第31話 基本七属性と上位属性
ダンジョンではステータスやスキルなどがあることからも分かるかもしれないが、どこかゲーム的な要素が多分に含まれている傾向にある。
その内の一つに属性と呼ばれるものがあり、これはダンジョンを攻略する上で非常に重要な要素となっていた。
まず基本属性だが、これは火、水、風、土、光、闇、無の全部で七つとなっている。
そしてダンジョン内の攻撃や魔物などは全てこの属性で分類することが可能となっていた。
俺の持つスキルで言えば、『発火の魔眼』の攻撃は火属性の攻撃となり、『呪いの魔眼』の攻撃は闇属性の攻撃となる感じである。
なお『斬撃』やスキルを使わない攻撃は属性武器などを使用しない限りは無属性となる。
また魔物にも得意となる属性や苦手な属性はそれぞれ設定されており、先ほども述べた通り虫系の魔物は土属性に強い代わりに火属性の攻撃に弱い奴が多いといった感じだ。
(だからこれが有効っと)
『発火の魔眼』
目の前いる身の丈ほどの大きさを持つ兵隊蟻に魔眼を向けてスキルを発動する。
すると一定のMPを消費して効果を発揮した『発火の魔眼』によって敵の身体に纏わりつくように火が発生して、圧倒的なステータスのおかげもあってあっという間にその火が敵を吞み込み焼き尽くす。
複数体いようが関係ない。
スキルによって発生した大抵の攻撃は術者によってある程度の操作が可能なこともあり、迸る火は狙い過つことなく敵へと到達するのだから。
(一撃か。物理攻撃だと数発必要だったことから考えると、やっぱり弱点を突くのは有効なんだな)
兵隊蟻が土と無属性に多少の耐性を持っていることも影響しているのだろう。
このように強い魔物になればなるほど耐性が増えていく傾向にあるので、ダンジョンを攻略するためには単にステータスだけ上げればいい訳ではないのである。
上級ダンジョンからは耐性ではなく無効という特定の属性が全く効かない個体も現れるとのことだし、攻撃手段は幾らあっても困るものではない。
というかないと攻略できなくなるのだった。
「ふう、順調だな」
インセクトダンジョンは広大な森の中心を目指して進んでいく形で攻略するダンジョンだ。
ただし真っすぐ中心に行けば良い訳ではない。
何故なら森の中心は結界で守られており、それを通過するためには森の各所ある封印の要石というもの全てに触れなければならないからだ。
要するにチェックポイントを全て網羅しないとボス部屋までいけない仕様なのである。
だがそれは言うほど簡単ではない。
なにせ鬱蒼と木々が生い茂る森の中には敵であるダンジョン配信者を狙う虫が大量に潜んでおり、自らのテリトリーに近づく相手に容赦なく襲い掛かってくるのだから。
視界の悪い中の奇襲を受けることが多いので、思わぬ痛手を負う配信者も少なくないと聞く。
更に厄介なことに大半のチェックポイントにはそれを番人。
つまりは中ボスが配置されており、敵対者を排除するべく攻撃を仕掛けてくる。目の前にいる軍隊蟻の群れもその内の一つだった。
兵隊蟻よりも大きく頑丈そうな装甲で全身を覆われた巨大な蟻の魔物の群れは敵である俺の存在に気付くと、一斉に襲い掛かってくる。
「それではもう一度『発火の魔眼』を使います」
今度は視聴者にも分かり易ように宣言してからスキルを使用して、その巨体が殺到する前に俺は先ほどと同じように火属性の攻撃を仕掛ける。
その巨体が殺到する前に俺は先ほどと同じように火属性の攻撃を仕掛ける。
だが今度は一撃で敵が燃え尽きるということはなかった。
それどころかそれほど効いていないようである。
「やっぱり前情報通り軍隊蟻には火属性に対する耐性があるみたいですね」
土及び火属性に強い耐性を持つからこそ、俺の『発火の魔眼』の効果が薄い訳である。
それが分かっているのなら火と土以外の属性で攻撃すればいいと思うだろう。
それはこの場においては何も間違ってはいない。
だが上になるとそれが通用しない敵も出てくるのだ。
なにせ基本の七属性全てに耐性どころか無効化するような個体もいるとのことなので。
無属性まで無効化する、それは物理攻撃ですら効かないということである。
そんな敵に対してどう攻撃を通すかと聞かれれば、それには上位属性による攻撃が必要となるのだ。
上位属性。それは各属性に存在する。
例えば火属性には焔属性、炎熱属性などといった様々な種類の上位属性が存在しているのだ。
水属性なら氷属性、風属性なら雷属性、土属性なら草属性、光属性なら聖属性、闇属性なら呪属性、無属性には虚無属性といった風に。
そしてこれらの上位属性の攻撃は、それに対応した耐性がなければ防げない。
だから闇属性に幾ら強力な耐性があっても呪属性の攻撃は全く防ぐことは出来ない形だ。
(まあ魔物中には上位属性ですら耐性を持っている個体もいるらしいけど)
もっともそんなヤバイ奴は中級ダンジョンでは滅多に現れないので心配するだけ無駄だろう。
その問題は上級ダンジョン以上になった時に考えればいいようだし
そんなことを考えている内に『発火の魔眼』による攻撃を生き残った軍隊蟻の群れが近くまで迫って来ていた。
別にステータス的に襲われても死にはしないし、なんなら物理で刻めなくもない。
だけど今回は力試しと視聴者にアピールする目的もあるので、俺はあえて次のスキルを使用した。
『呪いの魔眼』
視認した対象に呪属性による攻撃を与えるもの。
しかも今回は呪い系統の攻撃なので特級スキルである『呪怨超ボーナス』による大幅な強化が上乗せされる。
その結果、軍隊蟻の群れは一瞬の内に呪い殺されたことでその肉体が煙のように消え去る。
恐らく何が起こったのかも分からなっただろう。
そのくらい一瞬だったのだ。
(うん、やっぱりこっちの方が特級スキルの上乗せがある分だけ強いな)
それこそこのレベル帯くらいならわざわざ弱点なんて突かなくても十分なくらいに。
消費するMPもほとんど変わらないようなので、今後は基本的にこちらを使用するとしよう。
そんな風に新しいスキルについて性能を確認しながら、俺は一つ目のチェックポイントの解放に成功するのだった。
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