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「まあ、君が川城陽菜さんを殺したってことですね。かわいそうに、かわいそうに……」
「いや、それは違うでしょ?」
「違いませんよ……」
「私は彼女を助けるためにあなたの元に来たんですよ。あなたが死にたいって言ってたか来たのに……」
「あなたが余計なことを願わなければ、私は、あなたではなく、他の方の所に伺っていたのですから」
そうなのだろうか?
彼女のファンは皆、僕のことを恨むだろうか?
仮に川城陽菜が死んだらそれは僕のせいなのか?
そんなの元々彼女が死ぬ運命だっただけでしょ。僕に責任はない……はずだ。
「別に私はいいんですけどね。明日死ぬのがあなたじゃなくて川城陽菜さんになっただけなので、死者の数を減らしたわけではないので、私は叱られることはありません」
「ただ、彼女が死んで悲しむ人はたくさんいる。あなたは嫌嫌ながらも会社に行く」
「そう決めたんなら、これから間違っても、自ら殺ぬなんてしないですよね?」
「そんなことするんだったら、変わってあげてくださいよ。どうせ死ぬならね」
「まあ、しないとは思いますが、仮にあなたが自殺でもした場合は……その時は許しませんからね」
「それでは私はこれで、失礼させていただきます」
「これ、置いとくんでよかったら見てくださいね」
そう言ってペチルは真っ黒いスマホを僕に渡すと、姿を消した。
ペチルが消えると同時に、スマホから動画が流れる。その動画にはニュースの映像。
見たことある女子アナと男性キャスター。2人が深刻な顔をしてニュースを伝える。
「川城陽菜さん死去」というテロップ。
生々しい映像と、アナウンサーの声。
映像は変わり、街の人々がインタビューに答えている様子が……
「若いのに、こんなに早く亡くなるなんて」
「彼女が助かる方法はなかったんでしょうかね」
「ずっと、応援していたので悲しいです」
ああ、これが僕のせいだっていうのか。
いや、これはあくまで、彼女が、死んだ場合の世界線か……
そうだよね、これフェイクニュースだよね。
僕のスマホじゃない、これはペチルが置いていったスマホだ。
殺したわけではないけれど殺したような感触。
死にたいなんて簡単に言うんじゃなかった。
本当は死ぬ覚悟なんてできなかったんだなって……気付かされた。