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トールが花嫁

『登場 神様 & 巨人 紹介』



 ☆ ☆ ☆ ☆



〖アース神族〗


脳筋な、神々の一族。アスガルドに住む。



【オーディン】


アース神族の主神。隻眼(せきがん)。「グングニル」と言う槍を持つ。



【トール】


アース神族。オーディンの息子。脳筋な雷神。


「トールハンマー(ミョルニル)」を持つ。



【ヘイムダル】


アース神族。オーディンの息子。真面目で堅物な、光の神。


「ギャラルホルン」と言う角笛を持つ。



 ☆ ☆ ☆ ☆



〖ヴァン神族〗


文化的な、神々の一族。ヴァナヘイムに住む。



【フレイア】


ヴァン神族。愛と戦いの女神。色んな神や小人と寝るビッチ。


人質として、アース神族に引き渡される。



 ☆ ☆ ☆ ☆



〖巨人族〗


蛮族。ヨトゥンヘイムに住む。



【ロキ】


巨人族。オーディンと、義兄弟の契りを交わす。


狡猾なトリックスター。



【スリュム】


霜の巨人の王。

「アーッハッハッハ!


 トール、何、その格好!?()()しい!ヒァーッハッハ!」


「あ~もう!ロキ、笑い過ぎ!」



 ※ ※ ※ ※



「ハンマーを、失くしたぁ!?」


「うん」



アース神族の国・アスガルド、雷神トールの宮殿。


オレは、広い広い客間で、トールと向かい合っている。


コイツが『どうしても、ロキに相談したい事がある』って言うから、


出向いてやったら、開口一番、コレだ。


「いや、本当、何やってんの?


 お前のハンマーが無いと、アース神族の戦力、ガタ落ちだよね?


 今、巨人族が、アスガルドに攻めて来たら、どうすんの?」


「だって、昼寝して起きたら、もう無かったんだもん」


トールは、頬を膨らませて、ぶすっと(むく)れた。ガキか。


「盗んだ犯人に、心当たりは?」


「巨人だ!」


「え?」


「こんな事するのは、俺()の宿敵、巨人族に決まってる!」


「何、その、短絡的思考。ちょっと、落ち着k「ロキ!


 捜して来て!」


「は?」


巨人の国(ヨトゥンヘイム)に行って、俺のハンマー、捜して来てよ!」


「え?いやいや、何言っt「頼んだからね!」


「お前、何言ってんの?」


トールからの斜め上の無茶振りに、オレは頭がクラクラした。



 ※ ※ ※ ※



「ったく、何でオレが、アイツのハンマー、捜さなきゃいけないの?」



オレは、女神フレイアに(たか)の羽衣を借りて、鳥に姿を変え、


巨人の国・ヨトゥンヘイムへ飛び立った。


バサッ……


「よっ、と。ここが、その巨人の王のハウスね……」


『スリュム王』


門柱に、大きな表札が出ている。分かり易い。


♪ピンポーン


「すいませーん!」


ドン、ドン


流石は巨人の館、スケールが違う。


オレは、馬鹿デカい扉を、ガンガン叩く。


「スリュムさん、居ますかー?」


「はーい!」


奥から、ドスドスと、地響きに似た足音が聞こえた。従者だろう。



 ※ ※ ※ ※



「率直に()こう。トールのハンマーを盗んだの、アンタか?」



謁見(えっけん)の間に通されたオレは、巨人の王・スリュムを見上げ、問うた。


デケぇ。


「はい。ハンマー盗んだの、俺です」


「お前かよ!」


トールの予想、当たってたんかい。


「ソレ、トールのだから。返してくんない?」


「……抱きたいです」


「へ? トールを? ガチムチ趣味?」


「違います!


 ……女神フレイア様を、抱きたいんです。


 抱かせてくれたら、ハンマーを返します」


「はぁー!?」


そんなの、フレイアに、断られるに決まってんじゃん……。


オレは、足取り重く、アスガルドへの帰路に就いた。



 ※ ※ ※ ※



「はぁ!?嫌に決まってんでしょ!


 このアタシが、巨人に(とつ)ぐなんて!」



「だよねぇー……」


予想通り、フレイアは、話を聞くなり、いきり立った。


オレはこの話を、アース神族の(おさ)、オーディンに持って行く事にした。



 ※ ※ ※ ※



「……で、皆に集まって貰ったんだが」



アスガルド、オーディンの宮殿。


アース神族の、錚々(そうそう)たる顔触れが、一堂に会している。


「あの美しいフレイアを、卑しい巨人にやる等、有り得んぞ!」


「そうだ、そうだ!」


神々は、口々に、異議を申し立てた。


「静かに!」


オーディンが、ピシャリと言い放つ。


流石は(おさ)の貫禄、場は、波を打った様に静まり返った。


「あのー」


オーディンの息子の、ヘイムダルが、手を挙げた。


コイツは真面目で堅物で、オレとはどうも反りが合わない。


「僕に、提案が有ります」


「何だ?ヘイムダル。言ってみろ」


「はい、父上。


 フレイアの代わりに、 『トールが、花嫁に化ける』


 と言うのは、どうでしょう?」


「はァ!?」


「「「ファッ!!?」」」


ヘイムダルの一言に、場の空気が凍り付いた。


当のトールは、口をあんぐりと開けている。


「…………」


「……………………」


「プッ……フッ……ゥアーッハッハ!」


沈黙の後、オレは、堪らず吹き出した。


「ギャッハッハッハ!」


「プーッ、クスクス!」


それを皮切りに、会議場のあちこちで、爆笑の渦が巻き起こる。


「いや、ちょ、なぁ~んで俺が、花嫁にならなきゃなんない訳!?


 可笑(おか)しいでしょ!ねぇ、ヘイムダル?」


が、ヘイムダルの目は、至って真剣だ。


「……………………マジ?」


トールは、ごくり、と(つば)を飲んだ。



 ※ ※ ※ ※



「何度見ても、笑えるわ!ヒーッハッハッハ!」


「も~!笑わないで!」



侍女(じじょ)に化けたオレは、筋肉ムッキムキの花嫁と、巨人の国(ヨトゥンヘイム)へ向かった。


「巨人スリュムの前では、中身お前だってバレない様に、しおらしくしてるんだよ?」


「あい!」


(めか)し込んだトールが、元気良く手を挙げる。


本当に分かってんのかな、コイツ。



 ※ ※ ※ ※



「あたい、スリュム様に、嫁入りしに来ました。


 美と愛の申し子、フレイアでっす!」



「あぁ、フレイア様!抱きたk……お会いしたかったッス!」


巨人の王・スリュムの館。


スリュムは、目を潤ませて、中身トールの花嫁を見詰めている。


すっかり、(だま)されてんな。阿呆(アホ)だ、コイツ。


「ささ、フレイア様。長旅で、さぞや、お疲れでしょう。


 豪華なディナーを、ご用意してございますよ」


オレ達は、巨人の従者に、大広間に通された。


テーブルの上には、牛、山羊、鮭、酒……巨人の国(ヨトゥンヘイム)の恵みが、これでもか、と盛られている。


巨人達は、美しいフレイアを一目見ようと、ワラワラと集まって来た。


「おぉ……!」


「何と、(うるわ)しい……!」


揃いも揃って、騙されてやがる。やっぱ阿呆だわ、コイツ()


「いっただっきも~っす!」


ガツガツ、ムシャムシャ……


(お、おい……!)


オレが止める間も無く、巨人達の目の前で、


大食いトールは、牛を丸々1頭、鮭を8匹、ペロリと平らげた。


「ん~……美味いネ!女将(おかみ)を呼べ!」


満足気に、蜜酒もグビグビ煽っている。


「ぷっは~!くぅ~!」


ざわ……ざわ……


「………………!!」


広間の巨人達が、(ざわ)つき始めた。


スリュム王は、顔を真っ青にして、ドン引きしている。いかん!


「あぁぁあ!スリュム様、実はですね、


 フレイアは、貴方との婚礼に胸がドキドキしちゃって、


 8日も前から、食事も喉を通らなかったんですよぉ~。


 ねっ?フレイア!」


「あい!」


オレは、何とかその場を取り成した。


トールお前、空気読め!


「じゃあ、早速(さっそく)、フレイア様を抱かせt「の前に、


 花嫁に、祝いのトールハンマーを」


ハァハァと息を荒くするスリュムを、従者が(いさ)める。


花嫁 (トール) の膝の上に、ハンマーが置かれた。


今だ!


「ふんぬッ!」


ドガァァン!


トールは、スリュムの頭目掛け、思い切りハンマーを叩き込んだ。


巨大な頭蓋(ずがい)が、音を立てて、粉々に砕け散る。


「せいやッ!」


ドゴォォン!


「もいっちょ!」


ズドォォン!


ハンマーを手にしたトールは、手当たり次第に、広間の巨人共を駆逐して行く。


パーティームードだった結婚式場は、瞬く間に、阿鼻叫喚の地獄絵図へと豹変した。


「あーあ。


 一匹残らず、駆逐しやがった」


オレは、窮屈(きゅうくつ)だった侍女の衣装をバサリと脱ぎ捨て、


テーブルの端に残っていた麦酒(エール)のグラスを、クイ、と飲み干した。



 ※ ※ ※ ※



「いや~、暴れた、暴れた!」



アスガルドへの、帰り道。


トールは、自分の手に戻って来たハンマーを肩に担いで、ご満悦だ。


「いや、もう巨人の国(ヨトゥンヘイム)迄出向いて、皆殺しとか、ご免だからね?」


「あい!」


「本当に、分かってんの?お前」


「あいあい!」


「はぁー……」



その時、オレは、


後々、コイツと二人で、巨人の里・ウトガルドに乗り込んで、


てんやわんやの冒険をする羽目になるだなんて、


知る由も、無かったのだった――。

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