第8話 「ことば」の重さ
「中原さんの思う最高傑作ってなんですか?」
「昔の誰かが作ったルールなんてモンに縛られずに感情をリズムに乗せてぶつけりゃいい」
「でも、ルールがあるならそれは守った方がいいのではないですか?」
「──はぁ~。どいつもこいつもロクな奴がいないな」
中原中也にため息をつかれた。
どうも文豪のひとってクセがスゴイよな。こっちは普通の会話をしたいだけなのにそれが成立しない。
「“ことば”に軽いとか重いってありますか?」
「あん? なけりゃオレら詩や歌を詠む人間はいらなくなるだろ?」
「重い言葉ってどんなものですか?」
「うっせーな、そんくらい自分で考えろッ!」
怒られてしまった。しつこくしすぎたか? でもちゃんと質問しないと中途半端な状態でわかったつもりになっていると、失態をおかす確率が高くなってしまう。
──言葉の重さ、か。
言葉を選んで、たどたどしく話すひとに限って話す内容に説得力があったりする。
ペラペラしゃべっているひとは、たしかに頭が良さそうに見えるし、その話す内容は正しく思えてくる。だけど何かが足りないというのが頭の中に引っかかりがあるのはあるあるだ。
たしかに言葉には軽重があるような気はする。
よく考えて言葉を選んで書けばいいってこと?
ならもともとやっているから、なんら問題はないことになってしまう。
やっぱりよくわからないな……。
前に太宰さんに言われた「君の“ことば”はまるで砂粒みたいだ」なんて表現は「君の言葉は軽いな」って言ってくれた方がハッキリ伝わるし、そこに軽いとか重いとかって言葉の軽重があるとは思えない。
振り出しに戻ってしまった。
結局、文豪とまで称えられる3人に意見を求めても、解決できなかった。
しょうがない。もう一度プロットを作り直して、編集者が想像もできないような展開と癖の強いキャラを登場させてインパクトを狙ってみるか。