その14 赤竜の娘
◇◇◇
「でも見ない顔だよな」
「この見事な赤髪から言って、赤竜の家系でしょうかねえ」
「竜……何を言って……」
二人の言葉に混乱するミイナ。
「おや、もしかしてお嬢さんには自覚がない?となると、竜の本能にまだ目覚めてないってことですね」
「親父さんかお袋さんに自分の出自を教わらなかったのか?」
「私の両親は人族です!変なこと言わないでください!」
叫ぶミイナを困ったように見つめる二人。
「どうする?間違い無く竜人族だぜ?もしかしてこの子、先祖返りやはぐれ竜なんじゃねえの?」
「これは、竜王様にお知らせしたほうが良いかもしれませんね」
コソコソと話し合う二人をイライラとしながら見つめるミイナ。獣人族を見るのは初めてだが、訳が分からない。ミイナの母は異国の踊り子だったが、父はドラード国王だ。どちらも竜の血を引いているなど、聞いたこともない。
「ああごめん。混乱させたいわけじゃなかったんだ。……もしよかったら、俺たちと一緒にアルファンド王国にこないか?」
「アルファンド王国……」
「聞いたことぐらいあるだろ?」
「竜人族が治める国……ですよね」
ドラード国は海に散らばる国々の中でひときわ大きな島国であり、海洋王国の覇者となった。しかし、アルファンド王国は、海の向こうにある大陸全土を統べる国だ。人族しかいない島国に比べて、見たことのない種族も数多住んでいると聞く。
「そうそう。君は間違いなく竜人族の血を引いている。俺たちにはわかるんだ。竜人族は希少種でね。見つけたら手厚く保護することになっているんだ」
「……私、大切な用事があるので、失礼します」
「大切な用事?それが終わればいいのか?良ければ手伝うぜ」
「よろしければ同行しますよ」
「しつこいです!助けてくれたことは感謝しますが、私のことはほっといてください!」
ミイナはその場を走って逃げだした。
(なんなの、あの人たち。いきなり人を竜だなんて。訳が分からない……そんなはずあるわけ……)
誰にも似ていない容姿。見目麗しい王子や王女たちの中で、本当に王の子かと浴びせられる嘲笑の数々。異国の踊り子で、その輝くばかりの美しさを王から見初められ、愛妾となった母。その母にすら、ミイナは少しも似ていない。
「よお、そんなに急いでどうしたんだ?」
「船長!あ、今ちょっと、変な人たちに絡まれちゃって……」
「兵士たちがうろうろしてて物騒だからな。荷物それだけか?じゃ、いくか」
「はいっ!」
(考えちゃダメ。今は兄様を救うことだけ考えなきゃ)
◇◇◇
「あ~あ。どうする?」
「う~ん。ちょっと性急過ぎましたかねえ」
「まあ、とりあえず宰相様に報告しとくか」
「そうですね。アスタリアで欲しい情報はすでに手に入りましたし。それに……思わぬ人物にも会えましたしね」
















