3話 16階層
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「現在15階層を突破し、16階層に到着。一面が水で満たされていて、これまでの階層では確認できていた次の階層に繋がる扉のある陸地も見当たらない。もしかしたらここの階層からは扉も水中にある可能性もある……っと。こんな感じかな?」
『はい大丈夫です。後は私の方で文字起こしと編集はしておきますね』
「よろしくね!」
「……(二人は何をしてるの?)」
「ギルドに提出する報告書を作ってるんだよ」
これは今回の探索者の話と一緒にお願いされたことで、探索するダンジョンの特長についてのレポートが欲しいと言われたのだ。だから今みたいにボクが言ったことをアインがボイスメモみたいな形で記録して、さらに編集までしてくれている。
おかしな箇所や文章の変なところはアインが適当に処理してくれる。
……もうボクが言葉で言う必要すらないんじゃないかとも思うけどね。でもこういうのカッコいいからやってみたかったんだ。
「それにしてもこの階層は本当に水しかないね。ここの階層からは水中で呼吸する道具は必須になるかな?」
「そうですね~。この階層からは大地に反応を感じないのでここ以外には地面はないですね~」
「やっぱりそうだよね。となると、これがあって本当に良かったよ」
ボクは自分の手の中にあるビー玉サイズの丸い石に目を落とす。
これはアイン達の持ってきてエア鉱石を錬金術で加工して作った簡易型の酸素ボンベだ。簡易型とは言っても魔力を供給する限り酸素切れの心配のない優れモノだ。
「最もこれがなかったらこのダンジョンを探索しようと思わなかったけどね」
事前に自分の家から通えそうな範囲にあるダンジョンについて説明を聞いていた。それぞれの特徴とか色々考えて、最初は別の場所のダンジョンの行こうと思ってたんだけどコレのこともあってここに来ることに決めたのだ。
錬金術で作った道具の性能を試してみたいってのもあったけどね。
「ルビーは呼吸しないからいらなくて、ローズは必要だよね?」
「いえ、私の本質は植物ですので少しの光があれば光合成で酸素は作れますよ~。ですのでそれがなくても問題ないです~」
「何か水草みたいだね。それなら使うのは私だけか」
隣で「水…草…?」と言って膝をついたローズを尻目に簡易酸素ボンベを口に含む。すると口に中に風が発生したような感触があった。
「よし!準備もできたし、時間もないから早速行こう!」
『今回はこの16階層の探索が目的ですので、次の階層への扉の発見はついでで構わないでしょう。この階層での魔物と環境の探索を優先しますよ』
「了解!」
アインの言葉を聞きながら水の中に入っていく。
このダンジョンの水はちょっと不思議で、アイン曰く真水に性質は近いのだそうだ。ただ、本来なら海水でしか生きられない魔物と淡水のみで生きる事のできる魔物が両方とも生息しているらしい。
それがこれまでの階層での水だった。だけど今、入った水の感触はまた違ったものだった。
「あれ……なんか水が軽い?」
おかしい。
これまでの階層では性質は違えど、地上の水の中と感触は違わなかった。
それがここの水は軽いのだ。水の抵抗が少なく、動きやすい。さすがに地上ほどとはいかないけど普通の水とは全然違う。
『……なるほど。ここの水は地上の空気に似た構成になっているようですね』
「それってどういうこと?」
『つまり空気みたいな水ってことです。これは面白いですね』
「……まあ動きやすいならいいや」
全身水につかってみると、なおのこと動きの違いが分かる。だけど周りに広がる風景は海の中だ。
色とりどりなサンゴみたいなものから、海藻、遠くの方だけど魚っぽい影も見える。
「それじゃあ、てきとうに動いてみようか。アインはいつもみたいにマップ作りお願いね」
『了解しました』
「ルビーとローズはボクから見える範囲内でそれぞれ行動してね」
「……(いつも通りね。分かったわ)」
「分かりました~」
水中での会話は主にアインの念話機能を使っている。さすがに水の中で喋ることは出来ないからね。ルビーとローズも同じように念話を使っている。
2人と分かれてボクも探索を開始する。
魚みたいな影が見えたほうに向かってみると、そこにいたのは魚とか全く違う生き物だった。
「なんで水の中に馬がいるの?」
『魔物だからでしょうね』
目の前でボクの方を見て息を荒くしているのは馬だった。
鬣がワカメみたいな海藻になっていて、さらに背中から珊瑚を生やしている見たこともないヘンテコな馬。
「あれじゃ背中に乗れないよね。珊瑚が邪魔で」
『……『シーホース』という魔物ですね。本来は海に生息している魔物なのですが、これもダンジョンの特殊性ゆえですね』
「それにしてもさぁ。なんであのシーホースはこっちを見て息を荒げてんの?」
『縄張り意識の強い魔物ですからね。侵入者に怒っているんでしょう……あ、来ますね』
シーホースの周りの水が渦を巻き、それがこっちに向かって迫ってくる。
咄嗟に魔力を纏って横っ飛びに移動しようとする。しかし、体の周りに変な水の流れが発生していて動くことが出来ない。
「っ…くぅ!?」
避けられそうになかったから体の前で腕をバッテンに組んで正面から受け止める。それなりの衝撃ではあったけど耐えられないほどではない。踏ん張りの効かない足場で何とか踏みとどまる。
「さっきの何!?」
『シーホースの能力である周囲の水を操る能力です。それを利用してマスターの体の足止めと攻撃を行ったようですね』
「なるほどねぇ。それでさっき体が動かなかったんだ。でもそれなら――」
またさっきと同じように馬のシーホースの周りに水が渦巻き始める。それと同時にその場から素早く離脱する。動きを止めない様に常に動き回る。
シーホースもボクの動きを追って水を操作しようとしているみたいだけど、付いてこれていない。
『捉えられる前に動いているんですね。いい判断です』
「ありがとう!じゃあもう決めちゃおっか!」
さっきまではシーホースの周りを回るようにして動いていたけど、今度は進路を反転し真っすぐに向かっていく。
側面か攻めていったけど、すぐにこっちを向いて渦を放て来る。真っすぐに進んでいるから的はつけやすくなってしまうけどその分速度をさらに上昇させる。
一瞬のうちにシーホースに肉薄して、その顔面にその拳を打ち込む。手ごたえはばっちりで、それを証明するようにシーホースは消えてしまう。
「16階層にもなってくると魔物の強さもかなり上がるね。ちょっと苦戦したよ」
『さすがにEランクの魔物ですね。そろそろ厄介な能力を持ってる魔物も増えてくるころでしょう』
「じゃあドロップにも期待していいかな?今回のは……珊瑚?」
『鑑定します……<海馬の珊瑚>というアイテムですね。どうやら毒があるみたいです。戦闘中にこの珊瑚に触れていたら毒のでしたね』
「……速攻で決めてよかったよ。危ないからさっさとしまっちゃって」
『諾です。それにしてもここら辺にはもう魔物がいませんね……どうしてでしょう?』
すると、離れたところから爆破音のような音が聞こえてきた。それもそれぞれ違う方向から2つ分。
片方からは白い閃光のようなものが、もう片方からは巨大は氷の塊が、それぞれ見えている。
『恐らくあの音に引き寄せられてここら辺の魔物は移動してしまったみたいです』
「まったくあの2人は……やりすぎない様にっていつも言ってるのに」
『久々に骨のある相手で加減を忘れているんでしょう。まあでもそろそろクールダウンしに行った方がいいですね』
「そうだね。合流しようか」
今日のところは2人と合流するので終わりになっちゃうかもしれないな。
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