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3話 戻ってきました地上へと!

 視界が一瞬で切り替わる。


 次の瞬間私は眩しくて目を開けていられなかった。

 瞼を閉じていても光が当たってるのが分かるぐらいかなり強い。


「め、目がぁ!?」


『人の眼には危険な光量を感知。安全圏まで光量を遮断します」


 その声と共に眩しかったのがかなり緩和される。けれどさっきの光のせいでまだ目を開けることが出来ない。


「……っ!全員、銃を下ろせ!要救助者の子だ!」


 何が何だか分からない。

 聞こえてくるのは、男の人の大声とざわざわとした人々の声。何かの機械音もするきがする。

 そんな中でもはっきりと、覚えのある声が聞こえてきた。


「「……ね…ぇ!!」」


「うん?あれって……」


「「たつ姉ぇぇ!!!」」


「うひゃあ!?」


 突然の衝撃。

 お腹の辺りに何かが凄い勢いで突っ込んできた。いや、ほんとに一瞬呼吸が止まるぐらいの衝撃で後ろに倒れこむ。

 ズザザーっと地面を滑るが突っ込んできた何かはしっかりと抱え込む。


 さっきの声……僕が聞き間違えるはずもないあの声。今も僕のお腹にぐりぐりの頭をこすりつけているモノの正体。


「ただいま、水月(みつき)朝陽(あさひ))」


「「おかえり、たつ姉ぇぇぇぇーーー!!!」」


 まったく困った妹たちだ。

 疲れて帰ってきた姉をいきなり押し倒すなんて。


 ――でも、二人の温かさが心地いい。帰ってきたんだなって実感できる。


「……(タツキ!なにこの子たち、敵!?)」


『落ち着いてください。この方々は柊水月様と柊朝陽様。マスターの妹君たちですよ』


「柊龍希さんで間違いありませんね?」


「え、はい」


 いつの間にか女性が一人近づいてきていた。倒れている僕に合わせるようにわざわざしゃがんで話しかけてきてくれてる。

 うん、目線を合わせて話してくれる人の9割はいい人だ。


「私は日高優子。自衛官です。向うのテントでご両親がお待ちですので、ご案内します。ここでは目立つでしょうし」


 周りを見てみる。

 眩しかったのはライトを当てられていたからのようだ。今は光量を落としているのでさっきほどは眩しくない。それに合わせてレンズの暗さも無くなっていることに気づいた。

 そして僕たちを取り囲むように自衛隊の人たちがいる。全員銃を下ろした状態で微笑ましそうな目で僕達を見ていた。


 ……ちょっと恥ずかしくなってきた。


「ほら、二人とも向うのテント行くよ!立って!」


「「……」」


 二人はしぶしぶといった体で立ち上がるが僕も立ち上がると、すぐさまくっ付いてくる。


「ふふ、それじゃあ行きましょうか。……ええと、その、足元にいる物体のことなのですが……」


 日高さんが何を言っているのか最初は分からなかったけど、足元を見て分かった。

 そっちを見るといるのはピンク色の水まんじゅうこと、スライムちゃんである。そりゃあ、ゲームのスライムみたいなのがいたらびっくりするよね。

 ……そこらへん妹達にはもうちょっと危機感を持って欲しいけど。


「大丈夫です、スライムちゃんは友達ですから!」


「ええと……」


 日高さんが僕から視線を外してもう一度スライムちゃんの方を見る。


「……ぷるん(なによ?)」


「……」


 そしてまたこっちを見る。


「大丈夫です!」


 日高さんは僕とスライムちゃんの間で視線を何度か行き来させると、頭痛を堪えるような動作をする。


「……仕方ありません。何かあった場合はそれなりの対処をさせていただきます。ですので、しっかりと管理してください」


「はい!」


 日高さんに案内されて複数のテントが立ち並んでいるエリアに移動する。

 見たこともないような大きな機械だったり、白衣を着た研究者っぽい人がいたりとなんだかすごいことになっている。


 あの地割れってそんなに大変なことだったのかな?

あんな洞窟が地下にあるんだから放置できるわけもないか。地盤沈下とかしたら大変だもんね。にしてはちょっと大げさな設備な気がするけど。


 ……家、大丈夫かな?結構大きな地震だったし。


 そんなことを考えながら歩いているのだが、周りからの視線が凄い。

 何というか動物園の動物ってこんな感じなのかなって凄い思った。ただあちこちから視線を感じるけれど、敵意のようなものは感じない。


 僕ってそんな感じの感じ取れるような達人だったっけ?

 あの洞窟で色々な経験をしたからかな? 


 あと、獲物を見るような視線も感じる……特に白衣の人たちから。


「日高です。柊龍希さんをお連れしました!」


「入れ!」


 何というかカチカチとしたやり取りだ。いかにも自衛隊といか軍隊?みたいな感じがする。

 中から帰ってきた返事は野太い男性の声だった。


 さっきの会話からすると、この中にお父さんとお母さんがいるのか。



 ――会ったら何て言ったらいいかな?

 

 たった一日しか離れていなかったのに、なんだか緊張してくる。


 僕の緊張を感じ取ったのか、腕の中のスライムちゃんが心配するかのようにぷるんと動く。引っ付いていた二人も何かを感じたのか余計にぎゅっと抱き着いてくる。


 うん。みんなありがとう。


 一息をついてから日高さんに続いてテントの中に入る。

 

 二人は……いた。

 椅子に座ってこっちをじっと見ていて、泣きはらしたのか目元が赤くなっている。


「「龍希!!」」


 僕の姿を認識すると、バッと駆け出して両側からぎゅっと抱きしめられる。

 お母さんは凄く力強く、お父さんは腫物を触るみたいに恐る恐る。


 対照的な触れ方だけど、お母さんたちらしくてちょっと可笑しかった。


 何故だか僕の目にも涙が浮かんでくる。


 泣いたらきっと心配させちゃうから絶対に泣かない様にしようと思ったのに……

 そう思っても涙は止まらない。

 堰を切ったようにあふれ出してくる。


 ―――もう、今日は泣いてばかりだな


「あなたはいっつも、いっつも心配かけて……」


「よかった、無事でよかった。よかったよぉ」


 そこに妹たちも加わって、僕たちは思いっきり泣いた。

 たった一日、されど一日。

 僕たちにとっては長い長い1日だったみたいだ。




 しばらく泣き続けて、みんなが落ち着いてきた頃。

 その間、自衛隊の人たちは外に出ていてくれた。気を使ってくれたみたい。


 それに気づいたお父さんが外に呼びに行く。

 さっきは感動の喜びで僕たち以外なんにも目に入らなかったけれど、落ち着いたら当然余裕が出てくる。

 そうすると必然的に僕が普段はしていない赤縁の眼鏡と、僕の足元にいる桃色の物体に意識がいくわけで……


「ね、ねえ龍希。なんというか、そのピンク色のプルプルしているものはなに?」


 お母さんがみんなを代表して聞いてくる。お父さんも、妹たちも、お父さんが連れてきた自衛隊の人たちもみんな聞きたそうにしている。


「何に見える?」


「……スライム?」


「正解!」


「……」


 ……うん。正直僕もこれ以上分からないんだけど。一応スライムちゃんて呼んでるけど本当にスライムなのかも分かっていなしい。


「そ、そうだ龍希ちゃん!あなた、そもそもどうしてあんな場所通っていたの?家の方向でも、学校の方向でもないでしょ?それにダンジョンの中でのことも教えてほしいな」


「ダンジョン?それってあの洞窟のこと?」


 僕の問いに対して、みんなが驚きに目を見開く。


 ……なんでみんな「何で知らないの?」みたいな目で見てくるの?えっ、僕の方がおかしいの?


「……そこら辺からなのね。分かったわ、その辺の認識も共有していきましょう。まずは、龍希ちゃんがどういう経緯でこうなったのか。そこら辺の説明からお願いね」


 そういう話になったので僕は何であの洞窟に落っこちてしまうことになったのか思い出すことにした。


読んでくださりありがとうございました!

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