっていけば大丈夫となるのだ。
それにそうじゃなくても人類初の上級ダンジョンのボス討伐に成功すれば、それこそ特典で大量のDPが貰えるはずだ。
理想としてはそれで1億以上のDPが稼げて、すぐに2億という必要なDP全てが貯まることだが果たしてどうなるか。
(なんにしてもここで負けることだけは許されない)
それはこれまでと同じ、だからこそ勝って終わらせるのだ。
そのために幽玄のデュラハンのモンスターカードを手に入れるまで周回もしたのだから。
モンスターカードの中には属性だけでなく通常では魔物しか使えないスキルが込められているものがある。
これもその一つであり、これを装備している今の俺は幽玄のデュラハンが使っていた『幽玄の剣』などが使える訳だ。
それに加えて闇系統全般が大幅に強化されている。
つまり『呪いの魔眼』なども今まで以上の威力になっているのだ。
今の俺はこの試練の塔という上級ダンジョンにやってきた時とは比べ物にならない力を手に入れている。
これだけの力ならボスにも通用するはず。
「さあ、行きますか」
そう信じた俺は視聴者に宣言すると遂にその先へと進む。
九十九階層のその先であり、このダンジョンに終着地点である百階層へと。
するとそこには大剣を地面に突き立て、柄の上を両手で抑えた状態で立っている大柄の騎士鎧に包まれた何者かが立っていた。
(武器を持つ人型の魔物なら戦い方はデュラハンを参考にすればいいな。鎧の色は赤ってことは火属性の敵か?)
こちらが開始の合図を送るか、戦闘態勢に移行しない限りは始まらないのは他の階層と変わらないらしい。
ただし身動きしない状態の騎士からでさえ発せられる威圧は相当なものだった。
そしてその状態でも敵がこちらを認識しているのが気配でビシビシと伝わってくる。
それこそ開始の合図を送ったら、すぐにでもこちら目掛けて突っ込んでくるのではないだろうかと思わせるほどに。
「……上級ダンジョンのボスだけあって相当な強敵のようです。相対するだけで圧倒的な強さや圧力をこちらに放ってきています。ですがここまで来た以上、私も負けるつもりはありません」
属性的には闇系統に弱い敵なら最高だったが、最悪の可能性である光系統に特化した相手ではなかった方が有り難かった。
なにせ幽玄のデュラハンのカードの効果によって、今の俺は光系統に弱いので。
(まずは弱点属性の把握と、こっちの得意属性でどれだけのダメージが与えられるかだな)
それはこれまでやってきた事と何も変わりないことだ。ここ何日かで最早慣れ親しんだ行動なので今更緊張することもない。
「それでは……行きます!」
そして俺は最後にして最大の試練に挑むだった。
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