3
「winwinだとは思いませんか? 」
「あなたは望み通り、死ぬことができる。仕事に行かなくて済む。彼女は生き続けることで、多くの人を幸せにすることができる」
「彼女の存在のおかげで、『生きたい』と思える人が増えるかも知れませんしね」
「あなた1人の死が、たくさんの人を救うのです!」
____死にたいと思っていたけど、こんな風に言われるとなんか「うん」と言いたくない。僕が死ねば、彼女を救えるって言うけど
その事を彼女は知るのだろうか……
彼女のことを応援する人たちは知るのだろうか……
「……」
死にたいと願ったのは僕だけど、川城陽菜は綺麗な顔に生まれて才能もあって、それはそれはチヤホヤされて生きてきただろう。
僕よりもそれはそれはさぞかしいい人生を送っていることだろうに。その彼女の代わりに俺が死ぬのはなんか嫌だ。
「あれ? 嫌なんですか?」
「死にたいって言ってませんでしたっけ?」
「……なんか、こういうのは嫌だなって。死にたいとは言ったけどこれはモヤモヤする」
「どうしてですか? どうせ死ぬなら、誰かのためになって死んだ方がよくないですか?」
「こんなチャンス滅多にありませんよ!」
「でも、なんか命の選別をされてるみたいじゃないですか?」
「僕の命の価値を100だとしたら、川城陽菜の価値は70000と言われているようで」
「……まったく、ワガママな人ですね」
「私は、命の選別をしたつもりも、あなたの命の価値を低く見積もったわけでもないですけどね~。ただあなたが死なせてくださいっていうから、最善の方法を提案しただけなのに」
「死なせてくださいって願っておきながら、その死に方は嫌だって……」
「で、どうするんですか?」
「引き受けるんですか、引き受けないんですかどっち何ですか?」
「…………Noでお願いします」
「へぇ~そうですか」
「初めてですわ、断られたのは初めてですはわ。あ~本当 時間の無駄でしたわ~」
ペチルは、不満そうに言う。
確かに僕はワガママかもしれない。死にたいとは言ったけど、自殺する勇気はない。
そのくせ、この提案を引き受けようとはしなかった。