第44話 緊急告知
準備を終えた日の夜に俺はダンジョンに向かった。
その目的とは、一言で表せば緊急告知をするためである。
「どうも、アルバートです。突然ですが今日は皆さんに緊急のお知らせがあって急遽配信してます。そう長くはならないのでお付き合いしていただけると有難いです」
え、配信してるじゃん
こんな時間になんだなんだ?
告知? こんな急に?
いったい何の?
まさか引退するとか……?
いやいや、んな訳ねえだろ
予告もない上にいつもの時間帯でもないからか、視聴者数はここ最近では一番少ないしコメントも突発での配信に戸惑っている人も多い。
徐々にアルバートの配信が始まったことに気付いた人が増えているようだが、これに長く時間を掛けるつもりもないので生でこの配信を見る人はそう多くはないだろう。
でもそれで問題ない。
だってこれはあくまで明日から行われる予定の本命の配信を告知するだけだし。
むしろ期待を煽るためには短く端的に話した方が効果的かもしれないくらいだ。
「先日、私が中級ダンジョンを攻略したことはこのチャンネルを視聴してくれている人なら知っていることでしょう。これにより私は上級ダンジョンのボスに挑戦する権利を得たことは皆さんもご存じだと思います」
うんうん
そりゃ知っているでしょうな
むしろ知らん奴の方が珍しいやろ
ん? なんだこの流れは?
え、もしかして……!
これはまさかのまさかか!?
この辺りで告知の内容を察している視聴者も出てきたようだ。
だから俺はその期待に応えるように俺は高らかに宣言する。
「折角の挑戦権を得られたのなら恐れずに挑戦してみたい。なので私は明日から上級ダンジョンに挑戦します。それも私以外が見つけていないだろう未発見の上級ダンジョンに!」
ここでコメント欄が爆発的に加速する。
マジか!?
キター!
しかも明日から!?
ついこの前、前人未到の偉業を達成したばかりだぞ!?
いやいや、早過ぎだろ!(笑)
でもそこに痺れる! 憧れる!
いいぞ、もっとやれ!
ちょっと待て、その後の言葉も聞き捨てならんぞ!
未発見のダンジョン! なんでそんなの知ってんだよ!
中級ダンジョンを無傷で攻略した時から、皆こうなることを心のどこかで期待していたのだろう。
基本的にコメントはこんなにが早く上級ダンジョンに挑戦することでも賛成や肯定的なものが多い。
(盛り上がれ。そしてもっとより多くの視聴者を惹きつけろ)
注目されるプレッシャーなどここまできたら知ったことか。
そんなものに今更躊躇するような半端な覚悟をしたつもりはない。
熱狂が巻き起こることによって俺にも大きなメリットがあるのなら、むしろそれを利用するべく煽り立ててやろうではないか。
運営が望むダンジョン配信が世界中で盛り上がらせたいという要望を叶えてやるためにも。
「そして折角の機会なので、上級ダンジョンを攻略するまでぶっ続けでダンジョンに挑もうと思っています。所謂クリアまでの耐久配信って奴ですかね。それでも攻略するまでどれくらい時間が掛かるか分かりませんが、可能な限り早く上級ダンジョンのボスを倒してみたいと考えているので、成功するよう応援してくれると嬉しいです」
耐久配信!?
アホだ! とんでもないアホがいる!
いやいや、流石に無理だろ!
そもそもどんだけ時間が掛かるか分かったもんじゃないだろ?
何日、下手すれば何週間も寝ないつもりなのかこの人?
いや、流石に寝る時間は取るだろ
もしくはそんなに時間を掛けずに攻略する自信があるとか……?
この爆弾発言に大荒れになるコメント欄を見ながら、俺は次々に投げ掛けられる質問などは全て無視して締めの言葉を口にする。
「それでは今日の配信はここまで。また明日の配信でお会いしましょう」
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