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閑話 私はスライム

今回は閑話になります!スライムちゃん視点のお話です。

 私はスライム。生まれたのはちょっと前。私はダンジョンで生まれた存在だ。そこら辺の知識は生まれた時から持っていた。

 生まれたときには私の周りにはたくさんのスライムがいた。


 そして、殺し合いが始まった。


 同族であろうと特に殺すことに違和感も忌避感もない。私たち魔物、とくにダンジョンの魔物であればそうすることは当然という知識があったから。


 戦わなければ生き残れない。

 だから私は全力で戦った。時には危ない場面もあったし、逃げ回ったりもしたけどね。


 そして私は生き残った。何百といたスライムの中で戦い抜き、逃げ回り、そして勝ち残ったのだ。


 その後、この空間にいるスライムは私だけになった。

 だから色々見て回った。端から端まで見て回った。細長い通路が真っすぐにどこまでも続いているだけのつまらない場所だった。

 時々スライムがリポップしたけどすぐに潰した。戦いの中でかなり強くなっていた私には余裕だった。 

 他に発見できたのは私では開けることができない扉だけ。


 退屈だ。


 やることがないとはこんなに退屈なことだったのか。


 それからどれくらい時間がたったのかわからないが、ある時ダンジョン全体が揺れた。何が起こったのかは分からなかったが何か、特別なことが起こったのだけは分かった。


 そして、唐突に私がいた空間に別の生物の反応が現れた。


 明らかにスライムとは違う反応。


 私はドキドキした。これで退屈な日々とはおさらばだ。何か特別なことが待っているんだと、喜び勇んでその反応のもとまで移動した。




 そして、反応のもとまでたどり着いた私は……落胆した。


 そこにいたのは、多分人間というやつだと思う。

 気を失っているであろう人間の少女がいた。

 何の力も持たない子供がそこにいたのだ。


 たしかに普通のスライムよりは強いのかもしれない。けれど、多くの同族を倒して力を増した私にとっては赤子みたいな存在だ。


 だから私は興味を失った。


 せっかく退屈じゃなくなると思ったのに。来たのはあんな非力な人間のガキ。暇つぶしにもならない。


 だからふて寝した。





「こんにちは、初めまして!」


「……!」


 寝ていたのに急に大きな声で話しかけられてびっくり。

 そちらに視線を向けるとさっきまで気絶していた少女がいた。「なんだこいつか」と思いつつ話しかけられているようだったので適当に答えてやる。


 出口の場所?

 

 そんなものこっちが聞きたいわ。


 ……いや、待てよ。この人間がいればあの扉を開けられるのではないか?このダンジョンが何階層になっているかは分からないが、たがだかフロアボス程度に負ける私ではない。この人間と一緒にいけば下まで降りられる。そして攻略すればこのダンジョンを出られると私の知識が告げている。


 ふむ、私は退屈をしのげる、この人間は外に出られる。ウィンウィンな関係じゃないか?

そうと決まればついて来い!私が案内してやろう!


 安心なさい、この空間から出るまでは私が守ってあげるわ。

 その後は知らないけど。




 しばらく歩いてみたけれど、この子は本当に非力だった。リポップしたスライムに驚いて腰を抜かすし、戦おうという気概がないのだ。喉が渇いていたようなので、しょうがないから私が出した水を飲ませてやる。

 最初は抵抗していたが無理やり飲ませた。


 まったく、私が出す水はそんじょそこらの水とは一味も二味も違うんだから。何が気に入らないのかしら?


 歩いきながらもこの子はずっと話しかけてくる。学校?とかいうものの話だったり、家族の話だったり、食べ物の話だったり。

 ……食べ物の話の時よだれがたれそうになったのは内緒よ?あと、気のせいかもしれないけど時々私を見る目に美味しそうなものを見る目が混じるの。

 ……気のせいよね?


 でも、この子の話は聞いていて飽きなかった。凄く楽しそうに話すし、何よりもこの子が向けてくる好意が心地よかったのだ。

 生まれてからずっと敵意しか向けられなかったからなのかかしら。


 この子が向けてくれる好意がどうしようもなく心地のいいものに感じる。

 ふんっ!人間もなかなかやるものね!




 だから何だろうか。いつの間にか、この子の話ではなく話をしているこの子自身を見るようになっていた。あの笑顔を向けられると心がほんのり温かくなっていく。




 そして扉の前に到着した。

 私は迷っていた。この扉のわきには隠し通路があることは知っている。妙な空間があってそれがずっと下にまで続いている。恐らくは隠し通路。


 はっきり言おう。私はこの子に対して情を抱いてしまった。だからこそこんな危険な場所からこの子を早く脱出させなくちゃいけないと思ってしまう。でも、この隠し通路でショートカットしてしまえばこの子との別れも早くなる。


 どうすればいいのだろうか。


 ……考えるまでもないことだ。私はこの子を危険な目に合わせたくはない。隠し通路を行こう。何があっても私が守ればいいんだから。




 そうして降りていった先で。

 私は後悔していた。


 考えが甘かった。

 あの通路がまさか最下層のボス部屋にまでつながっているとは思わなかった。それに最下層のボスがあんなに強いとは思ってもいなかった。


 完全に見誤ったのだ。


 自分の強さも。


 相手の強さも。


 そしてダンジョンのことも。


 結果、この子を傷つけてしまった。

 それどころか、逆に守らせてしまった始末だ。あの時、この子は尋常じゃないくらいに強かった。あのでかいスライムよりも。本能であれには勝てないと思ってしまうほどに。


 きっとあれがあの子のポテンシャルなのだろう。あれが一時的なものか、それとも覚醒した力なのかは分からない。でも、あれだけの力は持っているのだ。


 ―――私は弱い。


今は気絶してしまっているこの子をを見つめながら思う。


 ―――もう二度と後悔しないために


 ―――もうこの子を傷つけさせないために


 ―――今度こそ、守りきるために


 私は強くなる。この子を何者をからも守り切る。


 タツキを支えるだけの力になることを。


 私はタツキの寝顔を見ながら静かに誓った。


今回はスライムちゃん視点の閑話でした!

明日は予定通り本編を更新する予定です。

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