その16 アルファンド王国へ
◇◇◇
「船長はアルファンド王国に行ったことがありますか?」
船でいつものように船員たちと食事を済ませたあと、ミイナはロイに尋ねてみることにした。あちこちの国を渡る商船の船長なら、アルファンド王国にも行ったことがあるかもしれない。
「ああ、もちろん。今はドラード国からの積み荷を引き受けているが、俺たちは元々アルファンド王国を拠点にしてる」
「本当ですか!俺、できればアルファンド王国に行ってみたいと思ってるんです。実は俺の親せきがいるって姉さんから聞いて。海に出る機会なんてそんなにないから、近いなら一度行ってみたいなって」
アルファンド王国に行けば、アイリス王女の手がかりが何かつかめるかもしれない。こうしているうちにも、ラナードの処刑が決まるかもしれないのだ。雲をつかむような話かもしれないが、今はそのわずかな希望に掛けるしかなかった。
「……そうか。ここからならそれほど遠くない。船で一日ほどだ。丁度仕入れたい品物があるから、一度アルファンド王国に寄ってからドラード国に戻るか?」
「え!?いいんですか!?」
「ああ、ついでだからな」
「やった!ありがとうございます船長」
(どうやって行こうかと思ってたけど、助かったわ!)
弾んだ足取りで去っていくミイナの後姿をじっと見つめるロイ。そこへ、すでに酒をたらふく飲んで騒いでいた船員が、酒瓶を片手に話しかけてくる。
「船長~、これからアルファンド王国に向かうんですかい?」
「ああ。急に悪いな」
「いやいや、あっしらは大歓迎でさ。アスタリアで美味いもんでも食べようと思ったけど、王女様が亡くなったとかで、どうにも街の雰囲気が暗くていけねえ。その点アルファンド王国は酒も料理も極上だ。街の連中も気のいい奴らばかりだし、久しぶりに羽を伸ばせるってもんでさ。どうです?アルファンド王国に着いたら、船長もたまには俺たちと一緒に街に繰り出しましょうや!」
「まあ、気が向いたらな」
「約束ですよ~。お~いお前ら!次はアルファンド王国に行くぞ~!」
「お~!やった~!」
「待ってました~!」
ピーピーと口笛を吹いて喜ぶ船員たちに「明日出発するからほどほどにしとけよ」と声を掛けると、自室に向かう。
(さてと。今日はアイツどこで寝てるんだ)
ミイナが船に乗ってきた初日からロイは自分の船室の隣の部屋を空けてやっているが、使っている様子がない。気配を辿ると、貨物室の隅っこで丸くなって寝ているミイナを見つけた。
「おい、こんなとこで寝てたのか?空いている船室を使えといっただろ」
「ん?船長?俺みたいな下っ端がそんな立派な部屋使えませんよ……」
「いいんだよ。お前がそこらへんで寝てると、俺が気になって眠れないからな」
「ん~、えへへ。船長は本当に、優しいなあ……」
むにゃむにゃと寝ぼけるミイナをロイはひょいっと抱き上げると、そのまま隣の船室に運ぶ。これが、ミイナが船に乗っている間のロイの日課になりつつあった。
「ほら、布団かけるぞ。足出せ。靴脱がせるからな」
てきぱきとミイナの世話を焼くロイ。
「ん~……」
寝つきのいいミイナは、ゴロンと寝返りを打つとそのまますやすやと寝入ってしまう。
「おやすみ。ミイナ」
















