私の妹は世界一可愛い
なぜこんな事になっているのか…。
ヘーゼル男爵令嬢であるリオナは困惑気味。
その妹であるミラノは目の前の男の子を見つめて目をウルウルとさせている。
目の前にいるのはこの国フェルメス王国の第3王子であるショーン王子。
ショーン王子様はこともあろうかミラノに一目惚れしたらしく。
その勢いでプロポーズしたらしい。
まだ10歳の王子様なのに凛々しく可愛らしく頬を染めて
「ミラノ、私の婚約者となってほしい。」
とミラノの前で跪き、ミラノ手の甲にキスをしたらしい。
ミラノは何が起こったのかわからずに私の元へと目に一杯の涙をためてウルウルした瞳で私を見てどうして良いかわからずにしがみついている。
それを追いかけてきたショーン第3王子様に事の次第をきいたばかりだ。
男爵令嬢に第3王子がプロポーズ…。
あまりにも身分が違いすぎてミラノも青ざめてしまったんだと思う。
「あなたはミラノ嬢の姉のリオナ嬢ですか?」
「はい。お目にかかれて光栄です。ヘーゼル男爵家リオナと申します。」
「兄からあなたの話は良く聞いております。学園の成績もよく、素晴らしい方だと毎日のように父上に話されております。」
あのクソ王子…。
いえ…失礼…。
淑女らしからぬ言葉遣いを…。
「姉妹揃って美しく、頭の回転も早い。先程のミラノ嬢の頭の回転の速さに驚きました。私が粗相をして他国の王族の方に失礼をして慌ていたところをその国の言葉を使いそして私をフォローしてくれた。まだ10歳と同じ年なのにその素晴らしさに感動しました。」
そうでしょうそうでしょう。
ミラノは本当に素晴らしいし、可愛いんです。
頭も良いし、もう何カ国語も話せるし、吸収が早くて教えるのも楽しい。
そこに
「今日も麗しい我が姫。」
そう言うのはこの国の第2王子であるレオリオ王子。
王子様なのだからもっと身分の近いご令嬢にと何度も言っているのに聞く耳をもたない。
「レオリオ第2王子殿下にご挨拶申し上げます。」
私は淑女の礼をとり挨拶をすると
「そんな他人行儀な。」
なぜ王子達は私達姉妹に絡むのか…。
他のご令嬢達の視線が痛いんですが…。
そんな私を見ていたミラノは私が困っていると思っていたのか
「第2王子殿下様にご挨拶申し上げます。リオナの妹のミラノ・ヘーゼルでございます。お目にかかれて光栄でございます。」
まぁ。
完璧なカテーシ。
可愛い。
私の天使。
そんなミラノの見とれていたら
「ご無礼を承知の上申し上げます。第2王子殿下様、お姉様は私の認めた方でないと婚姻はいたしません。なぜなら私がお姉様を大好きだからです。私はお姉様を幸せにしてくれると安心できる方しか認めません。勿論お姉様はこれから男爵家を継ぐ身ですので…。」
「あ…ミラノ嬢そこ訂正ね。男爵家ではなく侯爵家となる。」
「「え?」」
私とミラノは同時に声を上げていた。
「君達の父上であるヘーゼル男爵が隣国との交渉に多大なる功績をあげてくれたんだよ。それに男爵は真面目にコツコツと領地改革をして成果をあげている。だからこの度めでたく侯爵位を与えることになったんだ。」
「お姉様!」
「ミラノ!」
私達は抱き合ってお父様の出世を喜んだ。
「だから、身分的には申し分なくなったよ。リオナ。」
そう得意気にいうレオリオ第2王子殿下。
「殿下、からかうのもいいかげんにしてください。殿下の周りにはあんなに美しく淑女教育が完璧な方たちがたくさんいるんではないですか!」
「何度も言ってるだろ?リオナほど勤勉で成績も優秀で何カ国語も会話ができるご令嬢はいないと。私は兄上の補佐で外国を飛び回ることになる。その時にリオナがそばにいてくれたらこれほど心強いことはないと。」
「侯爵家は私とミラノとで継ぎますのでどうぞレオナ嬢は兄上が公爵家へと臣籍降下される際にご一緒に嫁入りしてください。」
ショーン王子はいつの間にかミラノの隣にきて
「私はこれから領地経営を学びますのでミラノは安心して良いよ。これからは君のお父上に色々教えてもらいにお屋敷にもいくからその時に会えるね。」
にっこり太陽のような笑顔を向けるショーン王子。
純粋で真っ直ぐにミラノを慈しみこれからの事が楽しみで仕方ないというような顔をしている。
「私も兄上を助けられるように諸外国へ回ろうと思う。リオナ、成長する私をそばで見ていてくれないだろうか。きっと君の心を振り向かせてみせるから。」
レオリオ王子が目を細め蕩けるような眼差しで私を見てそう言う。
甘い笑顔に頬が熱くなる。
ダメダメ。
簡単にほだされちゃ。
私が学園入ってすぐの試験で1位を取ったときから私の周りをウロチョロするようになった。
周りが呆れるほどに。
はじめは他の上位貴族の令嬢からの嫌がらせや痛い視線があったけどやがては可哀想なものを見る目に変わっていった。
ほとんどストーカーだしね。
弟も同系列だとは。
小さな犬のようにミラノの周りをウロチョロして可愛い笑顔を振りまいている。
ミラノは赤くなったり、怒ったり、ため息をついたり。
ただそのどれもが可愛い。
クルクル変わる表情に見とれていると
『リオナ嬢。お久しぶりです。』
隣国タニアの言葉で話しかけられた。
『あら。ミシェル様お久しぶりです。それにスーザン様も変わりなくお美しいです。』
ミシェル様とスーザン様は隣国のタニアの王族の方である。
第2王子様とその婚約者である。
『何をおっしゃってるの。リオナ様のほうが相変わらずお美しいわ。あらあの可愛い天使はショーン王子様になつかれたのね。どこかの誰かと一緒ね。』
そう言ってふふと笑うスーザン様。
『ミラノの事、ご存知なのですか?』
『ミラノ?』
『私の妹ですの。』
『あぁ。なら納得だ。タニア語を理解して、ショーン王子のフォローをしてくれて、あんな小さな子が素晴らしいと思ったよ。私の一番下の弟の妻にとも思ったがそうもいかないようだね。』
笑ってそう言うミシェル様。
でも、目は本気だったと言っていた。
『申し訳ありませんがミラノの相手は私がきっちり選ばせていただきます。あの子が心の底から信頼できて愛せる方をと思っておりますので。』
『私を除け者にしないでもらいたいのだが。』
隣にいたレオリオ王子がそう言う。
『いや。まだ我が国の言葉もわからないのかと思っていたよ。』
ミシェル様がそう言うと
『何年前の話を何度もするな。』
拗ねたようにそういうレオリオ王子にみんなで笑った。
『それよりあなた達まだ婚約しないの?婚約式の招待状が来ないわよ。』
なんて言い出すスーザン様。
『私はしたいんだがリオナが首を縦に振らない。』
『何度も申しますが爵位があわないので。』
『それももう解消するであろう。何も問題なくなったな。』
にやりと笑ってそういうミシェル様。
やはり食えない方だわ。
こちらの情報もちゃんと入ってるという事だしすごいわ。
『そろそろ諦めなさい。あなたが首を縦に振るまでレオリオ様はあなたにまとわりつくわよ。』
『いや。むしろ首を縦に振ったら余計にまとわりつくだろう。』
ミシェル様の言葉に
『それもそうね。ここまで溺愛してくれる方なんて今後出てこないわよ。それにリオナ様だって嫌ではないんでしょ?ただ頭でっかちのあなただから色々考えすぎて自分の気持ちに蓋をしてるんでしょ?頭が良いし世界の情勢にも詳しい。隣国の王族ともこうやって対等に話せる令嬢は早々いないわ。だからあとは2人でちゃんと話しなさい。』
『そうだな。2人でちゃんと逃げずに話せ。婚約式には絶対参加するから招待状送るように。』
二人は笑ってそう言いながら私達の前から他の方たちへ挨拶へといった。
気まずい。
「私の気持ちは嫌ではないのか?ただ爵位の問題だけだったのか?」
頬が熱くなる。
「そうか。リオナは頭がよく気遣いもできるからな。なぜ気づかなったのか…。他の上位令嬢をとよく言ってたのも王族は貴族との繋がりが重要だからな。何をするにしても。」
いきなり私の手を掴むと会場を出て王族専用のガーデンスペースへと連れて行かれた。
何度か誘われたけど断っていた場所だった。
でも、今日は断るどころか勝手に連れてこられた。
色とりどりの綺麗な花が咲き誇っていた。
丁寧に管理されている。
庭師たちの努力の結晶だ。
「リオナ。君の素直な気持ちを聞きたい。」
いつになく真っ直ぐな真剣な顔のレオリオ王子。
素直な気持ち。
「リオナ。」
そう言うと私の頬に触れる温かい大きな手。
レオリオ王子のほうを見ると男らしい真剣な顔のレオリオ王子にドキッとした。
頬が熱くなる。
私…。
そんな私を抱き寄せるとおでこにキスを落とす。
「私に抱きしめられキスされるのは嫌?」
私はレオリオ王子の腕の中で首を振る。
嫌じゃない。
そこにカサっと音がした。
慌てて離れて振り向くとショーン王子とミラノの立っていた。
ミラノは私に抱きついてくると
「お姉様は渡しません。」
そう言ってポロポロ涙を流して泣きだしてしまった。
私はそんなミラノを優しく抱きしめて
「私はずっとミラノのお姉様だよ。」
笑顔でそういうと私の天使を抱きしめた。
ぎゅっと抱きしめるミラノ。
「私の最大のライバルはミラノ嬢か。」
苦笑いをするレオリオ王子に
「兄上、ということは私の最大のライバルはこの完璧な女性であるリオナ嬢という事ですか…。」
「ショーンはまずは隣国の言葉をマスターしないとね。ヘーゼル家へ婿に入るなら最低でも5カ国はマスターしないと。国内有数の港を保有するヘーゼル男爵家は公爵家へと爵位が上がることによりより一層の他国への交渉力を強化しないとだからね。その点では我ら王族がヘーゼル家と深い縁を持つことは国としても大事なんだよ。」
「ミラノはまだまだこれから伸びますよ。まずはミラノが支えるに値する方へ成長していただからないと。」
「わかりました。必ず成し遂げてみせます。ミラノ待っていてくれ。私は必ず君に相応しい男になってみせる。」
そう言うとショーン様は走ってどこかへ行ってしまった。
「ショーン王子様は頑張ってらっしゃいましたよ。ただ、緊張して声が出てこなかっただけなんだと思います。なので私は少しフォローをしただけです。あんな風に言っていただくことの事はしておりません。それに王族をお支えするのは貴族として当然の事です。なのであんな風に言われてどうして良いかわかんなかっただけなのです。」
ショーン王子がいなくなると私とレオリオ王子にそう話してくれたミラノ。
「では、これから友人としてショーンと仲良くしてくれるかな?それでショーンの事少しでも一緒にいたいとか支えたいと思ったらその時はショーンにそう話してくれるかな?あとはたまに頑張ってるショーンを褒めてあげてほしい。」
ミラノの視線に目を合わせてそう言うレオリオ王子。
「わかりました。お友達として仲良くさせていただきます。今後は侯爵令嬢として王族の皆様とも顔を合わせる機会もあるかと思いますので。お姉様もレオリオ王子様と一緒にいたいって思ったのですか?」
「え?」
「私もいつかショーン王子様をそのように思える日が来れば良いのですが。」
独り言のようにそう言うミラノの言葉に私とレオリオ王子は顔を見合わせて笑ったんだ。
私はその後学園を主席で卒業すると第2王子妃になるための妃教育を受けつつ、ショーン王子に外国語を教えている。
妃教育も滞りなく終わると私とレオリオ王子は各地の諸外国をまわるようになる。
まだ婚約者という立場だけど私達が結婚するときに臣籍降下して公爵家を賜るという話だ。
私の可愛い天使は学園に入った。
同じ年のショーン王子も同じ学園にいるけど、ショーン王子はレオリオ王子のようにミラノの周りにまとわりつくこともなく、ミラノとは良い距離感のお友達として過ごしているという。
ただ、ミラノの話の大半がショーン王子の話で
「ショーン様はもう5カ国語マスターされてさらに2カ国語もマスターするみたいです。私も頑張らないと。ショーン様の為に。」
最後の言葉は少し小さな声で少し頬を染めてそう言うミラノ。
もう少しでショーン王子の初恋が叶いそうな予感がするな。
そして少し寂しい気持ちになる。
私の可愛い天使が離れてしまうような感覚。
それをレオリオ様にお話すると
「ミラノ嬢もきっとそんな寂しい気持ちになっていたんだよ。ショーンが言ってた。」
「え?」
「でも、お姉様の幸せなあの笑顔が見れるならこんな寂しさなんてなんでもないですわって言っていたようだよ。それを聞いたショーンは私はずっとミラノのそばにいるからってそう言ったら笑顔ではい!って言われたと嬉しそうに笑ってたよ。」
なんか悔しい。
私をだしにしてミラノの心を掴んだような気がする…。
私の表情を見て気づいたのかほっぺをつんつんとすると
「ミラノ嬢の幸せを願ってるのなら幸せそうな笑顔を見せてあげなきゃ。」
「わかってるけど…ミラノー。」
「可愛いリオナ。そろそろ私の事も考えてくれると嬉しいんだけど。久々の再会なんだよ。」
拗ねたようにそういうレオリオ様。
「いつも考えてますし、これからはずっと一緒ですよ。」
「嬉しいよ。君と色んな国に行けるのが。まずはミシェル達に会いに行かないと。あいつらいつ来るんだってうるさいから。」
「スーザン様からの手紙にも書かれてました。早く来なさいって。たくさん連れていきたい場所があるんだと。楽しみですね。」
「そうだな。」
そこにノックの音が聞こえてレオリオ様が返事をするとショーン王子とミラノの入ってきた。
「二人ともどうしたの?」
「お姉様が暫く外国に行かれると言うことでしたので私がショーン様にお願いして連れてきていただきました。」
そう言うとミラノの私の前にくると
「お姉様。今まで本当にお世話になりました。お姉様から教えていただいたたくさんの事は今後私が侯爵家の跡取りとしてやっていくのに本当に役立つことばかりです。小さな頃からお姉様が大好きでずっと離れなかった私を嫌がらずにずっと可愛がってくださいました。」
「それは私がミラノの事大好きだったからよ。」
ミラノ頭を撫でると嬉しそうに笑顔を向けてくる。
「私の憧れはお姉様です。本当に大好きです。これからは私がお姉様を時には助けられるように毎日ショーン様と共にがんばります。だから安心してくださいね。」
ミラノは頑張って言ってくれてるんだろうと思うけどミラノの大きな目には涙があふれてきている。
そんなの見たら私だって泣いちゃうよ。
ミラノを抱きしめて
「私もミラノに負けないように色んな国の事吸収して持ち帰ってあなた達の為にそしてこの国の為に頑張ってくるわね。だからミラノ…私はミラノの笑顔が大好きだからずっと笑顔でいてね。」
「もちろんです。お姉様。」
「ショーン王子様。ミラノの事これからもよろしくお願いします。」
「もちろんです。ずっと支えていきます。」
ショーン王子がそう言うとミラノは嬉しそうに笑顔になった。
この笑顔を見られて良かった。
そんな私を見てレオリオ様は私の肩を抱いたんだ。
それから私達は各国を周りたくさんの国の色んな文化に触れてきた。
何ヶ国まわって国に戻ると私達の結婚式をあげることになり、またバタバタとした日が続き、それが落ち着くとまた各国へと周りながら私の妊娠がわかると今度は自国にて各国の文化を取り入れるために忙しく動いているレオ。
ミラノは学園をもうすぐ卒業し、ショーン王子とめでたく結婚することになっている。
結婚したらショーン王子は侯爵家に婿入りして、ミラノと共に侯爵家を継ぐことになっている。
お父様は未来のお婿さんを大層気に入っている。
勉強熱心なショーン王子。
それに負けじと頑張るミラノ。
ヘーゼル侯爵領は今後も繁栄していくと思う。
私達もうかうかしてられないな。
私達の赤ちゃんがもうすぐ生まれる。
ミラノみたいな可愛い女の子がいいなと心の底から願っている。
いつかミラノも赤ちゃんを産むことになると思う。
私は男の子でも女の子でもミラノの子なら可愛がれる自信がある。
もちろん私のお腹の中の子が男の子でも私は溺愛すると思う。
口には出さなかったけど、ミラノと同じくらいショーン王子の事も可愛くて仕方なかったから。
あ、もう義弟になるから王子ではなくなるけど。
必死に私から外国語を教わっていたショーン王子。
忙しい中でも私に頭を下げてきて教えてほしいと言ってきた。
ミラノに相応しい男になりたいからと。
それには私から教わるのが一番だと思うって。
ミラノが一番憧れて信用している人だからと。
そんな事言われたら可愛くて仕方なくなるよね。
だから二人が婚約した時本当に嬉しかった。
コンコン
ノックの音が聞こえた。
「お姉様、お久しぶりです。お腹随分おおきくなりましたね。体調いかがですか?」
「兄上、ご多忙とは思いますが義姉上は身重なのですからなるべくそばにいて差し上げてくださいね。」
私の可愛くて仕方ない、妹と義弟は今日も私を一番に心配してくれる。
「わかってるよ。二人ともよく来たね。」
「二人とも来てくれてありがとう。」
レオと私の言葉に笑顔を向けて
「私達の結婚式の日取りが決まりました。」
「お姉様の赤ちゃんが生まれて1年後になりますのでお姉様もお姉様の赤ちゃんも一緒に出ていただけますわ。楽しみです。その頃にはもう歩いてるかしら?毎日のように会いに来てしまいますわ。」
「ミラノ気持ちはわかるが学園の卒業のあとは結婚式の準備に侯爵領の勉強。やることはたくさんあるんだよ。」
「わかってます。でも、少しはお姉様の元にも来させてくださいね。」
「もちろん私も来たいしね。」
そう言って可愛い二人は私達の子供を楽しみにしてくれてる。
レオと顔を見合わせて笑顔になると
「二人ともゆっくりしていってね。」
そう言うと二人は元気に頷いたんだ。
私の世界一可愛い妹は私にぎゅっと抱きつくとお腹を触る。
「お姉様!今動きました。」
笑顔のミラノに私も笑顔になる。
今も昔も私の事を大好きでいてくれる妹。
今も昔も変わらずに私の世界一可愛い妹なのでした。