第1話 我、転生せしめる?
「アニメ化かぁ、ようやく声優さんに会えるぜ、でゅふふ!」
思えば長かった。
高校を卒業して、働きながら小説をコツコツと書き始めてはや10年経過していた。
新人賞に出しても、まったくかすりもしなかったのにウェブ小説投稿サイトにあげたらまたたく間に人気が出て、アニメ化が決定するところまでやってきた。
これでますます人気が出ることを確信した。なので自分へのご褒美として編集者とカフェ店で打ち合わせした帰りに寄ったラーメン屋さんで、トッピングをいつもより二つ多めに注文した。
最初から券売機で、替え玉を注文したのが間違いだった。
おなかがいっぱいで、歩くのもしんどい。
って、ウソォォ。
こういうのは小説の中だけにしてくれない?
不注意で赤信号を渡ったわけではない。
横断歩道でちゃんと信号待ちをしていたのに、暴走した車が歩道の中に突撃してきて、おなかいっぱいで動きの鈍ったオレだけが車にひかれた。
嘘だろ? 車にひかれるパターンは定番すぎて、どうせなら他のパターンがよかった。いやいやこんな時に考えることじゃないな。
ってか、なぜか意識がある。
横断歩道の信号機やそばのガードレールは暴走した車になぎ倒され、肝心のオレは〇△なくらい無惨な姿で横たわっていた。
これはやはりあれか? ここから異世界に転生して、特典ゲットしてスタートダッシュを決めるとか現代の知識を生かして無双したりとかのパターン。言っておくがライトノベルを10年も書いてきたんだ。凡作めいた世界じゃ納得しないぞ?
「エインヘリヤルよ、ヴァルハラへ招待します」
途端に空が七色に光り出す。まぶしくて見えないが、3人の天使のようなシルエットのものが現れた。
なるほどね。北欧神話をモチーフにした異世界か……まあ悪くない。ところでこの天使のような存在はやはり戦乙女ヴァルキリーに相違あるまい。
ガシっと両側からヴァルキリーに脇を掴まれる。けっこう大胆だなおい? ハーレム要素を含むパターンか? 奥手なオレにとってアクティブ肉食系女子はむしろ好ましい、優しくして欲しいが、激しいのでも文句は言うまい。
「行くぞオラぁ」
「ふぇ?」