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新天地を求めて

長編予定だったものです


「ではライナ、これから貴方はこの世界とその体を捨て新しい世界に転生し、その身にあまり余る天能(スキル)を扱いこなす転生体に生まれ変わる輪廻の儀を執り行います。これを行なってしまえば貴方はこの世界に帰ってくる事はかないません。これが最後の通告となりますが、良いですね?」


「もうここまでこれば答えは変わらん、勿論いいぞ」


「…二人としての冒険もこれで幕を閉じる...か、一ヶ月もいたのですが、いざその時となれば寂しくなるものですね」


純白の衣装を見に纏い、七芒星の紋様がついた腕の甲から吹き出る膨大な紫色に光る魔素(マナ)を操作し、何十層も重ね合わせた魔法陣を開放準備状態を維持しながら、特S級冒険者として長い時一緒に旅をし続けてきた『双頭の鳳凰剣』の片棒の『セルア』が最終通告をした。


「すぐに私もあなたと同じ世界に旅たちますので、待っていてください」


そう言って涙を一筋流した姿はとても可憐だった。粉雪のように真っ白な肌と金色(こんじき)の髪の毛が光り、緋と蒼色の双眸は紫色に染まっていて涙が乱反射している。


「ああ、いつまでも俺はお前のバディー(二人組)で夫だ。確かに離れ離れになるかもしれないがそれは一生じゃない、お前ならすぐ来れると信じてる、双頭の鳳凰剣の片棒『テンペラスター』(温度を司る者)セルアだろ?


「…あなたは昔からそう呼ぶのが好きですね。今はそう呼ばれるのは慣れましたが、少し恥ずかしかったんですよ?」


元々亡国の皇女であった彼女だが、国が崩れる原因となった世界最大の火山の大噴火により、地下に眠っていた古代龍が目を覚まし暴虐の限りを尽くしたのち、それに危惧を覚えた近辺の国々が総力を上げて討伐隊を派遣。


その総指揮官兼、筆頭特A級冒険者としてライナはその先鋒を務めた。

最初はその圧倒的な数で優勢を誇っていたが、相手は世界最大の火山の地下深くで眠っていた厄災と象徴される古代竜『ラグナロサ』


各国で最強と呼ばれたパーティーがすぐに倒れていく中、生まれつきの才能を他国に知らしめていた当時十五歳のセルナはとともにバディー(二人組)を結成、単身でその巨大な体に飛び移り冒険者中最強の名を恥じないよう、一つ一つ少なくないダメージを負わしていく。


しかし戦いの時間が長くなるにつれ体の限界が近くなってくるころ、少なくないダメージを負ったラグナロサが最後の力を振り絞り、それが放たれば国一つ消える『 グバイ(竜の激昂)』を軍団に向けて放ち絶体絶命のピンチに陥った。

しかしそこで生まれつき持った才能とその膨大なマナを持ったセルナに聖霊の(おさ)が身体に憑依し、絶級氷魔法『クヴェントリファー(何人も動かさざる)』を放ち行動とが鈍った時、ライナが持ち前の十芒星支援魔法で強化された剣で切り裂いていき、撃破。


その後も英雄として三代分の伯爵位が与えられることが決定していたのだが、冒険者パーティー『双頭の鳳凰剣』として活動を続けると宣言したため、本拠地にしていた王都冒険者ギルドから2人のためだけのギルド階級、『特S級』が与えられ外聞は冒険者として、そして実質、権力は一切ないが貴族としての立場を手に入れた。


それから約10年経ち、セルアは立派な女性として成長し20歳の誕生日を迎えたその日に二人はめでたく前から望んでいた結婚を執り行った。

その後も二人で冒険者として旅を続けて鍛錬を積み重ねていたが、ふとある時にライナの頭の中でラグナロサとの戦いがふと思考を奪っていった。


「当時からいまだにひとつも成長していない」と。


それから彼は、雲より高いオナリオ山に登り鍛錬を開始するが、1年経っても2年の月日が流れても一切成長しなかった。冒険者達との競い合いの中で耳にしたことがある。

人間の強くなる範囲には限度があり、その壁を越えるためには違う体で生まれ変わる必要があると。


そこでセルアに憑依し続けている聖霊の王に秘境の地であるルクエス(精霊の遊び場)へ招待してもらい、そこで人間の限界を超えるため前世の器を持ったまま転生する『輪廻の儀』を執り行うことにした。

勿論ただ記憶も何も残さず生まれ変われば、どんなに優れた身体(からだ)だったとしても限度がある。


なのでただ輪廻の儀を行うだけでなく、それまでの記憶を魂に定着させ生まれ変わった後もいつでも記憶を掘り起こせるように、別名、『魂の帰り道』と言われる精霊の遊び場で一ヶ月近くセルナと夫婦水入らずの時間を過ごし、記憶を定着させた後ついにその日を迎える。


周りにはこの一ヶ月で仲良くなったマナ体を手に入れたばかりの聖霊の子供達。この子達はこれから長い時間をかけて空気中のマナを取り込んでいき、マナ体を手に入れ、そのまま準聖霊、聖霊、大聖霊と成長していくこととなる。


来たばかりの時は多種多様の色の玉が浮いているだけだったが、毎日記憶を定着させるのと並行でマナ体の形成を手伝っていたお陰で、大半がその姿を発現することができるようになった。


「お前達もいつかは会えるといいな、それまでには準聖霊となって言葉を話せるようになっとけよ?」


ライナが両腕を伸ばして止まり木のようにすればその子達が一気に集まっていき、座るものやその上を歩いて遊ぶものなど沢山の聖霊が悲しそうに最後のお別れを告げていくような、そんな仕草をする。


「ふふっ、あなた達は本当に聖霊達に好かれる体質なのですね、少し嫉妬してしまいます」


そこに分身体を使って姿を現したのは聖霊王、その背後には体に炎を纏い燃えるような髪と目をした大精霊を侍らしている。


「この度はありがとうございました。ルクエスへ招いてくれただけでなく輪廻の技の術式を伝授してくださって」


「そんなことは良いのです。あなたは先のドラゴンを倒したことにより一帯の平安をもたらしてくれました、ラグナロサが暴れればこのルクエスも無事ではなかったでしょう。この恩はそれほどのものなのです、些細なものですが、これを」


マナを操作し頭上から緑色の分身体と同じ姿のものが現れ体に入っていく。自然に包まれるような優しさが感じられ心地よい。


「これは?」


「簡単に言えば少しばかりの加護をあなたに付与しました、旅先で役に立つかどうかはわかりませんが役には立つはずです」


「なにから何まで…ありがとう」


これから自分は転生する。わかり切っているが再度この世への未練だとか心残りが湧き上がって涙が滴ってしまう。


「ライナ…」


真剣な顔でマナを操作していたセルアが悲痛な顔で涙を流した。

そんな表情を見せられるだけで意志が揺らいでしまうが、優しく顔を振り意思を曲げないと伝える。


「そんな顔をするな。決してこの別れは永遠じゃなくて一時的なものだ、だから別れ文句は()()()()()じゃない。またな(・・・)だ」


「…うん。分かってる、分かってるけどっ!」


仕方ないな…


このままでは一生続いているような気がしたので、魔法陣から少し離れセルアの成長し終わった後もこじんまりとしている頭に、冒険者をしているうちに大きくゴツゴツした手でその頭を撫でる。


涙が止まらない彼女は、国が滅んだときの子供の頃を彷彿とさせた。魔法陣を一回解いてそのまま泣き出す。


「…セルア、頼む、泣き止んでくれ。お前がいつまでも泣いていたら、俺もお前のことを考えながら心残りがあるまま過ごさなくちゃいけなくなる」


「…じゃあ、これだけは約束して……」


袖で涙を乱暴に拭きその顔に花を咲かせながらこう言った。


「……私が貴方にまた会った時、その胸に飛び込めるようにいてね!死んじゃ嫌だから!」


「分かった、約束する。セルアも絶対ついてこいよ、これが俺の妻だって自慢できるように」


「うん!」


そして、深呼吸をした後もう一度マナを練っていき地面と空中に浮かぶ魔法陣が白く発光していく。


「じゃ、またな」


「貴方も元気でね」


そう言った後視界は白く染まり、体が浮遊感に襲われた後ライナの意識は黒く染まり世界を超え、新しい世界へと新しい体を求めて旅たって行った。


そしてマナの光の残骸が消えた時にその場所には女の子の泣き声が木霊していた。





勢いで書いてしまった作品です、うへぇー(*´-`)

最強系主人公の作品を見ていたらまた衝動的に描き始めてしまった…悪い癖ですねはい。

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