4話 どうして僕がダンジョンにいたのか……
区切りが悪かったので、もともと3話に含まれていたこの話を4話として投稿させていただきます。
ダンジョンの発生を地割れから、地面が光ってという形に変更しました。
8月14日
この日は夏休みである高校の登校日。高校生として初めての夏休みということもあり最初の頃は宿題を頑張っていたんだけれど、ちょうどだれてきた頃なので登校日があるのはちょうどよかった。
分からなかったところも質問とかもできるからね。
もちろん授業をやるわけではなくちょっとした課題をやったり、自習時間として宿題をやったりして過ごす。
とは言っても休みの登校日なので午前中で終わり、午後は丸々空くことになった。
友達は皆何かしら予定が入っていたので僕もちょっと寄り道をしてから帰ることにした。ちょうど今日が読みたかった漫画の新刊の発売日なので買いに行くことにしたのだ。
もしかしたら妹たちも買ってくるかもしれないけど、かぶったらかぶったで保管用にするからいいけどね。これまでも何回かあったし。
というわけで学校帰りに商店街にある本屋さんによっていく。
そのために僕はいつもの抜け道を使う。
路地裏だったり、塀の隙間だったり。そんな道を通っていくコースだ。前に妹たちにもこの道を教えたのだが「狭くて通れない」とのことだった。
言外に僕が小さいと言われている気がして納得いかなかったが。お父さんもお母さんも小柄ではないはずなのに……これが遺伝子のいたずらなのかっ!
その中で一つ。
よその家の庭を抜ける道がある。
もちろん、家主の許可は取ってある。
そこのうち住んでいる老夫婦は知り合いで、小さい頃からよく遊んでもらっていた。
最近、息子さん夫婦と一緒に住むことになったとかでその準備のために留守にしがちだったのだが今日も留守のようだ。
日本家屋風の家でそれなりに広い庭を持っている。
おばあちゃんの趣味がガーデニングなのもあり、庭には色とりどりの花が咲いておりとても綺麗だ。
「……この花を見るのも今日で見納めかもしれないな」
老夫婦がいなくなってしまえば庭を手入れをする人もいなくなる。そうなってしなえば、この綺麗な花々もいずれは枯れてしまうことだろう。
もっともこの家が残るのかどうかも分からないけれど。
そんなことを思ってしまったため、今日に限ってはこの庭をもっとじっくり見ていたくなった。
どれくらいそうしていたのか、ふとスマホを見ると30分も経過していた。
ここで、スマホの画面が唐突にブラックアウトする
今朝は充電し忘れて残りが10%の状態で持ってきたのだ。学校ではあまり使わなかったけれど、たった今限界が来たらしい。思ったよりも時間を使ってしまったし、十分この景色も見ることが出来たのでそろそろ帰ろうとした。
次の瞬間であった。
僕自身も何が起こったのか把握する時間もないぐらい一瞬の出来事。
さあ行こうと思った瞬間、地震が起こった。
本当に立っていられないぐらいの大きいやつ。
そして――
――地面が光った
まったく訳が分からなかった。急に地面が光りだしてその中央に僕が立っている。
そして次の瞬間には視界が真っ暗になっていた。
「と、こんな感じで目が覚めたら洞窟にいた感じです」
「……なるほど。だから龍希ちゃんの姿がこの家の防犯カメラに写っていたんだね」
日高さんによると、周辺に住む人の眼がくらむぐらいの光が発生し、それを不審に思った近隣住民が警察に通報。光の渦のようなダンジョンの入り口を発見に自衛隊を派遣。
防犯カメラの映像から僕が巻き込まれたことを知り、救助隊を結成しているときに私が自力で戻ってきたようだ。
「……ご迷惑かけてしまってすみませんでした」
「いいえ、あなたが無事でよかったわ。それはじゃあ今度はその頃に地上で起こっていたことを説明するわね」
8月14日
その日、世界が揺れた。
文字通りの意味で、世界中で同時に地震が発生したのだとか。幸いなことに不思議とそれによる建物の崩壊とか津波などの影響はなかったそう。
それと同時に各地で謎の光の渦が発生したらしい。それは、人通りの多い街中だったり、動物しかいないような山中だったりと今のところその規則性は分かっていない。
そしてさらに不思議なことは重なる。
全世界の人々の頭に謎の声が聞こえてきたのだ。これは後から分かったことだが、どこの国、地域の人々も一言一句全く同じ言葉を聞いたのだ。
そう……言語の全く異なるにも関わらずだ。
そして、その声はこう言っていた――
『私は星の意思である』
第一声はこれであった。
星の意思を名乗る存在の言葉は続く。
『星は幾星霜の時を得て、新たなる階位の上昇、進化を果たした。これによってダンジョンが出現する』
言ってる意味が全く分からない。星というのが地球を指しているだろう事は何となく分かる気がする。しかし、階位の上昇?進化?ダンジョン?まったくもって謎であった。
『星は変わる。変わるときが来たのだ。星の命たちよ。これまでに経験のない大きな変化に戸惑うものも多くいるだろう』
『これを新たなる仕組みとして受け入れるか、異物として排除するかは自由だ』
『しかし、もう星は進みだした。元には戻らない』
『最後に……世界にダンジョンが出現する』
そんなことを一方的に告げていき星の意思からの声は聞こえなくなった。
各国のトップはまず大規模なテロ、もしくはいたずらを疑った。
しかし、現代のエンターテイメント文化に影響された若者の行動は早かった。そして早々に発見されたのがステータスシステムである。
この情報を入手した首脳陣は呆然とした。
こんなものは今の人類の技術でできるものではない。
つまりは、これを引き起こしたのは超常の存在--それが超技術をもった宇宙人なのか神のような存在なのかは分からないが――であると理解するしかなかったのだ。
そして、星の意思の声が言っていたことが本当のこととすれば気にせねばならないあの言葉「ダンジョンが出現する」。
あの漫画やゲームに現れるダンジョンが本当に現代に存在するのか?
しかし、そのような悩みも一瞬で吹き飛んでしまう。SNSにダンジョンと思わしき画像、映像が多数流れたのだ。
もしこれが本当にあの『ダンジョン』なのだとすれば確実に危険である。
各国の政府はすぐさま民間人が不用意に入らないように封鎖した。これほど政府の行動が迅速であったのは史上初めてであったかもしれないというぐらいのスピードで封鎖が行われた。
人々はどこかで理解していたのだ。それは遺伝子に刻まれた情報なのか、星に住む者の本能なのか――星の意思の言葉に嘘がないことを。
だからこそ行動が出来たのだ。
一方でこのダンジョンでは一人の少女があろうことはダンジョン発生に巻き込まれている。
幸いなことに、僕のようにダンジョンの発生に巻き込まれた人は国内にはいなかったようだ。ただ、封鎖前にダンジョンに入ってしまった人はいたようだけど。
「……そんなことがあったんだ」
「たつ姉、むしろなんで知らないの?声は聞こえてたはずだよね?」
「ああ、そういえば落ちる途中でなんか聞こえたような気がするけど……よくわかんないや」
「ふむ……ダンジョンの中では例の声は聞こえなかったのかもしれないな」
自衛官の人たちと一緒にテントに入ってきた白衣の人がなにか考察を始めた。きっとダンジョンを調べるために派遣された研究者なんだろうな。
「それで龍希。ダンジョンの中で何があったの?その抱えてる子のこととか、まだ説明してないことあるんでしょう?ちゃんと話してちょうだい」
お母さんが真剣な目つきで言ってくる。
こんな表情のお母さんは珍しい、というか初めてかもしれない。いつもはもっと笑顔な人だから。
「うーん、説明と言っても。何と説明したらいいか……」
洞窟、ダンジョンというらしいがそこで過ごした時間は大したものではない。ただ、中身が濃密すぎてどこから説明したらいいのか迷うとこではある。
でもそこを説明しないとみんながずっと気になっているスライムちゃんのことを説明できない。
だけど、そうするとビックスライムとの戦いも説明しなくちゃいけなくなって怪我したこととか変な力が使えたこととか色々心配させそうなことがある。
その時だった。
頭の中にいきなり声が聞こえてきた。
その声は男とも女ともつかない声で、若いような年を取っているようなどっちにも聞こえる不思議な声だった。
『ダンジョンの攻略がなされた』
その声と共に、その場の全員の視線が僕に向いた。
多分ボクだと思います……はい……
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