その39 竜の気配
◇◇◇
「ミイナがいなくなっただと!?なぜ止めなかった!」
船に戻ったロイは、ミイナの姿が見えないことに対して、船員たちに声を荒げた。
「止める間もなく、いきなり凄い勢いで走り出して行ったんで……ミイナ?誰です、それ?いなくなったのは坊主ですぜ」
「ああもう!面倒くせぇ!いいか、あの子の名前はミイナ!れっきとした女だっ!あいつに何かあったらただじゃおかねぇぞ!」
言うなり、ミイナを追って走り出すロイ。ロイの慌てぶりに、船室に残った船員たちは、こそこそと顔を見合わせる。
「なぁ、あいつが女だってお前知ってた?」
「まぁなんとなく。男にしちゃ細すぎるしな」
「気付いてたなら俺にも教えろよ。ありゃ絶対船長の女だぜ?」
「ロリコンだったんだなぁ……おらぁてっきり男が好きなのかと思って、内心身の危険を感じてたんだが」
「馬鹿言うな。たとえ男好きでもてめぇは選ばねぇよ!」
「なんだと!」
「それよりどうする?俺達も探しにいくか?」
「そうだな。よし!手の空いてるものは手分けして探そうぜ!」
◇◇◇
(待ってろって行ったのに、なんだって突然……)
キョロキョロとミイナを探しながら、当てもなく街をさ迷うロイ。そのとき、通行人の声が耳に届いた。
「なんでも、アイリス王女を害して宝石を盗んだ犯人が捕まったとか」
「なんと、この国の王女殿下だったらしいぞ」
「恐ろしい女だな……」
ロイはヒソヒソと飛び交う噂話に足を止めた。
(まさかっ、ミイナか!?)
「それで、ラナード王子の代わりに、今日処刑されるらしいぞ」
ロイはつかつかと通行人に近付くと、いきなりその男の胸ぐらを掴んだ。
「おい……」
殺される。ロイの怒り狂った目を見た瞬間、男は死を悟った。
「……お、お助け下さい……お金なら全部差し上げますから……」
「今の話、本当か?」
男は、震えながらコクコクと頷く。
「は、はいっ!本当です!今、王城前大広場の前にいます!」
「クソっ!」
ロイは男を放り出すと、真っ直ぐに広場に向かって駆け出した。
「こぇぇぇ……なんなんだよ一体……」
◇◇◇
「おい!こっち!」
広場に着いた所で、建物の物陰からキースとリュカが手招きする。足元にはボコボコに殴られた衛兵たちが転がっていた。
「こいつらは?」
「お嬢さんを拘束して怪我をさせた奴らだ。殺していいぞ?」
キースが衛兵の背中をギリッと足で踏みつけると、グエッと情けない声が響く。
「そうか。死ね」
ロイがバキバキと指を鳴らした瞬間、衛兵たちも死を覚悟した。なぜ、こんな目に。そもそもこいつらは何者なんだ……。
そこにリュカが割って入る。
「まぁまぁ、今はそれよりもお嬢さんを救い出すほうが先でしょう」
リュカの言葉にロイは二人を睨みつける。
「チッ!お前らが付いていながらなぜミイナがこんな目にあってるんだっ!」
広間の人だかりの前では、ミイナが口から血を流し、力なく木の柱に括り付けられている。その姿を見た瞬間、ざわりとロイの空気が変わる。
「あいつら……殺してやる……」
ざわざわと鱗に覆われる頬。金の目がギラリと光る。
「さっきから様子がおかしいんだ」
キースがポツリと呟く。
「怖くて、近寄れねぇ」
狼獣人のキースは、喜んで戦場に飛び込むような血気盛んな男なのに、珍しく尻尾を丸めている。
「私もです。本能で近寄れません。だからこうして隊長を待ってたんです」
「怖い……?」
ロイはもう一度ミイナを見つめる。その瞬間、ミイナの足元に火が投げまれた。唸りを上げて燃え盛る炎。一瞬のうちに、ミイナの姿が炎に包まれる。
「ミイナーーーーーー!!!!!」
















