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第35話 貢献度と運営の方針

「なあ、モーフィアス」

「なんだい?」

「よくよく考えたんだけどさ、俺に与えられた月頭のDPって多過ぎやしないか?」


 自室で明日の早朝配信に備えて早めにベッドに入った俺は疑問に思ったことを問いかけた。


 なお、その隣である部屋の中心付近には相変わらず呪怨ダンジョンのモノリスが浮いている。


(てか、これがあるせいで友人とかを家に入れることが出来ないんだよなあ)


 それまで別に家に招くことを拒んでいなかったのに、急に無理と言い出したことでまさか彼女が出来たのではないかと大学の友人などには疑われたものだ。


 まあそれも母が病気になったことで見舞いなど家を空けることが多くなったからと言って何とか誤魔化したが。


(てか俺、全然母さんの見舞いに行けてないな)


 母さんからは大学の講義やサークル活動などもあるだろうから無理に来ないで構わないと言われている。


 だけどそれでも同じようなことを言われている父や妹は頻繁に見舞っているのに対して、俺は月に一度か二度くらいしか顔を出していないのが現状である。


 言っておくが決して遊んでいる訳ではない。早朝にはアルバートしてダンジョン配信をして、その後は大学の講義。


 放課後にはダンジョンサークルで情報収集をすることもあれば、再度アルバートに化けて別の配信を行なうなどして、夜は今後の配信の計画を練るなどしているのだから。


 もっともそれを教えられない以上、事情を知らない妹などからしたら信じられない薄情者と怒りを買っているみたいだが。


 ここ最近、母の調子が良くないから予定を開けて見舞いに来るようにというメールからもそれは伝わってくる。


(悪いとは思うけど全ては母さんを助けるためなんだ。許してくれ)


 仮に俺の目論見が成功して母さんが助かっても、それを教えられないのなら恨まれたままかもしれない。


 でも、それでも家族の命が助かるなら構わない。


「DPが多いって話だね。確かにそうだろうけど、それは君の貢献度が他とは比較にならないからさ」


 そんな思考はモーフィアスからの返答で途切れた。


「貢献度? 配信の視聴者数とかじゃなくて?」

「勿論、視聴者数も関係ない訳ではないよ。ふむ、ちょっと待ってほしい……よし、許可がでたからその辺りに事もそろそろ話そうか」


 何かを確認したらしいモーフィアスはそのまま話を続ける。


「前にも言ったが、我々運営は現在のダンジョン配信の状況に納得がいっていない。もっと盛り上がってほしいし、配信者の数も増えてほしいと思っているのは君も知っての通りだろう。だけど現実世界への直接的な干渉が出来ない我々ではそれを促すにも限度がある」


 欲望を刺激する報酬で釣ろうにも、それを独占しようと画策する勢力が多く現れてしまったことなど、思ったのと違う方向になってしまったことも多々あるとのこと。


「そこで我々は新たに評価する項目を増やした。それはどれだけダンジョン配信を盛り上げて広めるか。言い換えればどれだけ世間に注目されているか、とも言えるね」

「世間からの注目度、か」


 確かにそれで言えば、俺というかアルバートは他の追随を許さないかもしれない。


 あまりの人気の過熱具合に世界各国のニュースで取り上げられたりもしているようだし。


「その点で言えば君はぶっちり切りの一位だ。アルバートとなった君はその活躍っぷりで多くの視聴者を魅了している。それによってそれまでダンジョン配信に興味がなかった層も取り込むことに成功しているし、君を目標として新たなダンジョン配信者になった者もかなりいるからね」


 運営としてはそうやってダンジョン配信という一大コンテンツ、そしてその界隈を大いに盛り上げてくれた、それに対するお礼的なものもあの七千万DPに多く含まれているらしい。


 それは嬉しい事ではあるが、同時に気を付けなければならない事でもあった。


「それってつまり、ダンジョン配信の盛り上がりというか拡大的なものが頭打ちになれば、次からあそこまでの報酬も与えられないってことか?」

「それはそうだね。でも安心していいよ。少なくともアルバートという男によって生まれたこの熱は数ヶ月程度では冷めることはない。我々の未来予測でも、年単位でダンジョン配信は広がり続けると出ているからね」


(そうか、こいつらは母さんの死期が分かるみたいにある程度の未来が分かるのか)


 それであれば大丈夫か。


 でもそういった貢献度でも報酬が決まるなら、仮に俺のような運営に導かれた存在 俺はが他にも現れたらどうなるだろうか?


 俺は自分だけが特別だなんて自惚れてはいない。


 きっと俺以外にもそういう存在がこの先、現れるだろうと睨んでいた。


(相乗効果で更に界隈が盛り上がってくれればいいけど、潰し合う形になって報酬を山分けになったら二分の一以下になるってこともあり得るのか?)


 月に七千万も稼げるからある程度の余裕はあると思っていたが、やはり油断は禁物のようだ。


 それこそ何が起きてもいいように期日よりも早く、出来れば来月の報酬が振り込まれる前に目的を達してしまった方がいいだろう。


(俺にこんな数奇な運命が訪れたように、人生何が起こるか分からないんだ。こちらの想定外な何かが起こる前に勝負を決めてしまうに限る)


 少なくとも最優先目標である家族の命を救うことができれば俺の勝ちだ。


 その後に生じるだろう問題については、その時になってから考えればいい。


 というか今はそんなことまで気にしていられないのである。


 だがその俺の考えに反するかのように、想定外の事態が翌日の配信前のアルバートに対して舞い込んでくることになるのだった。

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