その36 二人の王女
◇◇◇
「アイリスを連れてくるから、少し待っていてくれるか?」
フィリクスはそう言うと部屋を出ていった。
(わざわざ竜王自ら迎えに行くなんて、アイリス王女はこの国でとても大切に扱われているのね)
静かにお茶を飲みながら待つミイナ。
しかし、すぐに両手にアイリス王女を抱えて帰ってきたフィリクスを見て、思わずお茶を吹き出しそうになる。
「アイリス、紹介しよう。こちらは前竜王の娘のミイナ。ミイナ、私のアイリスだ」
にこにこしながらアイリスを紹介するフィリクス。だが、腕の中のアイリスは完全に戸惑っていた。
「一応、宰相を務めているダイアンだ」
「ロイだ。体調が万全じゃないのに、ミイナのために呼び立ててすまない」
アイリスは戸惑いつつ、ペコリと頭を下げた。フィリクスは当然のように、横抱きにしたアイリスとともに、ゆったりしたソファーに座る。真っ赤になって俯くアイリス。
その様子を見て、ミイナはフィリクスの暴走ぶりを察した。
(これ絶対本人の許可取ってないやつだわ……)
羞恥心で死にそうになっているアイリスのために、なるべく目を合わせないようにする。
「あの、今回私がお願いしたいのは、アイリス王女にドラード国王が贈った宝石を、返してもらえないかってことなんです」
いきなりの不躾なお願いにも関わらず、ミイナの説明を真剣に聞くアイリス。
「ミイナに宝石を渡してくれるか?」
と言うフィリクスの問いにも、コクコクと一生懸命頷いて同意をしてくれた。
「くっ、私の番が可愛いくて辛い!」
アイリスの幼子のような愛らしい仕草に、思わずハートを撃ち抜かれるフィリクス。そんな二人に誰もが生暖かい視線を送っていた。
◇◇◇
宝石を受け取り、急いでロイの船に乗り込むミイナ。
「いきなり宝石を持って行くより、アルファンド王国の正式な使者として、二人ともきちんと正装したほうが良いんじゃないか?」
というフィリクスの提案で、ロイの軍服と、ミイナが着るためのドレスや宝飾品なども次々に船に運び込まれた。
「現地にはすでにキースとリュカが行ってるから、できたら合流してくれ」
「分かった」
帆を上げ進み出す船。船は一路ドラード国に向かう。
「ところで、船に乗るより、お前が竜体になって送ってやったら良かったんじゃないか?」
フィリクスの言葉にダイアンは溜息をつく。
「いきなり竜がやって来たら話し合いどころじゃないだろ。下手すりゃ民衆がパニックになって死者が出るぞ」
「……アイリスは私を見て綺麗だと言ってくれたが」
「番だからだろ」
「なるほどな!さすがアイリスだっ!」
「だが、ミイナに何かあったらいつでも飛んでいってやるさ。大事な妹分だからな」
ダイアンの言葉を肯定するように、フィリクスは軽く肩を叩く。
「まぁ、ロイが付いてるんだ。大丈夫だろう」
「そうだな」
















