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海に捨てられた王女と恋をしたい竜王  作者: しましまにゃんこ


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35/45

その35 母の形見

 

 ◇◇◇


「ようするに君の話をまとめると、アイリスの護送責任者だった王子が君の兄で、その事故でアイリスが亡くなったと勘違いしたドラード国王が、怒って兄を処刑しようとしてるから、アイリスが身に付けていたドラード国の国宝である宝石を渡して父王に直接命乞いする……これであっているか?」


 ミイナから話を聞いたあと、ざっくり要点を整理するフィリクス。ミイナがドラード国の王女だと知り、怒りに任せて滅ぼさなくて良かったと胸を撫で下ろす。


 一方ミイナは、いつ兄が処刑されるか分からないと、気が気ではなかった。


「はい。父が勅令を出したんです。アイリス王女が身に付けていたブルーダイヤの首飾りは、二つとない貴重な宝で、持ち帰った者にはどんな願いも叶えると。私はこれに賭けることにしました」  


 一縷の望みに掛けて、ようやく見付けたのだ。このままおめおめと帰るわけにはいかない。


「なるほどな。もちろん、宝石は元々ドラード国のものだし、返還することになんの異論もない。だが、その首飾りを持っていったところで、ドラード国王が本当に願いを叶えてくれるかどうかは、正直怪しいと思うが……」


「それでも!兄にはもう残された時間がないんです!」


「……当時船に乗っていたものは全員処刑されたらしいな」


 ダイアンの言葉にミイナは震える手を握りしめ、こくりと頷く。


「私にとって、兄はたった一人の家族と呼べる存在なんです」


「う〜ん……どうしたものか……」 


 考え込むフィリクス。アイリスもドラード国のことを酷く気にしていたから、ニーナの提案はフィリクスにとっても悪くない。


「ドラード国に戻っても、アイリス王女が生きていることは、誰にも言いません。お願いします」


「まぁ、アイリス王女が生きてることを知ったとして、ドラード国にできることは何もないと思うが」


 ダイアンはチラリとフィリクスに視線を送る。ドラード国の王女を前にして、一見温厚そうに見えるあの男が、国王がムカついたのでつい最近国ごと滅ぼそうとしていたとはさすがに言い辛い。竜人族にとって、人族の王など、正直脅威でもなんでも無いのだが……


「それより心配なのは、ミイナ。君だ」 


「私、ですか?」


「ああ。護衛もつけずに変装のために髪の毛まで切って。たった一人でここまで来たんだろう?普通、一国の王女がやるようなことじゃない。……ドラード国での君の立場はどうなってるんだ?」


 ダイアンの言葉にミイナは自嘲気味に微笑む。


「私は、王女とは名ばかりの、誰からも顧みられない、忘れられた存在でしたから」


「私たちにとって、君はすでに大切な仲間だ。君の身に危険が及ぶようなことは承諾できない。我が国から正式に使節団を送るのはどうだ?宝石の返還と同時に、アイリス王女との婚約破棄に対する賠償を支払うといえば、君のお兄さんの罪も軽くなるのでは?」


 落ち着いて最善策を提案するフィリクス。ダイアンもその案に同意する。だが、アイリスは小さく首を振った。


「……多分、父はその提案を聞き入れてくれないでしょう。アイリス王女に並々ならない執着を持っていますから。今、アイリス王女が生きていることを知ったら、かえって頑なな態度をとると思います。それよりも、願いを一つだけ叶えるという言葉を信じて、兄の命だけ助けてくれるように頼んだほうが、兄が助かる可能性があると思うんです」


 フィリクスとダイアンは顔を見合わせて小さく頷いた。  


「そこまで考えてのことなら、仕方ないな。分かった。でも、こちらとしても、護衛をつけるのは譲れない」


 その言葉にすぐにロイが反応する。


「俺が行こう。ちょうど船もあるしな。準備ができ次第、すぐに出港可能だ」


「ロイさん、いいんですか?」


「言っただろう?帰りも送ってやるって」


「ありがとうございます!」  


 ホッと胸を撫で下ろすミイナ。


「ダイアン、あの日アイリスが身に付けていた装飾品を全て持ってきてくれ」


「分かった」


 ◇◇◇


 並べられた色とりどりの宝石は、どれもとても立派な物だった。今まで迎えた側室の中で、これほど豪華な装飾品を贈られたのはアイリスだけだろう。国王のアイリスに対する執着をあらためて感じるミイナ。


 安っぽい真珠のネックレス一つしか持っていなかった自分とは大違いだ。しかもそれは、父王から与えられたものではなく、海で拾ったものだった。


 煌めく宝石の中でも、一際目を引く首飾りを手にする。深い海の青。見たこともないほど大きなブルーダイヤ。


「これで、間違いないと思います」


 横から見ていたロイが、小さく呟いた。


「そのダイヤ、俺がジェニファーに渡したやつだ」


「えっ?」


「間違いない。気に入っていつも付けてくれてたのを覚えてるから」


「そう言えば、ジェニファーがでかいブルーダイヤを付けていたのを見たことがあるな」


「そうだな。どこかで見たことがあると思った」


 口々に同意するフィリクスとダイアン。


「お母様の……」


「確かにそれには、一国を買えるほどの価値があるだろうな。俺たちでも中々お目にかかれない代物だ。本当に、ドラード国王に渡してもいいのか?」


「……元々、私のものではありませんから」


 ニーナは小さな声で応える。


「……一応、アイリスにも説明してからでいいか?」


「あ、はい!もちろんです!」


(アイリス王女。一体どんな人だろう……)


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