第50話 上級ダンジョンの情報
試練の塔では魔物を倒すとモノリスが出現する。
そこで次に必要なアイテムを購入したり、装備を変更したりして次の階層に進む準備ができるのだった。
(ブラッディウルフか。闇属性とその上位の血属性に耐性がある敵だった感じだな)
倒したことで見られるようになった魔物の情報を確認すると名前や耐性、主に使うスキルなどの詳細が分かった。
ただし全ての情報を開示するためにはある程度のDPを要求されたが。
中級ダンジョンまでの魔物は誰かが一度でも討伐すれば、モノリスからでも神サイト上からでもその詳細な情報が見られる仕様だった。
だが上級ダンジョン以降では魔物の所持するスキルや耐性が増えることもあってか、それら全ての情報を知るためにはモノリスでDPを消費する必要があるようのだ。
(しかもこの場合だと魔物の討伐者以外には詳細な情報が開示されない形なのか)
つまり現状においてはブラッディウルフを始めとした上級ダンジョンの詳細な情報を得られるのは俺だけということになる。
更にどうも上級ダンジョン以降で得られる情報に関して神サイト上などで開示される情報は最低限のものだけであり、詳細を知った討伐者などが配信などで他者にその情報を流すことができないらしい。
仮に資格がない者が話を聞いても内容が分からなくなるようにしているとか。
いったいどんな力が有ればそんなことが可能なのかと思ったが、こいつらにそれを言い出すのも今更なので諦める。
ただしその制限は中級ダンジョンを攻略していない者にだけ適用されるようだ。
つまり同じように中級ダンジョンのボスを倒した立場の人間なら、話もできるしこちらから情報を売ることも可能だと。
(なんでこんな面倒な仕様なんだ?)
「簡単に言えば、金で情報を買われるのをある程度まで抑えるためかな。君のような一人だけに頑張らせて金さえ払えば全ての情報が手に入るようになると、それを強要する奴が多くになりかねないからね。あとは一応中級ダンジョンを攻略した才能ある者の保護も兼ねているよ」
モーフィアスが俺の思考を読んで他には聞こえない声で返答してくる。
そいつらしか情報を手に入れられないのなら、そうそう無碍な扱いはできないだろうということらしい。
また中級ダンジョンまではある程度まで初心者向けというか難易度もそれなりのものとして抑え気味に設定されているが、上級ダンジョン以降はそうではないのも影響しているようだ。
要はダンジョン配信が盛り上がって欲しい。
だけどそう簡単に攻略はされたくないということらしい。
(なんだその、鬼畜難易度のゲーム作成者みたいな考え方は)
まあ理由を知ったところで俺にどうにかできるものでもない。
だとすれば今はそんなことよりも得られる情報をどう活用するかの方がよっぽど大事だろう。
(……ブラッディウルフで厄介そうなのは『血の刃』と『血染めの戦場』のスキルか)
どちらも闇の上位属性である血属性の攻撃であり、なんとどちらも既に味わっているようだ。
まずアルバートが初めて傷を受けた最初の一撃。あれが『血の刃』だったらしい。
(ただの物理攻撃じゃなくて上位属性だからあんなに簡単に傷を負った面もあるんだろうな)
闇の上位属性の血属性の攻撃であり、更には出血の状態異常値を敵に蓄積させる効果を持っているようだ。
出血などの一部の状態異常は対応する攻撃を与えるなどで異常値が蓄積していって、それが一定の割合を超えると発言する仕組みとのこと。
だから本来なら一撃しか受けていない俺が出血の状態異常が発現することはないはずだった。
だが『血染めの戦場』は出血の状態異常値を爆発的に上昇させるフィールドを展開させるものらしく、既に最初の攻撃で異常値が僅かでも溜まっていた俺にも効果があった訳だ。
(これを使えばブラッディウルフは攻撃した相手をほぼ強制的に出血状態にさせられるってことか。滅茶苦茶強いじゃねえか)
ただ強力な反面、デメリットがない訳でもなく『血染めの戦場』の発動には大量のMPが必要らしい。
また発動してから一定時間、他のスキルが使用できなくなる上にその場から動けなくなるらしい。
またあくまでフィールドを展開する仕様上、敵味方問わず全体に効果が掛かってしまうようだ。
つまり味方が出血の異常値を抱えていた場合、その味方を殺すことにも繋がってしまうのである。
なお、ブラッディウルフは血属性及び出血の状態異常に非常に高い耐性を持っているので、こいつらが出血することはまずないようだった。
つまりブラッディウルフだけならほぼデメリットなしということではないか。
(ちゃんと考えられたスキル構成というか組み合わせだな)
この分だと先の階層の魔物もそういう厄介なスキルや特性を持っているだろうし、それらの魔物が同時に出現して組み合わさることで更に脅威となる出現の仕方をするのも間違いないだろう。
そして今の俺ではそれを攻略できないことも何となく理解できた。
「やっぱりこうするしかないか」
それは元々分かっていた。
だからこそ耐久配信すると宣言していたのだ。
「それでは今回は次の階層には進まず、一旦ギブアップします」
耐久配信なのに一階層でのギブアップ宣言。これにコメント欄は大いに混乱した様子を見せていた。
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