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第41話 サブカメラの必要性

 中級ダンジョンの攻略に成功した俺は、十分な時間が経ってから変装を解いてロッカールームを出て家まで戻ってきていた。


「ふう、上手くいったな」


 ボス討伐自体はこれ以上ないくらいに成功だ。


 それは運営であるモーフィアスの太鼓判もある。だがだからこその問題も発生していた。


(メインカメラの性能だとそろそろ限界がくるかもしれない、か)


 帰り道でモーフィアスから告げられた言葉を反芻する。


 モノリスではDPを利用して様々な物が購入できる。


 前の買ったリンゴなどの現実世界の物品に始まり、回復薬やスキルなどのお伽噺の中にしかないような代物。


 そしてダンジョンカメラに翻訳機能やアバター作成を追加するようなダンジョン配信者し易いよう、カメラの機能を拡張するようなものまでその種類は本当に多岐に渡る。


 その上で俺は新たに購入するべきものについて頭を病ませていた。


(サブカメラ一つで百万DPも必要なのか。正直高いな)


 今のところサブカメラを購入するダンジョン配信者はほとんどいないそうだ。


 何故ならダンジョンに入った際に起動するメインカメラで今のところは誰もが撮影するのに十分だからだ。


 ダンジョンに入ってから外に出るまでその行動を常に撮影するダンジョンカメラ。


 それは撮影者の意思に関係なく自動的に空を飛びながら被写体を撮ってくれる。


 ある意味では監視されているとも取れなくもないが、そのおかげで配信者達はカメラ映りなどをあまり気にすることなく戦えているという面もあるのだ。


 これが人力での撮影ともなればどれだけ大変か分かったものではないし、俺もそのこと自体に文句がある訳ではない。


(むしろそのメインカメラだけだと追いつかなくなりそうなのが問題なんだよなあ)


 メインカメラは宙に浮かびながら常に撮影者を追いかけて適切な角度でダンジョン探索を映し続けてくれる。


 普通はそれで十分なはずだが、俺の速さだとそうはいかないかもしれないという問題が発生したのだ。


 これまでに寄せられたコメントの中でもその兆候が感じられるものは幾つか見受けられた。


 タイムアタックの際にスライムやゴブリンが吹き飛ばされ、それがどうなったのか視聴者が確かめられないという風に。


 ダンジョン配信において《《ばえる》》シーンの一つに魔物との戦いというものがある。


 超人的な身体能力を持った配信者がスキルなどを未知の力を駆使して今まで見たことのない魔物という危険な敵と戦う。


 そこに多くの視聴者が惹かれるのは自然な事だろう。

 俺自身もかつてそうだったし。


 それなのに今の俺は速過ぎて魔物が倒されるシーンが映らないケースが出てきてしまっている。


 ある意味ではそれが俺の尋常ではない速度を証明する一つの方法とも言えるが、そんな見ても分からない映像ばかりでは視聴者目線ではつまらないと思われる可能性もあり得た。


(分かり易いシーンがあった方が視聴者のウケ的にもいいはずだからな)


 だからこそその魔物を倒すシーンも配信上で余すこと映したい。


 だがそれを意識し過ぎて自分の速さと武器も失いたくもない。

 それは今のところ俺にだけ許された武器なので。


 だが上級ダンジョンでの戦いは更に苛烈さを増すとモーフィアスからも釘をさされている。


 そして恐らくこのままではその戦闘を十分に配信として映すことが叶わないだろうことも。


「それを防ぐためにもダンジョンカメラの数を増やせばいい」


 それを解決するために提示されたのがサブカメラの増設だった。


「サブカメラは翻訳機能など同じ要領で購入できる。しかも自身で購入したダンジョンカメラは自身で操作が可能になるし、撮りたいシーンなどをあらかじめ設定しておけば自動的にそれを撮影してくれるようになるよ」


 更に撮影した映像は後から編集して動画の形で神サイトに投稿することが可能になるらしい。


 メインだけだと配信上の映像を短くするだけに近いが、サブカメラで別に角度からの映像があれば、思わぬ視点からの映像が出来上がるという訳だ。


(要するに切り抜き動画が作れるようになる訳だな)


 現在の俺の所有DPで考えれば、百万DPでも問題なく買える。


 なにせ中級ダンジョンのボス討伐や人類初の攻略などによる特典もあるので。


(でも俺が最終的に必要なのは二億DPなんだ。そのために必要な出費ならやるしかないか)


 ここで二億DPが貯まっているのならともかく、まだそこまで届いてはいないのだ。


 だったらここで購入を我慢して百万DPを節約するよりも、それを元手にもっと多くのDPを稼げるようにした方がいいだろう。


 幸い神サイトは動画編集未経験者でも問題ないように、ある程度まで精度の動画ならもとの映像さえあれば無料で作成してくれるらしい。


 凝ったものを依頼する場合はDPが掛かるらしいけど、それが必要になるかは無料のもので試してからでもいいだろう。


「よし、決めた。上級ダンジョンを攻略する際にサブカメラも解禁して、その動画を神サイトに出す」


 サブカメラが高いこともあってまだ誰もそれを扱った奴はいない。


 つまりこれもまた世界初の行いである。


 世間の話題を掻っ攫うネタは幾らあっても困ることはないのだ。


 目立てば目立つほど月初めの報酬が高くなることを考えれば、ここで躊躇するのは勿体ないというもの。


「最後の上級ダンジョン攻略は慎重にいこう。時間にはまだ余裕があるからな」


 下手に焦って死んでしまうことが最悪。


 上級ダンジョンで配信すれば、それだけで世界の誰も真似できないものになるので、DP稼ぎの面では十分なものになるだろうし。


 母の命を救うという目標の達成まであと少しのところまで来ているのだ。

 ここまできて失敗するなど絶対に許されるものではない。


 そう思って改めて登校時間まで次の配信計画を練ろうかとした時だった。


 ピンポーンという音がしたのは。


 信じられない思いで確認するが、それは間違いなく俺の家のチャイムが鳴ったことを示すようにインターホンが来客の存在を示している。


 だがこんな朝に誰がやってきたというのだろうか。


(万が一のことを考えて宅配だって頼まないようにしてるし、そもそもこんな朝っぱらに宅急便なんてあり得ないよな)


 宅配物を受け取る際に配達員にモノリスが見られるなんてバカなことはないのだから。


 背中を冷や汗が伝うのが分かる。まさか誰かアルバートの正体に気付かれたのか。


(何をミスった? どうすればいい?)

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