第61話 最後の中ボス
九十九階層の魔物は幽玄のデュラハンという名前だった。
当然のことながら九十階層のデュラハンよりもずっと強化されており、更にこちらでは馬に乗った状態で登場することもあって敵が二体になったようなものである。
『黒炎』
『土塊の魔眼』
『風刃の魔眼』
スキルを使うのは首なし騎士であるデュラハンだけではない。
奴が乗っている馬が吐いてくる黒い炎による攻撃を『土塊の魔眼』で発生させた土の壁で受け止めた。
それと同時に『風刃の魔眼』によって巻き起こった風の刃が四方八方から敵へと迫る。
『発火の魔眼』
『氷結の魔眼』
更に追い打ちとばかりに火と氷も追加する。
『幽玄の剣』
『疾走』
だがその全てをデュラハンは大剣と持ち前の剣技、そして高速移動が可能な馬による移動で全て捌いてみせた。
顔がないのによく見えているものである。
だけど残念、それらは本命の攻撃を当てるための囮だ。
『聖光の魔眼』
『千里眼』
闇系統全般に滅法強い耐性を持つ代わりなのか光系統全般が弱点となっているデュラハン。
その光属性の上位属性である聖属性と聖光属性が込められたこの一撃は、奴にとって致命打となり得る。
本来なら先程の魔眼攻撃のように軌道を読んでどうにかできただろう。
魔眼による攻撃は目を向ける必要があるので、どうしても視線から攻撃の軌道を読まれてしまうので。
だけど『千里眼』により本来ならあり得ない背後を取る軌道を描くことに成功したその一撃には、さしもの幽玄のデュラハンも反応が遅れる。
先ほどまであえて執拗に別の魔眼で正面からの直線的な攻撃ばかりしていたこともそれを助長したのだろう。
「……!」
『聖光の魔眼』の一撃を隙だらけの背後から受けて声もなく身を震わせるデュラハン。
その様子からかなり効いているのは間違いないだろう。
だが乗っていた馬は耐え切れず蒸発するかのように消えたのに対して、デュラハンはその場で膝をついているだけだった。
(背後から弱点属性がモロに入ったってのに、まだ戦えるのかよ)
あるいは馬が庇った形になったか。
顔はないので表情は分からないが、それでも闘志が消えていないのは伝わってくる。
態勢を立て直されると厄介なのは目に見えているので俺はここで一気に決めにかかった。
『呪詛の腕』
これが新たに購入した特級スキルだ。
名前の通り本来なら闇系統に高い耐性を持つデュラハンには効果が薄い呪属性の攻撃である。
いくら『呪怨超ボーナス』という特級スキルによって強化された特級スキルでも、これでは敵を仕留めるには至らないだろう。
それをデュラハンも分かっているのか、その身に攻撃を受けてでも反撃しようと大剣を構え、
「!?」
そのまま『呪詛の腕』によって黒い靄を纏った俺の右腕に胸を貫かれることとなった。
頑丈な鎧だろうと容赦なく貫通しており、更にそこから爆発するように呪いが周囲へと撒き散らされる。
「へえ、中身は空っぽだったのか」
空っぽの鎧の中身を体内と言っていいのかは微妙なところではあるが、内部から本来ならほとんど効かない呪いによる攻撃で大きなダメージを受けたのは間違いない。
所謂致命傷という奴だ。
それでもデュラハンは最後の足掻きとして己の大剣による最強の攻撃を放ってくる。
まるでこちらを道連れにするかのように。
『幽玄の剣』
『呪詛の腕』
その最後の抵抗を今度は左腕に発生させた『呪詛の腕』で弾き返すと、そのままもう一撃を敵の身体に叩き込んだ。
それにより今度こそ耐え切れずに光の粒子となって消えていく幽玄のデュラハン。
すると運が良いことに、その光の粒子の一部が一枚のカードの形を模りだす。
(お、遂に出たか)
少し前から幽玄のデュラハンに無傷で勝てるようになってはいたのだ。
だが百階層で待ち受けるボスに挑むためにこれが必要ではないかと考えた俺はドロップするまで周回していた形である。
その待ち望んだモンスターカードは俺の方に飛んでくると体内に溶け込むようにして消えていった。
これまでにも何度かモンスターカードがドロップするこの現象は見たことがあるが、本人しか見えないようになっているとのこと。
だから他のレベル30越えの奴らが配信を見て、どの魔物からカードがドロップしたのか把握するのは無理らしい。
(それで肝心の性能は……よし! やっぱり闇系統に強いな)
闇系統に高い耐性を持っていたからそうだと思ってはいたが、やはりその予想は当たっていたようだ。
幽玄のデュラハンのカード
闇系統+7 光系統-3
『霊馬召喚』『幽玄の剣』
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