第37話 理不尽な強さ
通常のダンジョン配信者なら苦戦することが多い中級ダンジョンの魔物だったが、それでも規格外のステータスを持っている俺にとってはそこまで辛い相手ではなかった。
軍隊蟻以外の中ボスでも問題なし。
(『発火の魔眼』も効果的だが、それ以上に『呪いの魔眼』の威力が凄まじいな)
本来なら大半の虫系の魔物の弱点付ける『発火の魔眼』の方がこのインセクトダンジョンにおいては有用のはずだった。
だが現実は全く異なっている。
なにせ『発火の魔眼』が中ボスを倒すのには数発必要なのに対して、『呪いの魔眼』」は通常の魔物だろうが中ボスだろうが関係なく一撃で終わりなので。
そうなっている理由は一つ。特級スキルである『呪怨超ボーナス』によって呪い系のスキルや攻撃の威力が大幅に強化されているからだ。
しかもモーフィアスの話では、スキル進化を経ていることで単なる特級スキルよりもその強化幅は圧倒的に大きいらしい。
そんな特級スキルによって超強化された上級スキルだからこそ、中級の魔物ではまともに耐えられない威力になっているのである。
(まさにチートだな)
他の地道に頑張っている人達からしたら卑怯を通り越して理不尽だろう。
俺としてもズルしているようで申し訳ない気持ちがない訳ではないが、だからと言ってそれを利用しないなんて選択肢はない。
ただ戦闘はそれでどうにかなっても、他のことで必要なスキルは幾つか出てきた。
それは先の見えない森の茂みから接近してくる敵の存在を感知するものだったり、特殊な花粉をばらまいて方向感覚を狂わせてくる中でも正しい方へと進めるようになるものだったり。
幸いにも期日までに必要な分を除いてもそれらのスキルを買えるDPはあるので、ここは必要経費と割り切ってそれらのスキルを入手している。
氏名 伊佐木 天架
レベル 7
HP 114
MP 111
STR 113
VIT 112
INT 116
AGI 112
DEX 110
LUC 116
保有スキル
特級スキル 『呪怨超ボーナス』『ボーナス超強化』『千変万化』
上級スキル 『魔眼移植』『呪いの魔眼』『発火の魔眼』『千里眼』
中級スキル 『鋼の心』『生命感知』『鷹の目』
下級スキル 『斬撃』『軽身』
ここまでの探索でレベルも7まで上がっているが、まあそれに付いては誤差でしかないだろう。
それよりも重要なのは新たに手に入れたスキルだ。
中級スキルの『生命感知』文字通り、範囲内の生命体の位置が分かるようになるというものだ。
虫も生物ではあるので、これで一定の距離までならほとんどの魔物の居場所が分かるようになる。
ただゾンビやゴーストなどのアンデッド系、ゴーレムなどの非生命系の魔物などには効果がないようなので、それを補うために『鷹の目』というスキルも買った。
この『鷹の目』は発動してから一定時間、上空から自分を見下ろすような視界を確保できるようになるというものだ。
上級スキルであり魔眼の一つでもある『千里眼』によって超長距離の遠視や透視が可能になったこともあって、それらを組み合わせれば死角のない上空からの監視が可能になる形である。
(まあ『千里眼』も発動中は常にMPを消費するから、そっちは緊急時とかにしか使えないけど)
少なくとも中級ダンジョンでは『生命感知』と『鷹の目』で十分過ぎた。
生い茂る木々や茂みの中に音も立てずに隠れていようが関係ない。
こちらの予想外の場所からの奇襲ならともかく、居場所が分かった敵は今の俺の相手ではなかったから。
それどころか、
「『千里眼』『呪いの魔眼』発動」
MP消費を考えずに全力を出せば、透視能力と組み合わせた『呪いの魔眼』が遠距離から致死の一撃をくらわせることも可能だった。
とある木の上、巨大な巣の中で敵が来るのを待っていた殺人蜂の群れは、自身がどんな攻撃に晒されたのかも分からず、敵が来たことも分からない遠距離から一瞬で呪い殺され殲滅される。
(俺も呪怨ダンジョンではあんな感じで死んでたんだよなあ)
実に理不尽極まりない攻撃だが有効ならばこれも使わない手はない。
その後も俺は三メートル超える体長を誇り、その身の丈に相応しい人間なんて簡単に両断できるだろう二つの鎌を巨体に見合わない技量を伴って縦横無尽に振り回してくる武士蟷螂。
鋼鉄のように硬度を誇る上に射出も可能な角を持つ剣角カブト。
ジャイアントコックローチという名の人間も容赦なく食そうとしてくる巨大なゴキブリなどの各種中ボスを着実に仕留めていく。
そうして他ではあり得ないほどのペースで順調にチェックポイントを踏破し、中級ダンジョン攻略を始めてから僅か一週間ほどでそのボスに挑戦できる条件を整えるまでになっていた。
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